1981年に公開され、経営危機に陥ってた東映をこれ1本で救ったという、原作=山田風太郎、監督=深作欣二による角川映画の大ヒット作。私も当時劇場で観ました。
沢田研二! 千葉真一! 緒形拳! 若山富三郎! 室田日出男! 丹波哲郎! 真田広之! そして佳那晃子! 目もくらむような豪華キャストによるアクション&エロチシズムの伝奇大ロマン!!
もうそれだけでお腹いっぱい。ただひたすら殺し合うだけの内容なのに、何度観てもまったく色褪せない面白さ! エロイム・エッサイム、我は求め訴えたり!!
このブログを読まれてる世代の方には説明不要かと思いますが、寛永15年のキリシタン弾圧に端を発する「島原の乱」で、徳川幕府軍に12万人近い信者を惨殺された末に自害を遂げた天草四郎時貞(沢田研二)が、魔界の力によって蘇った!
四郎は自分と同じように無念の死を遂げた細川ガラシャ(佳那晃子)、宮本武蔵(緒形 拳)、宝蔵院胤舜(室田日出男)、伊賀の霧丸(真田広之)、そして柳生但馬守宗矩(若山富三郎)らを蘇らせ、幕府への……いや、現世すべての人間への復讐を果たすべく動き出した!
その前に立ちはだかるのは柳生但馬守宗矩の息子=柳生十兵衛光厳(千葉真一)! 伝説の刀職人=村正(丹波哲郎)に魔界衆をも斬れる妖刀「ムラマサ」を授かり、宮本武蔵、そして同じムラマサを持つ父の亡霊を倒した十兵衛は、ガラシャによって引き起こされた江戸城「明暦の大火」の中、首チョンパされても死なないジュリーとの一騎討ちに挑むのでした。
15年ほど前、私は『ジュラシック・パーク』のパロディー映画として、歴史上の剣豪たちをDNA操作で蘇らせた博物館がトラブルに陥り、制御不能になった剣豪たちが大暴れしちゃうストーリーを構想し、剣豪どうしの実際にはあり得ない対決カードが見られる画期的なアイデアだ!って大いに盛り上がったんだけど、冷静に考えりゃこれってただの『魔界転生』やん!ってw、山田風太郎先生の偉大さをあらためて思い知らされた恥ずかしいメモリーがあったりします。
でも、この1981年版『魔界転生』が抜群に面白いのは、そんな夢のカードを千葉真一さんや緒形拳さん、若山富三郎さん等ホンマモンの名優、二度と現れそうにないカリスマたちが演じればこそ!なんですよね。
武蔵VS十兵衛のカードも迫力満点だけど、それ以上にクライマックスにおける宗矩VS十兵衛の親子対決は、日本映画史上に残る名シーンだと思います。
千葉真一さんのアクションが凄いのは言わずもがな、その千葉さんに殺陣を教えた師匠が宗矩役の若山富三郎さん(勝新太郎さん=座頭市のお兄さん)ですからね!
これから鑑賞予定の2003年版『魔界転生』では十兵衛を佐藤浩市さん、宗矩を中村嘉葎雄さんが演じておられるけど、このスピードとキレと迫力を超えられるとは到底思えず、もう観る前から期待はしてません。
'81年版は背景の炎も全てホンモノ、実際にセットを燃やし、あの大スターたちが火傷を負いながら命懸けで演じてますからね! '03年版はどうせCGだろうし、よしんばホンモノでも役者に危険なマネは絶対させないでしょう。そういうのは確実に画面から伝わって来ますからね。
そんなアクションの迫力に加えて、沢田研二さん=ジュリーのカリスマ性と色気ですよ!
その容姿と佇まいはもちろん、今回あらためて観て痛感したのは、あの声の美しさ! 声だけじゃなく台詞回しの1つ1つが耳に心地好く、フハハハハハハ!っていう不気味な笑い声すら痺れるほどにカッコいい!! '03年版の窪塚洋介くんに勝ち目は100%ありません。
だけど'81年版『魔界転生』の大ヒットを真に決定づけたのは、多分これでしょう。村娘と恋に落ち、悪いことが出来なくなっちゃった伊賀の霧丸に、天草四郎が「あんなもんは犯せばいいんだ」とそそのかし、なぜかキスをするというハイライトシーン。
私は正直言って男どうしのキスシーンだけは見たくないんだけど、ジュリーと真田さんなら見てられる! 台本には無かった即興の演出らしく、やらせた深作欣二監督も凄いし、宣伝でこのシーンを大々的にプッシュした角川春樹プロデューサーもまた凄い! そこに女性客が飛びついたのが歴史的ヒットに繋がったのは間違いないでしょう。いやあ凄い、本当に凄い!
もちろん、ヒロインたちの魅力も忘れちゃいけません。霧丸と恋に落ちる村娘=おみつ役の菊地優子さん、武蔵が愛したお通の姪っ子=おつう役の神崎愛さんも素晴らしいけど、白眉は誰が何と言っても細川ガラシャ役の佳那晃子さんでしょう。
まったく惜しみなく脱いでくれるのも素晴らしいけど、たとえ脱がなくともこの妖艶さだけで我々はイッちゃいます。果たして'03年版のヒロイン=麻生久美子さん(ガラシャとは違うキャラみたいだけど)は佳那さんを超えられるか!? 唯一の見所はそこでしょう。
そんなワケで、とにかく'81年版『魔界転生』は最高に面白い! 未見の方はもちろん、しばらく観てない方にも是非オススメします!
ハチャメチャなストーリーですが、名だたる名優の演技+脚本や見せ方(魅せ方)が上手なんでしょう。
たとえCGやアニメの出来がお粗末だろうと、魅せ方が達者であれば良い。観る人をその世界に引っ張り込むか、だと思います。
それにしても名だたる剣豪を蘇生させたら制御不能になる、面白いですね〜。戦国武将を何名も蘇えらせて、政権を取って欲しいです。
そういう「勢いで見せ切っちゃう」ストーリーに深作監督のケレン味演出がドンピシャで、おっしゃる通りこれは上手い「魅せ方」あればこその勝利。下手にやれば悲惨なことになっちゃうのが、'03年版で証明されちゃいました。そっちもある意味オススメですw
それはハリソンさん、勿体ないことをしたかもですね。
今や若い人達の間でメジャーコンテンツとなった『Fate』シリーズも、『魔界転生』を換骨奪胎したものでありますからして、ハリソンさんもそのアイデアをもっと詰めていけば、大化けしたかもしれないですよ?
私が大化けするなんてことは有り得ないけど、きっと笑える映画にはなったと思うので、実現させたかったですね。そういう意味では勿体なかったです。
ハリソンさんのオススメ通りでした。沢田研二の存在感(声)は素晴らしいし、他のきら星のようなキャストも素晴らしかったです(素晴らしいだけで語彙力がありませんw)。
千葉真一をはじめ、刀の使い方がまた良いんですよ〜。きちんと刃(やいば)を身体の前面に向けて守りながら索敵する。日本刀は刀ひとつで盾にも攻撃にも使う剣法なんですが、画面のこちらから見ても空きがありません。
若山富三郎との斬り合いも実に迫力がありました。裃姿でアクションしているのも凄い。殺陣は激しくなるほどメチャクチャに刀を振ってしまいがちなんですが、そうではないんですよね〜。
あの凄みと言うか、ただ立っているだけでも醸し出す存在感は、最近の俳優には出せないんじゃないかと思います。
剣法については全く詳しくないのですが、それでも演者がその道を極めてるかどうかは画面から伝わって来ます。こんな殺陣はもう、今後は見られないでしょうね。