前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

ショルティ&シカゴ響の美学

2010-09-21 18:33:42 | クラシック音楽
ようやく秋めいてきましたが、
猛暑続きで肉体的にも精神的にも夏バテ気味だったので、
元気が出そうな?マーラーをよく聴きました。

主に、交響曲第5番嬰ハ短調の第5楽章と
交響曲第6番イ短調「悲劇的」の第1楽章を。
盛り上がりますからね。


演奏は、
ゲオルグ・ショルティ指揮、シカゴ交響楽団です。

高校時代、マーラーに夢中になり始めた頃
買ったのがショルティ&シカゴ響の全集でした。
以降、同コンビの演奏には"特別"の愛着があります。

人それぞれ、テンポや節回し?など
グッとくる"ツボ"があると思いますが、
ショルティ独特の「溜め」と「開放」が私の"ツボ"です。
あの、ギリギリまで緊張感を高めて爆発させる感じ・・・


例えば、第6番の第1楽章。

コーダに入り、
オーケストラが音量を増していくと同時に
ラストスパートへ向かってエネルギーを溜めるかのように
徐々にテンポを落としていきます。

そして、爆発してクライマックスへと突き進まんとする
まさにその瞬間!
ほんの一瞬(一音?)、全ての楽器の音が消えます。
唯一つ、トライアングルだけを除いて。

そのトライアングルの音がまるで導火線の火の如く
オーケストラの大爆発を導き、
ブラスが咆哮をあげクライマックスへと突っ走ります。

他の人の演奏からは決して感じられない、
これぞ「ショルティ&シカゴ響」の真骨頂の表現です。
あらゆるクラシック音楽の演奏の中で
最高にカタルシスを感じる一瞬の「美学」です。


正直、ショルティ&シカゴ響の演奏を
好まない(嫌い)という人も結構いるでしょう。
曰く、テンポが速すぎる、音が硬く暖かみがない、
演奏が表層的過ぎる、金管が派手・・・

たとえそれら全てが"事実"であったとしても
それがどうしたというのだ!!

他のどの指揮者、オーケストラのコンビが
この「一瞬」を演出できるというのか?


録音は1970年。
ショルティがシカゴ交響楽団の音楽監督に就任した翌年です。
マーラーの交響曲第5番に続いて録音された
同コンビの最初期の演奏であり、今なお色褪せぬ名演です。

"情念"や"ロマンティシズム"を廃したような
一見(一聴)"無機質"にも聴こえる響きは、
しかしそれこそマーラーが求めた"理想の音"だった、
と私は確信しています。


この時、それから長きに渡って続く黄金コンビの
「美学」はすでに完成していたのです。
コメント
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