老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

975 待つ人がいる

2019-02-28 21:01:46 | 犬と人間
僕も家族の一員

主人の帰りを待ちわびている

右足の膝周辺から右足首まで
腫れ、指で押すと痛みが走る
特に右膝が痛みが強く
膝立ちができない

まだ外は暗い闇のなか
玄関戸を開け6時に家を出た
キャンバスのハンドルを握り
自治医科大学附属病院に向かった

心配な妻は仕事を休み付き添い

主治医は非結核性抗酸菌が悪さをし
血中に潜んでいるのかもしれない

この菌は私を悩ませ
昨年の暮れには左手背、左肘に
巣食っていた抗酸菌の摘出(除去)を行った
左手背、左肘は手術の痕があり
右手指で擦ると痛みが伴う

この菌を「やっつけよう」ということで
クラリスが処方された

免疫抑制剤ネオラルが強く効きすぎないか
心配、不安はあるけれど
明日から服用することになった

クラリスを服用することで
そして菌に感染しやすくなるので
明日から1年間
春、夏、秋、冬、春と
季節が巡っても
手洗い、うがいそしてマスクの着用せねばならない

私的な話ですいません


帰宅したのは暗くなった18時半過ぎ
帰りが遅くなるだろうと
廊下の電気は点けていった

それは
beagle元気が「ひとり」留守番をしている
暗闇のなかでひとり主人の帰りを待つ
不安と寂しさから

キャンバスのエンジン音を聞きわける
遠くからでも聞き取る

仕事を終え
疲れていても
玄関戸を開けた途端
beagle元気は
主人の帰りを
大喜び
二本足でジャンプを何度も繰り返す

誰も居ない家に帰るよりは
ず~と 嬉しいし
疲れた心身は癒される







974 人の道に外れる

2019-02-27 20:32:26 | 老いの光影 第4章

南湖公園と桜

人の道に外れる

92歳を越えた堀川清子は
病院のベッドで
「これからどうしていいか」悩んでいる

中学校の敷地拡張で
長年住み慣れた隠居宅の移転を余儀なくされ
道路をはさんで向かい側の土地に
長男夫婦と同居する新築の家が完成した

長男嫁の料理は本当に下手で
味がしないし飾り気がない
満足に挨拶もできず近所づきあいもできない
家に閉じこもり

思うように体が動かない(行動ができない)老母に対し
長男は大きな声で怒鳴り続ける
何故怒るのか
よくわからない

いまになって
というよりは
体が動かなくなり
これから手がかかり
世話(介護)が増えて来る老母


老母は長男夫婦と同居できるのか
、と不安だけが膨らみ続ける
膨らみ過ぎた風船は弾け割れてしまう

40数年前 同じ屋根の下に
長男夫婦と同居してもうまくいかない、と
亡き夫は判断し なけなしのお金をはたき
隠居宅を建て清子夫婦は移り住んだ
移り住んで1年も経たない内に夫は星になった

昨年、暑い日が続いた夏 清子婆さんは
食欲がとれず脱水になり
寝たきりになり要介護5の認定を受けた

長男夫婦は
お粥ひとつ作れず
濡れた紙おむつを取り換えてくれるわけでもなかった
息子は「こんなこともできないのか」と怒るだけ

いままで世話(介護)をしていないから
同居したときはじめて
介護の大変さというよおりは
自分たちの生活が「侵害」される
新築の家が漏らした「糞尿」で汚れてしまう

そのときは特別養護老人ホームにでも入れればよい

病室のベッドで寝ている清子婆さんに問うた
(心臓肥大、不整脈があり治療目的に手入院)
「新しい家に長男夫婦と生活するの、それとも高齢者住宅に移り住む?」
「私も住めるよう(私の)部屋を作ってくれた新築の家、
折角長男が作ってくれた新築の家に住まなければ
人の道に外れる・・・・

”女性にやさしい家”と女社長・設計士は自慢されるが
高齢者が住む住宅なのに
玄関ドアは重い開き戸
なんで引き戸にしなかったのか、と思う
おまけに玄関戸の先は手すりのない階段

新しい家に住宅改修を提案したとしても
それは容易に受け入れられることは難しい
床面に置くタイプの手すりを考え転倒防止を図るしかない

退院後、新築の家で
ストレスだけが溜まり
うっ血性心不全が悪化しなければ、と
心配している

長男夫婦と次男・長女との関係は
さらに縺れ絡み
その狭間のなかで老母は
最後は何処で暮らすのか

92年生きてきた、生きている彼女
最後は
気持ち穏やかに 心安らかに逝きさせたい

自分(筆者)も「頭が痛くなる」
なにが幸せなのか





973 明日の生命はわからないけど・・・・

2019-02-27 03:29:15 | 老いの光影 第4章
明日の生命はわからないけど・・・・

誰も
明日の生命はわからない
二度と巡り来ない
今日という日を生きる

1ヶ月の生命を告知され
自宅に戻り
その生命は1ヶ月を越えた
清水太郎さん(80歳)
肺癌を患い
癌は腸骨、仙骨そして頭部にも転移
最後の桜の花になるかもしれない
春を待ちわびている老夫婦

一昨日退院し
自宅に戻ってきた
竹花咲子さん(85歳)も
生命はあと1,2ヶ月・・・・
左上顎洞悪性リンパ腫
抗がん剤の副作用と闘いながら生きている
認知症があるため
自分が癌であることを忘れ
他人事のように生きている

急変があったときは
夜中でもいつでも
「気兼ねすることなく電話をかけてください」と家族(老妻や長男夫婦)に話す

自分自身
癌ではないけれど
明日の生命は「ある」とは限らない




愛車キャンバスが帰ってきた


愛車キャンバスが帰ってきた
一月余り前
バックした際確認を怠り
小さな立木に衝突
運転席側の後から右側面にかけ大破

一瞬の不注意が
450,004円の大修理費となり
真っ青
車両保険で賄えたが保険料はup
自爆があったことは妻には話したが
修理費が嵩んだことは「ヒ・ミ・ツ」にしている
(余計な心配かけるから・・・)

でも人を轢かなくて良かった
チョッとした衝撃でも
車が破損しやすいのは
人とぶつかったとき
車が壊れやすくすることで
人への衝撃を緩和し、人を守る

事故起こさぬよう自戒し
今日から再び
キャンバスのハンドルを握り
在宅訪問に駆けて行く







972 最高の組み合わせ

2019-02-26 08:06:44 | 阿呆者
最高の組み合わせ

食が進まないとき
白米(ご飯)に牛乳をかけて食べる
※牛乳のなかで 「会津のべこ乳」が美味しい

じゃが芋(きたあかり)と山キノコが入った味噌汁
じゃが芋と白子の味噌汁も最高

熱いご飯に筋子

暑い夏には
フルーツの入った冷麦

おやつには
キャメルコーンにコカ・コーラー

食べ物が喉を通らなくなったときは
半分に割った夕張メロンを
スプーンで食べる

末期の水は
北海道羊蹄山の湧水

971 生きていることに意味がある

2019-02-24 07:02:23 | 読む 聞く 見る
文庫本『カイン』カバー裏の文より引用

ぼくはすごく不幸な少年・青年時代を送ってきた。
親や先生の「いい子」だったぼくは「自殺してならない」と自分に言い聞かせ、
強く生きようと決意し、長い間、修行してきた。
そして30年間「なぜ生きるのか?」と悩んできた末に見出したのは、
「そのことを知るために生きるのだ」という回答だった。
自らの苦い経験を振りかえりながら、
いま不器用に生きるすべての読者に捧ぐ、「生き方」の訓練。


生きていること意味がある 

「・・・・生きていることだ。どんなに苦しくても生きていることなんだ。
それだけでもう立派なことなんだ」
(中島義道『カイン』新潮文庫 26頁)

「たったこのまえ生れてきて、たちまち死んでしまうこのぼくという存在は何なのか」と
問いを求めつづけることそのことに価値がある
。(前掲書27頁)


自殺しようとする少年、青年だけでなく高齢者においても
同じく、いま自殺してしまったらすべてが終わりになり、存在そのものがなくなる。

寝たきりになり、すべて誰かの手を借りなければ生きていいけない老人
妻(夫)の名前だけでなく自分の名前さえ忘れ記憶が何も残っていない老人
それでも生きていることに意味がある

人は他人の不幸を「喜び」
他人の幸福を「嫉む」
そんなやっかいな心が存在する

「他人の幸せ」は素直に喜び
「他人の不幸」は同苦として受けとめ悲しむ











970 歩けなくなった老人の行く先は・・・・

2019-02-24 06:15:56 | 老いの光影 第4章
在宅訪問途中 車から降り 青い空と白い雲と那須連山を眺める


歩けなくなった老人の行く先は・・・

老いた夫は
デイサービスに行かない日は
ベッドで寝ていることが多い老妻に
「歩けなくなったら老人ホームに入れるぞ」と
シワガレタ声で話す

小学校の教師をしている長男も
同じく
老いた母に
「歩けなくなったら老人ホーム行きだ」と
怒鳴り声で話す

70歳を越えた長男
「歩けなくなり自分のことができなくなったら老人ホームだぞ」と
同じく脅迫めいた言葉で話す


「歩けなくなったら」
自宅で暮らすことはできず
老人ホーム(特別養護老人ホームを指す)行き

そう話す男たちも
この先
歩けなくなったら
老人ホームに行くのであろうか
行かされるのであろうか

歩けなくなっても
人間捨てたものじゃない
たしかに歩けないことは「不自由」だが
心まで歩けなくさせるような
言葉は浴びせては欲しくない

心は自由
駆けたり空を飛ぶこともできる




968 痛みと傷

2019-02-23 07:45:14 | 老いびとの聲
那須高原の風景/裸木、枯れ草のなかに緑が生えてきた、春よ来い
痛みと傷

痛み

痛みは目に見えず
痛みは当の本人しかわからないだけに
看護師は尋ねる
「最高の痛みを《10》としたらいくつですか」

妻は曰く
当の本人は痛い、と訴えているのだから
聞くまでもなく「10」ですよ

麻酔をかけずにメスで皮膚を切ったときの痛みが
「10」なのか

いま自分の右膝の痛みはジンジンし
立ち膝ができない
階段の上がり降りも苦痛

話しは変わるけれど
心の傷も目に見えない

ナイフのような言葉で
相手の心を傷つけた人は
痛みは感じていない


冬 3月まで
インフルエンザ感染対策から
面会ができない
介護施設が多い

入所している110歳の老母の様子を聞こうと
看護師に尋ねたところ
「なにかあったら連絡しますから」、と
戸をピシャリと勢いよく閉めるような音で
家族の気持ちを閉ざした

「なにかあったら連絡します」
そのときは
大概急変や危篤のときかもしれない

自宅で介護できない家族の負い目
その負い目に塩をなすりつけるような言葉
心の傷は
痛みとなり疼く

相手の痛み
自分の痛みとして
感じ取れるか
痛みに不感症になってはいけない、と自戒せねば・・・

967 ストレスは万病の因

2019-02-22 12:08:08 | 老いびとの聲
ストレスは万病の因

「風邪は万病の因」という諺がある
現代社会は
ストレスは万病の因であると感じている

介護

寝たきりになり
自分の身を思うように動くことができないもどかしさ
他人に身の回りの世話をお願いするのも
辛くストレスが溜まる

在宅介護者も切なく辛い
介護に縛られ
時間も空間も人間関係も
不自由になり
ストレスが溜まる

ケアマネジャーもストレスが溜まる
人間だから
苦手な老人や家族介護者もいる
いま33人の在宅訪問を受け待たせて頂いているが

足が向かない59歳の利用者一人と二人の家族介護者がいる
そんなではケアマネジャー失格だが
ストレスを感じながらも
随時、必要時は訪問している

ストレスから来るのか
それとも免疫抑制剤を服用していることが原因なのか
わからないが
ここ数日
右膝周辺の皮膚を触れたり歩いたりするとき
痛みが走る

昨日整形外科を受診
レントゲンの結果 右膝関節は「異常なし」であった
右膝の皮膚が細菌に感染しているのでは・・・・
腎臓移植をされているので
安易に抗生剤は処方できない


抗生剤の種類と処方量によって移植腎臓に負担がかかることが心配なので
専門の腎臓外科医と皮膚科医に診てもらってということで紹介状がだされた
来週の木曜日主治医(腎臓外科医)の予約をとった





966 2月のレインボー

2019-02-22 03:05:20 | 春夏秋冬
2月のレインボー

2月20日の朝
西の空に
レインボーが架かった
北国の2月の空は
雨より雪なのに
朝の陽ざしにめずらしく小雨が降り
レインボーを描いた

レインボーの下の赤い屋根の家には
私が毎月訪れている
要介護のお婆さん
日中独りで
介護ベッドで過ごしている
彼女が寝ている部屋からは
レインボーが見えないのが残念



964 深夜のおむつ交換

2019-02-20 03:44:39 | 阿呆者
深夜のおむつ交換

冬の季節
深夜
温もりのある蒲団から
這い出るのは勇気がいる

妹から頂いた腎臓に
オシッコが溜まり
自分の場合排尿を我慢しては
腎臓によろしくないので
トイレに向かった

用足しを終え
蒲団に入りホッとしたところへ

beagle元気が
起きだし
トレーにオシッコをする音が聞こえた
起きねばならない

折角温もりの蒲団に入ったのに
再び勇気を振り絞り
元気の紙おむつ交換をした

昨日在宅訪問したとき
老いた妻は
深夜から夜明けにかけ
三度のおむつ交換をするのが大変、と
こぼしていた




963 眠れる顔

2019-02-19 16:15:22 | 老いの光影 第4章
眠れる顔

縁があり
ひとりの老人とその家族に
出会い
そしてかかわり合っていく

最期 永眠されたとき
哀悼と感謝の気持ちで
老人の枕元を訪ね
ご焼香を行う
「安らかに」「お疲れ様」「ありがとう」と無言で話しかける

ご遺族(介護者)の許しを得
老人の眠れる顔を拝む
老人の顏や頭にそっと触れる
その行為を通し
その老人との関係は終わりになる

眠れる老人は
不安葛藤苦悩苦痛から解放され
穏やかな顔であの世へ旅立つ

老人の穏やかな死顔をみて
自分もこんなふうに
穏やかな顔で逝くのだろうか
口を開け間抜けな死顔にはなっているとしたら
訪れた人は苦笑するかもしれない

多くの眠れる老人のなかで
たった二人の老人だけが
恨み辛みがつのった死顔をしていた

安らかに眠ることができなかったことに
悔やまれ 辛く切ない

最期に「水が飲みたい」と訴えても
水を飲むことができなかったひとりの老人

死ぬ瞬間まで
水は生命そのもの

死は永遠の眠りにあり
もう夢を見ることはできない

ご焼香を通し
悔いのない介護を誓う



962  「余命」 「残命」 

2019-02-18 22:12:33 | 生老病死
「余命」「残命」

いま 末期癌から「余命」宣告を受けた
或るひとりの男性老人が生きている

ひとりは80歳を越えた男性
肺癌は
容赦なく腸骨と仙骨
そして頭部まで転移した

痛みがなく幸いであるが
いつ激痛が体を走るか

不安を抱え
退院し自宅での「余命」生活
入院のとき余命1ヶ月と言われ
1ヶ月が過ぎた
病院とは違い自宅での生活は
癒され静かに時を刻む

余命は
余った命ということではなく
余り少ない生命(いのち)という意味に捉えられる

余命よりは
残命のほうが意味ははっきりしてくる
残り少ない生命だけに
家族とどう過ごしていくのか

そのなかで
自分は何ができるのか
妻は不安を抱え
末期癌の夫をどう支えてゆくのか

最期はどこで死を迎えるのか
在宅か
それとも救急搬送により病院か
妻は揺れ動く

日中眠る時間が増えてきた
眠れず夜中に目が覚め
トイレに通うこともしばしば
心もとない夫の歩きを支える妻

不安だけでなく疲れも溜まりゆく
どうして夫が癌を患ってしまったのか
つい胸の内で愚痴がもたげてくる

あと一ヶ月と少しで
桜が咲く季節になるね
みんなで桜の花を観るのが楽しみだね、と
春よ来いの気持ちになる・・・

961 齢(とし)を取る

2019-02-18 07:59:20 | 老いびとの聲
齢(とし)を取る 

取りたくないのは齢(とし)
齢を取ると
目に「くま」ができたり
物忘れが増えたり
膝関節が痛くなったりして
気が滅入ってしまいがち

寝ている間に
誰か私の齢を「盗って」欲しい