老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

946 死に方は、生き方より難しい

2018-11-05 21:02:00 | 老いの光影 第3章

死に方は、生き方より難しい

11月1日で93歳を迎えた大沼滋治さんが
今日の未明 この世を去った。

ご冥福をお祈りします。

滋治さんにとり無念の死であったのかな、と
感じられてならず
景色が滲んで映った。
目は見開いていた。
瞼を閉じようと手で塞ぐも元に戻ってしまった、と妻は話す。

喉が渇き 唇が裂けるど
水を欲していたのに
末期の水を飲むことも叶わなかった。

養子の息子は二階で寝ていて
最期を看取ることができず
死後硬直の状態になってから
息をしていないことに気づいた。

産まれるときは
赤ん坊を取り上げてくれる人がいて
ひとりではなかった。

死するときは
必ずしも誰かが傍らに居るとは限らない。

死に方は、生き方より難しい。
そのことを滋治さんは教えてくれた。


937 濃い焦がれる

2018-09-21 20:47:57 | 老いの光影 第3章
 濃い焦がれる

「恋い焦がれる」ではなく
「濃い焦がれる」話。

姑と嫁との話

認知症の姑は
たびたび
ガス代に鍋をかけたことを
忘れてしまい
鍋の底は
内外真っ黒

鍋底の黒さは
嫁も負けない
電話がかかり
ガス代に鍋をかけたことも
忘れ
話しに夢中
結果
鍋の底は
真っ黒

姑と嫁は
「あなたのほうが黒く焦げている」、と
言い争っている

傍らで私は
「どっちの鍋がよく焦げているか」
「焦げ比べしてみようか」
と聞くと
姑と嫁は
そこで大笑い

931 ある老女優の言葉から

2018-09-17 08:37:34 | 老いの光影 第3章
 ある老女優の言葉から

全身癌になりながらも
最期まで生き抜いた
ある老女優の言葉に
ただただ頷くだけ

全身癌
ここ1月で
10㎏も痩せ
顔はこけ
老いてゆくことは
萎んでゆき
死んでいく

彼女は
物事には
表裏があり
幸福(しあわせ)はいつまでも続くものではない
行き詰まったら
行き詰まったところだけを見ず
行き詰まったところの裏側から離れて見ることで
そこから光が見えてくる

記憶が定かではないため
彼女の言葉を
正確に復元はできなかったけれど

へこたれず
生きてみる


全身癌に侵されながらも
疲れた顔もみせず生きた
樹木希林さん
ご冥福をお祈りします

930 朝最初に眼がいく記事は・・・・

2018-09-16 05:14:05 | 老いの光影 第3章
 朝最初に眼がいく記事は・・・・

デイサービスさくらさくらでも
地方新聞をとっている

テーブルの上にいつも置いておく

朝、新聞を目にした清子婆さんは
トッブ記事や社会面ではなく
最初に開くページは
おくやみ欄

じっと見入っている
友人、知人の名前が載っていないかどうか

清子婆さんは
おくやみ欄を見ることで
自分が生きていることを
実感しているのかな、と思ってしまう


927 訃報は突然訪れる

2018-09-14 05:10:44 | 老いの光影 第3章
 訃報は突然訪れる

18時50分過ぎ在宅訪問を終え
キャンバスを発進させようとしたら
スマホが鳴り出した。

慌てて耳にあてると
「17時03分に亡くなりました」、と長男嫁の静かな言葉
(89才、寝たきりだった鈴木静男さんが亡くなった)

私は思わず「えっ!」と声がでてしまった。
「ご愁傷さまでした。お疲れ様でした」と
続けて「いまお家ですか」と尋ねると

「救急車で運ばれ、病院です。病院に着く前に亡くなった」。

「検死になってしまったのかな」

「これから検死です」

長男嫁には届かなかった。

「急変したときは訪問看護師か私(ケアマネ)に電話して」
「急変し救急車で運んでも間に合わないとき、あるいは亡くなったときは
かかりつけ医に診てもらうこと。そうしないと検死になってしまうよ」と
在宅訪問のたびに話をしていたが・・・・

仕方がない
それも彼の運命だったのかもしれない。

来週の月曜日 訪問看護師が入るときに訪問しよう、と思っていた
その前に亡くなり悔やまれる

いま39件の要介護老人を抱え
急変やサービスの追加等の変更や入退院がなければ
在宅訪問は月1回になってしまっている

どの家も月2回は訪問したい、と思ってはいるのだが・・・・
持ちケースを25件位ならば余裕があり理想なのだが、
そうもいかない事情がある。

突然の訃報
寝たきりでいる場合は
突然の訃報でもないのだが
何かあったら訪問看護師かケアマネに電話をする
まだまだ絆が弱かったのかな、と反省をする

今日亡き彼の自宅を訪れ
眠りの顏に対面し合掌して来よう、と思う

いま外は秋雨
鈴虫が寂しく体を震わせ鳴いている

926 外野席ほど五月蠅(うるさ)い

2018-09-12 20:20:22 | 老いの光影 第3章
 外野席ほど五月蠅(うるさ)い

野球観戦時の外野席は
賑やかなほうが
盛り上がり楽しい

介護の外野席は
困ったものだ

普段親の面倒(介護)をしていない
たまに実家に帰った小姑(娘)は
息子嫁やケアマネジャーに
あれこれ言う

他者から仕入れた聞きかじりの介護サービスなどの知識を振りかざし
あれこれと意見する

日々介護を献身してに為さっているのは長男夫婦
労いの言葉は微塵もなく

母がこんな状態になったのは
介護悪いといわんばかりの「口」撃

嫁は
過去に幾度この家を出たい、と思ったか
涙を流し話される





922 カメラで見られる生活、あなたは望みますか

2018-09-08 05:27:06 | 老いの光影 第3章
 カメラで見られる生活、あなたは望みますかふらつきは

弟とは15才かけ離れ
兄は東京に住んでいる

弟は東北の片田舎にひとり暮らし
事故で高次機能障害になった

弟が心配で
家の中で転んではいないかと
気をもみ、心配のあまり
遠隔操作によるカメラを設置した

兄弟とはいえ
カメラで監視された生活

これから
在宅訪問したとき
どうもカメラがあるとなると
気になってしまう

弟との会話内容までが
筒抜け

弟の本当の気持ちを
聞けるのかどうか

兄弟、家族とはいえ
プライバシーの尊重が大切

いままで
障害者支援員や他のケアマネジャーは
カメラのことについては黙認してきた

今回
私は、兄に対し
カメラを取り外してもらうよう
話しをしてみたいのだが・・・・


あなたならどうします

921 生きた

2018-09-07 21:18:33 | 老いの光影 第3章
末孫(妻)と歩く109才のおばあちゃん

 生きた

妻の母方お婆ちゃん(109才)は
退院したばかりなのに
また入院した

なかなか水を飲むことが出来ず
脱水症で再入院した。

食べることも
水を飲むことも
大変になり
老衰なのかな、と

病室に居ても
いま居る場所が
病院であることがわからない

調子が悪いというので
110km余りの路のりを運転し
面会をしてきた

お椀を自分の手に持ち
自分の手でお粥を食べた

お粥だけしかたべないので
おかずは介助により食べてもらった

頑張れとは言えない
109才まで 頑張って生きてきた

37.4℃の熱がありながらも
ベッドから自力で降り
ポータブルトイレでオシッコをしていることに
凄いな感心してしまう

109才まで生きてきたから
もう頑張らなくていいよ、と思いながらも
一方では
少しでも食べて元気になり
退院して欲しいと願う

水は数口しか飲むことができなくなった
ベッドで寝る時間も増えてきた
死が近いのかな、と思ってしまう

今度の日曜日
また会いにいかなきゃ・・・・




912;うつむく後姿

2018-08-28 19:04:29 | 老いの光影 第3章
 うつむく後姿

長男夫婦は
老いた母親が寝たきりになったら旅行に行けなくなる、
ということで

飛行機で
2泊3日の北海道旅行に出かけた。

その間
91才の清子婆さんは
特別養護老人ホームに併設されている
ショートステイで生活することになった。

寝たきりから歩けるようになった婆さん

今日火曜日から木曜日まで利用する(2泊3日)

どんな顔をしているのかな
知らない処に一人で泊まる不安や気兼ね

午後のおやつ後に面会に行った

彼女も食堂のテーブルに向かい坐っていた。
会話ができる老人は誰もいなかった。

テーブルの周りに坐っている七人の老人は
誰もがテーブル板をみているのかどうかわからないけれど
うつむいたまま無言に坐っていた。

テーブルの周辺には介護員の姿はなく
ただ下をむいていた老人がいるだけ

清子婆さんは耐えられなかった


彼女は、私に話す
「泊まり(ショートステイ)は、今回限りで終わり、もうここには来ない」
「何にもせずにただ座るだけでは耐えられない」
「ずっと下をむいたままでいると、こころが閉ざされるようだ」





905;石のぬくもり ②

2018-08-24 12:05:53 | 老いの光影 第3章
 石のぬくもり ②

介護ベッドの上で
寝返りすることもできず
ジッと天井を見つめたまま

長い一日を過ごす苦痛
屈伸することもできず
両手両足は「く」の字に拘縮したまま

硬くなってしまった老人の体は
石のように冷たい

辛夷(こぶし)の如く
握りしめた指をひと指ひと指解し
空に向って開いた手を握り返す
微かにぬくもりが伝わりはじめてくる


路傍の石はジッとしたまま
何処へも行くことができず
地べたにへばりついたまま

石の表面は
青空を見つめ
太陽に照らされ
ぬくもりの石になる

石の裏面は地べたに引っ付き
冷たいが
表面からやさしいぬくもりが
じわっとつたわり
ぬくもりの石になる


再掲

897;在宅介護を支える人たち

2018-08-18 03:01:16 | 老いの光影 第3章
平成6年に建てられた家 民家を活用した地域密着型(小規模)デイサービス(定員10名)

月曜から土曜まで営業(祝日も行っている) 泊まりのサービスはしていない

 在宅介護を支える人たち
 
私を含め3人のケアマネジャーが集まり、
″こすもす在宅介護サポートセンター‶を立ち上げた。

自宅で暮らす
介護を必要とする老人の介護サービス計画書(ケアプラン)の作成や
介護相談等を行っている。

私の妻が4人のスタッフと力を合わせ
民家を活用した″小規模型デイサービスさくらさくら‶(利用定員10名)
を運営している。

″こすもす在宅介護サポートセンター‶と″小規模型デイサービスさくらさくら‶は
それぞれ違う法人会社で運営されている。

これからブログ『家で死にたい』は
″こすもす在宅介護サポートセンター‶と
″小規模型デイサービスさくらさくら‶のなかで
起きた介護の様子を通し、

介護とは、老いて生きるとは、死とは
を見つめていければと思う。

人口6万人の小さな地方都市
市街地の人口は2万数千人
商店街はシャッター通りの風景にある