老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1079;詰まる話、詰まらない話

2019-04-28 04:16:42 | 老いの光影 第4章
山の向こうは新潟県 国道289号線 甲子街道


詰まる話、詰まらない話

さくらさくらデイサービスの風景


76歳の見え張る爺さま物をハッキリ言う介護員の会話

さくらさくらデイサービスでは昼食前に口腔体操を行なう

(介護員) 口腔体操を始めま~す
(爺さま) 聞こえない振りしてやらない
(介護員) 口腔体操をサッボっていると、食事のとき詰まるよ
       詰まったとき苦しんで死ぬよ
(爺さま) 苦しんで死にたくな~い
(介護員) 口腔体操をすると詰まらずに苦しまないで死ねるよ
(爺さま) 苦しみたくないから口腔体操始めま~す 
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1076;明治・大正・昭和・平成そして令和へ 110歳

2019-04-26 04:35:42 | 老いの光影 第4章
“また来るね”と両手でお婆ちゃんの手を握る 温もりが伝わる

明治・大正・昭和・平成そして令和へ 110

5つの時代を駆け抜ける

妻の母方のお婆ちゃん
令和元年10月22日の誕生日で111歳になる

6人の子どもを育ててきた
長女 次女 三女 長男 四女 五女
五女が妻のお母さんで
私よりも9歳、齢が多い

6人の子どもたちは健在
長女は88歳、一人暮らしでも ぴんぴん

長男夫婦も高齢になり
110歳の超老母の介護ができず
いまは老人保健施設で過ごしています

チョッと前までは特別養護老人ホームの「ロング」ショートを利用していたのですが
熱発が続き入退院の繰り返しだったことから
老人保健施設入所となり担当ケアプランから離れてしまった

昨日自治医科大学附属病院の外来受診(定期受診)を終え
お婆ちゃんに面会したときの写真です

ショートから老人保健施設に移ってから
生きる気迫が失せたような
寂しさを感じた昨日の面会

ショートのときは毎日 娘たちや長男が入れ替わり面会ができた
お婆ちゃんも楽しみにしていた

老人保健施設に移ってからは 週に1回の面接
介護スタッフのかかわりも少なくなり
車いすに座り放っしか、ベッドに寝たきりの状態
歩くこともできなくなり
オシッコも管になった
ショートのときは歩行器につかまりトイレに行っていた

できていたことが奪われた
生きる気迫が失せたのかな・・・

遣る瀬無い気持ちになるのですが
自分で介護することもできず
6人の子どもたちも高齢

お婆ちゃんの名は 安達サタさん
太平洋戦争で 夫はアメリカに魚雷で撃沈され
海の藻屑となり魚の餌になってしまった
そのとき妻のお母さんは
サタさんのお腹のなかに居たので
父親に抱かれたことがなかった
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1072;山火事になるところだった

2019-04-24 04:34:39 | 老いの光影 第4章
山火事になるところだった

樹を切り倒した平地に
3軒の家が並び立っていた。

3軒は、県道は砂利路に入ること1㎞余りの処。
最初の1軒目の家は、人間を見るとよく吠えまくる犬が飼われている。
柴犬は鎖から解き放されると、人間の脚や尻をめがけ齧りまくる。
保健所行きとはならず、狂犬病の注射はしていないだけに怖い。

自分がよく訪れる家は、吠え齧る柴犬の家の隣りにある。
真中の家
老夫婦が住み、夫はアルコール性認知症(要介護2)。
過去に脳動脈瘤が発見され手術を行った妻が介護者。

夫は500円硬貨を見つけると
笑いを噛み締めポケットに忍ばせ
2㎞先にあるコンビニまで歩き 酒を買。
帰り路は、タクシーを呼び自宅まで乗車。
料金は着払いで妻が払う。

奥の3軒目の家は
認知症婆さんが一人で暮らしている。
5日間も電気が止められながらも生きている。

今日の昼間のこと。
婆さんは、家の南側にある庭で 枯草に火をつけた。
雑木林に燃え移り 驚き慌てふためいた婆さんは
やかんに水を入れ、消火しようとしたが、怖くて真中の家に逃げ込んだ。
アルコール性認知症の夫を抱えた妻は、
振え唇は渇きを感じながら、急ぎ119番へ電話連絡をした。

消防自動車5台が駆けつけ
消火栓や防火用水はなかったけれど
消防自動車に水が積載してあったので
燃え始めた雑木林を消化することができた。

燎原の如く雑木林が燃え広がったならば大山火事になっていた。

認知症婆さん
今後一人で家で住むことができるのか否か
気になるところ。

自分は管轄の地域包括支援センターと
婆さん担当のケアマネジャーに
山火事のことを伝えた。


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1067;最期の言葉 “お母~ん(おかぁ~ん)”

2019-04-21 06:38:36 | 老いの光影 第4章
彼が最後に見た風景 青空に映える桜

最期の言葉 “お母~ん(おかぁ~ん)”

平成31年4月20日 土曜の朝 晴れ青空
仕事は休みだったのだが
同じ町内に住む清水健太郎さん(80歳)宅を訪ねた。

彼は末期の肺癌と診断され
腸骨と仙骨そして頭部まで転移
「余命」1ヶ月と告知され
退院し残りの日々を
家で15歳年下の妻と長女と過ごした


日々体力は衰え食事も水分も余り摂らなくなってきた。
傾眠状態だった彼
彼の名前を呼ぶと目が覚め、数分間会話を交わした。
彼が寝ている部屋の窓から
青空に映えた桜の花が見えた。

「余命」1ヶ月と告げられ3ヵ月余りが経過
彼にとり本当に最後の花見となった。


14:32 スマホが鳴り画面を見ると
健太郎さんの妻からであった。
“夫の呼吸が苦しくなり、いま救急車を呼んだ”
“いますぐ伺います”
彼の家から14㎞先にいた自分。
訪問看護師に電話したが繋がらず
自分より近い場所に居た妻に電話を入れ彼の家に向かうようお願いした。


妻は14:48に着き
脈拍、血圧、SPO2が測定できない状態
“清水さ~ん”と呼ぶ
彼の聲が聞こえたかと思うと
大きな息を引き眠りについた。

救急車は30分後に2台到着
前回救急車を呼んだときには10分以内に到着したのだが
今回30分も時間を要したのは
妻が電話をしたとき名前だけで住所を話さなかったのではないか(焦り動転)
それで電話番号から検索し所在地の把握に手間取ったものと推測


心停止となり
救急隊員はAEDを行うも・・・・
救急隊に“急変のときは南陸奥総合病院で受け入れる約束ができている”と話す。
救急外来と連絡がとれスムーズに搬送となった。

妻から電話が入り“いま救急車は病院に向かったから、病院に行って”と言われ
救急車が着く前に救急外来入口に着き、彼を待った。

救急車が着き、救急外来処置室に搬送。
医師が心臓マッサージを行い、最後に聴診器を胸にあてた
“15時20分 お亡くなりになりました”と妻に話す。

自宅で最期を看取ることができた妻。
“いつもと違う様子だった”
“お昼は大好きなリンゴジュースとヨーグルト、ミニクリームパンを食べた”
“トイレに行くと言いだし、立つのもやっとなのに、トイレに3回も行き オシッコをした”
ベッドから夫は声を振り絞り“お母~ん”と話したのが最期の言葉だった。

彼の顏は 肺癌末期の苦しみから解放され 穏やかに眠っていた。
彼の額に手を当てたり手を握ると 温もりの余韻を感じたと同時に
彼の生命は終わったことに複雑な気持ち抱いた。

息を引き、死んでしまった彼
呼びかけても答えてくれない
彼の躰はストレッチャーの上に「有る」のだが
彼の「存在」は そこにはもう「無い」ことを意識したとき
死んだら本当に終わりという意味は
「存在」であることに 改めて認識した


葬儀屋が到着するまでの1時間余り
その場を離れず 家族(妻、長女)の話を聴いた
妻は“本当に最後まで夫を看れたのだろうか”と呟いた
“最後まで頑張って看られましたよ。本当にお疲れ様。
ご主人も「ありがとう」の気持ちで「お母~ん」と呼ばれたのだと思いますよ”
と、慰めにもならない言葉で返した。

彼と同じく穏やかな顔で自分も逝きたいものだ。





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1063;最期、何処で死に、どのような死に方を臨む(望む)か

2019-04-19 05:01:31 | 老いの光影 第4章
熟  睡

最期、何処で死に、どのような死に方を臨む(望む)か

夜明け前
外は暗闇の時空間
目が覚めた

beagle元気の寝息が
“スゥ” “ハ~” と聞こえてくる

元気の寝息から
いま自宅で末期癌と闘っている二人の老人のことが気になりだした

ひとりは肺癌の爺さん
もう一人は左上顎洞悪性リンパ腫の婆さん

どちらも食事も水分も摂らなくなってきた
顔は透けて白く見え始め
起きているのもやっと
自分の躰をどうしていいかわからないほど
ソファやベッドでよこになっている
怠いのであろうか

余命宣告の時間をとうに越え生き抜いてきた

末期癌の人を
自宅で見守る
それは
ひとりの生命を抱え込み
死と対峙する

日常生活のなかで
死に直面することがないだけに
死に直面すると戸惑い、狼狽えてしまう

最期の死の場面は
自宅ではなく病院にしたい、と
他者に委ねたい、と思ってしまう

爺さんの家族(妻、長女)も
婆さんの家族(長男夫婦)も
最期は
自宅ではなく病院を望んでいる

本人は自宅を望んでいるのか・・・・
そのことを尋ねることはできない

死を待つのか 死に向かうのか
人それぞれ

老人の死顔を多く見てきた自分
他人の死に慣れてはいけない、と自戒し
死は他人のことではなく
死は自分のことでもある
そのことを忘れてはならない

beagle元気の寝息から
二人の老人の死について思った

昨日婆さん宅を訪問したとき
婆さんは「もう死が近いのかな?」と呟きながらも
「まだ、死にたくない~」と強い口調で放していた









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1062;365日ホルスタイン乳搾り

2019-04-18 12:31:18 | 老いの光影 第4章
365日乳搾り

365日の紙飛行機は 
元気だそう 希望を持とうと 夢の歌でもある

365日のホルスタインの乳搾りは
休みがなく 来る日も来る日も 
牛の世話をしなければならない
家を空けることはできない

正月が来てもお盆が来ても
牛の乳搾りは休むことなく続く

365日の在宅介護も
休みがなく 来る日も来る日も
老親の世話(介護)をしなければならない
家を空けることはできない


柴田泰樹さんは(84歳)は
終戦後
2つ年下の妻と森林だった土地を開墾し
酪農を始め半世紀続けてきた。
54頭の乳牛の世話は大変
いまは長女夫婦が継いでいる。

その泰樹さんは
慢性腎不全症を患い週3回人工透析を受け、要介護3
歩行器につかまりどうにかトイレで用を足し
風呂はデイサービスで支援を受けているので、
介護にかかる手間がまだ少ないので助かっている

妻は過去に2回 軽い脳梗塞を患い
右手、右足が多少不自由な状態にあり要介護2
一番心配なのは脳梗塞の再発
チョッとでも体に異変を感じたら
すぐ受診されるよう話をしている

スーパーで何気なく1000ccの牛乳をカゴに入れ
牛乳を飲んできた自分

ご飯に牛乳をかけて食べるほど大好き
365日牛乳を飲んでいる
過去に人工透析をしていたときは牛乳は飲めなかった


牛乳だけでなく
農作物、魚など
農民や漁師の人達のお蔭で
口にできることは
本当に感謝の気持ちで頂くこと
あらためて感じた

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1054;“筋を通せ” “上をだせ” 3   “過剰保護ではないか?”

2019-04-13 03:37:37 | 老いの光影 第4章
“筋を通せ” “上をだせ” 3   “過剰保護ではないか?”

厚井善雄さんは
いま、民間アパートで暮らしている
住宅扶助は受けている

彼の生活は昼夜逆転、深夜過ぎまで起き、昼近く起きる
世間の生活スタイルと異にしている
太陽が昇っても11時過ぎ頃まで寝ているのだが
真上に住んでいる2階の家族の足音が五月蠅くて眠れない

彼は木刀で天井を突き 怒鳴ったりしていた
大家に苦情を言ったりなど
2階家族とのトラブルは絶えなかった

五月蠅くて眠れないし
2階の住人のことで頭に血が上り気がイライラ
焼酎の量も増え その上眠剤も多用していた
酒を飲みながら眠剤の服用は「絶対ダメ」だ、と話すも聞きいれず

彼はそのアパート出たくてウズウズし
しきりに村建設課や生活保護課長に電話をかけまくっていた
例の「上を出せ」と“口”撃し
建設課長と新任の女性生活保護課長を大きな声でくどき落とした

村は県の外郭団体から
住宅の払い下げを買い取り
リフォームを行い
新規8世帯分(4階建て)の村営住宅入居の募集を行った

3LDKと間取りは広く
一人暮らしにはもったない位
応募者数はかなりあった
彼の場合は 建設課長とのやりとりで無抽選入居が決まった

「それはよかったね」
「ところで引越が大変だね、引越代だって村内でも業者に頼めば十数万円はかかるだろう」
「17万円もかかる。でも生活保護でだしてくれることになった」
「その他に、エアコン、給湯器、ガスレンジと住宅改修までだしてくれ、引越代は“ただ”で済んだ」

彼の場合、いま住んでいる民間アパートでも20万円満額の住宅改修(介護保険)を利用した。
転居し場所が違った場合、住宅改修(介護保険)を新たに使える。
両変形性股関節症があることから当然1階に住むだろうと思っていたが、彼は「2階に住む」と言う。
階段に手すりつけ、その他に風呂場に手すり、民間アパートと同じくベランダにもフラット工事を行う。

今回の引越代だけで総額60万円余り生活保護費で賄われる。
過剰保護ではないのか、と疑問に思うも
私自身生活保護費の項目を調べた訳ではないので、
その疑問が適切なのかどうかわからない。
でも一方では、生活保護費が打ち切りになった家族もいるなかで腑に落ちない。

今月の22日に引越をする。

(終わり)




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1053;“筋を通せ” “上をだせ” 2 入院拒否 外来受診拒否の宣告 “病院出入り禁止”

2019-04-12 08:45:54 | 老いの光影 第4章
入院拒否 外来受診拒否の宣告 “病院出入り禁止”

厚井善雄さんは
アパートで独り暮らし

生活スタイルは昼夜逆転
太陽が空高く昇った刻 11時過ぎに起きだす
朝食と昼食を兼ね1日2食
夕食は焼酎大五郎25度270ml入りを
大ジョッキーで3,4杯飲む
勿論煙草も吸う

その為栄養の偏り、不健康な清潔がたたり
地元の病院に入院したこともあった。

入院中、大きな声で医師や看護師に話すため
相手に不快な感情を与えたり
脅された、と誤解されてしまう
治療途中で医師と口論になり強制退院となった

地元に2つしかない病院からは
入院拒否、外来診察拒否と宣告され
管轄の福祉事務所生活保護課にも連絡

唯一診察してくれているのは
整形外科医院1箇所のみ

他のクリニック、医院も診察拒否

「大きな声は地声だから仕方がない」
 「大きな声は、相手にとり怒鳴られ威嚇された、と思われるから、今後は気をつけた方がいい」と話すも
なかなか治らない。

“筋を通せ” “上をだせ”

相手のミスや言葉尻を
待ってしました言わんばかりに
獲物を狙うように待っているような彼

日中は、テレビと喫煙
獲物を定めた相手に電話をかける
当然私の所にも日に何度も電話がかかって来ることもある

部屋の掃き出し口からベランダへ出るところは段差があり
上がりお降りができなく洗濯が干せない
住宅改修を行い
掃き出し口とベランダをフラットにした
足が滑らないようにということで上面はゴム製の素材を張った

ベランダは常に雨風直射日光にあたり
長い間にはゴムの上面は変形したり膨張するのは当然ある
そのときはゴムを張り返ればそれで済むのだが・・・

彼の場合は
工事のミス、欠陥品であると
住宅改修を担当した職員を電話で呼びつけクレームをつける

「俺の言っていることが間違っていいるのかどうか」と問いただす
業者は「間違っていない」と答える
「俺の話は筋が通っているだろう」
次に「お前では話が進まないから、上の者(社長)と話をするから連絡をとれ」と“口”撃をかける

結局は、全て工事やり直しをさせた。

私は「あんまり我儘なことや自己中心的な事をしていると使えるサービス事業所はなくなるよ」
「私もサービス事業所、紹介できなくなる」と話したら
「お前にそんな筋合いを言われることはない」と怒った口調で怒鳴りだした。
「お前って呼んで欲しくない。私には名前がある」と返す。
「俺の言っていることがそんなに間違っているか」
「間違っているね。私が気に入らなければケアマネを他の人に変わってもいいよ。私から辞めるということは言えない。厚井さんが私に辞めて欲しい、と言えば辞めます」
「そんなことは思っていないから続けて欲しい」と・・・・。

私も大人げない冷静さを欠いた言動だったが、これくらい話さないとわからないと思い・・・。
ケアマネジャー失格だな


彼はまだ、62歳で若い。彼との関わりあいは、私がケアマネジャーを引退するまで続く、腐り縁となるであろう。

その後もいろいろあった
或る日、水中毒症になり
幻覚 幻視症状で暴れ出し
部屋は散乱
救急隊員から私の所へ電話がかかり
「大至急来て欲しい」と。

急いで駆けつける
彼は意味不明な言葉を連発。

受け入れ先の病院がなかなか見つからず2時間も要した
何せ地元の医療機関は診察拒否
結局30キロ先の精神科病院に搬送され入院となった

その日は救急隊員も私も
彼のために8時間ものの時間を費やしてしまった
その間救急車を必要としている人たちは
遠くの救急車を利用するしかなかった、と思うと
複雑な心境であった。
入院時兄に電話連絡を入れたが
兄は退院する日まで面会には来なかった。

(続く)







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1052;“筋を通せ” “上をだせ” 1

2019-04-12 05:48:40 | 老いの光影 第4章
俺の勲章は「前科10犯 服役5回」

地域包括支援センター長から
「男性のケアマネジャーでないと担当できないケースで生保(生活保護受給者)の方で
一度他の男性ケアマネが受けたのだけど上手くいかなかった。受けてもらえるだろうか」
と、依頼の電話が入った。

断る理由もなく、「いいですよ」の返事で受け入れた。

名は厚井善雄さん(59歳)
太平洋が見える漁村で生れた。

中卒後東京の親戚を頼り
畳屋に就職した。
長続きせず寿司見習いに転職するも
その後は仕事を転々とする。

18歳のとき大麻所持と使用で
特別少年院のお世話になる。
その後は身を崩し
恐喝、傷害、詐欺などを繰り返し
「前科10犯、服役は5回した」と
自慢げに話す彼。

両変形性股関節を悪くし
両膝を曲げることもできなくなり
脚を伸ばしたままどうにか歩行
55歳のとき東京から兄夫婦が住む実家に舞い戻る

老母が認知症になったことで手がかかり
兄から家を出るように言われ

那須連山が見える村に転居
生活保護受給世帯となり独り暮らし開始

希望される介護サービスは
訪問介護と福祉用具貸与、住宅改修であった
(続く)



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1051;“恵んでやるのだから、ありがたく思え”

2019-04-11 12:41:38 | 老いの光影 第4章
銚子の海

“恵んでやるのだから、ありがたく思え”

実際にあった“生活保護”受給または辞退した話を書いていく

私事になるが
私が生まれた処は北海道の山村
車で40分位も走れば日本海に抜ける

農家に生れ、私は長男、姉と妹がいた
高校1年の冬 大黒柱である親父が大腸癌を患い入院
いまの医療ならば親父も長生きできたのだが
50年余り前の医療では望めもなく、人工肛門を造設
1年4ヶ月の余命告知(実際は1年8ヶ月生きた)
痩せ細り体重は40㎏を切った

母親は病院に寝泊まりし親父の看病

10町歩(10㌶)あり田畑を荒らすわけにもいかず
私は親に相談せずに 高校を休学
1つ年上の姉と私の二人で百姓をした

北海道は冷害が多く、3年連続の豊作はありえなかった(当時)
百姓をして初めて多額の借金があることを知った
その借金は田圃の農地改善や農機具の購入等の借入金だった
入院費もあり生活は苦しかった

生活保護を申請した。
なかなか決まらなかった
それは田畑があるから、という理由であった
農民にすれば田畑は米、馬鈴薯など作る上ではなくてはならないもの

町だったので北海道の地方の行政管轄は支庁制をとっていた
後志支庁生活保護担当者と何度も話をした
ようやく生活扶助、医療扶助、教育扶助(妹は中学生だった)の保護決定通知を受けた

生活保護担当者から
忘れもしない屈辱的な言葉 “恵んでやるのだから、ありがたく思え”、
と蔑むような言葉。

50年の時が経過し
生活保護に対する国民の意識は大きく変化した
どう変化したのか 今回はあえて避ける

私の過去ことを書きたくて書いたのではない
これから2回にわたり “生活保護”の現実のケースを通し
生活保護が正しく為されているのかどうか
憲法第25条でいう 健康で文化的な最低限度の生活とは なにか
人間として生きるに値する生活とは



いまでは過去の裁判になり忘れられている(本当は忘れてはならない)
朝日訴訟、堀木訴訟、という人間裁判があった


弱い者は生活保護を容赦なく打ち切られ
怒鳴るような大声を出す者は、主張が通り
生活保護受給内容やその額は「お手盛り」ではないか、と疑う

次回は ひとり暮らしの59歳の男性 元組員の話を書きます



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1049;どうにも止まらない

2019-04-10 16:56:14 | 老いの光影 第4章
銚子燈台

“どうにも止まらない”

“なつぞら”のドラマが終わると同時に
ピンク色のケースに収まっているスマホが鳴り響いた

肺癌末期を自宅で看ている妻からであった
「昨日の朝から鼻血が止まらない。レバーみたい血の塊も出た」
訪問看護師に連絡を入れ、かかりつけの総合病院耳鼻科に受診することになった。

急いで清水健太郎さん宅を訪問
食欲がなく、気持ちも塞ぎ
妻にも冷たくあたる。
「俺の苦しみは俺しかわからない」

夫の苦しい気持ちもわかるけど
私も精一杯、疲れ、ストレスが溜まり、夜も眠れない
疲労困憊

血液サラサラの薬も服用していることもあり
なかなか鼻血は止まらない
鼻孔にテッシュを詰めるも 鼻血は止まらない

救急車を呼ぶほどでもないが
妻一人で車に乗せることも難しい
立つこともままならぬほど体力は落ちている

まだ契約してはいないが
介護タクシー会社に電話を入れ 総合病院への搬送を依頼。

病院に到着し、40分ほどしてから
耳鼻科の診察となった

耳鼻科医の説明によると
鼻腔の壁が傷つきそこから鼻血が出た
本人が負担にならない程度、鼻の孔にガーゼを詰めた

7日間はガーゼはとらずにそのままにしておくこと
途中でガーゼを取り出してしまうと、カサブタがとれたり鼻の壁を更に傷つけ
鼻血が止まらなくなり、慌てて病院に来る人もいる

7日後にガーゼをとるので再受診を。
ガーゼをとらずにいると
これもまた大変なこと(よくないこと)になる


健太郎さんが診察室で処置を受けている間
待合室で妻 雪子さんと話をした。

ご主人の生命をひとりで抱え込むのは大変ですよ。
何かあったら訪問看護師やケアマネジャーに躊躇わず電話かけてね

食欲がないので、無理して食事をあげなくても・・・
調子が良いときなど ウインダゼリーを器に空け、スプーンで食べさせてみるのも1つの方法です
あとは大好物、好物など少量でもよいから、食べたいものを・・・・

夜中、夜明けでも気にせず、困ったら電話をおかけください

健太郎さんは余命1ヶ月と告知され
3ヵ月を迎えようとしている

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1048;飲み忘れの薬がビニール袋から溢れるほど、あるわ、あるわ~

2019-04-10 03:06:23 | 老いの光影 第4章
南湖公園 老木に桜の花

飲み忘れの薬がビニール袋から溢れるほど、あるわ、あるわ~

別のケアマネジャーから受け継いだ稗返義三さん(76歳)
本日二度目の在宅訪問をした

病気は多彩にある
アルコール依存症  酒好きで毎晩ワンカップの焼酎いいちこを飲み続けている
アルコール性認知症 いま服薬したこともインスリン注射をしたことも忘れ、またインスリン注射をしようとする
頚椎症のほか右足大腿骨骨折
糖尿病
陳旧性心筋梗塞  
慢性閉塞性肺疾患 なのにときどき喫煙をしている

稗返爺さんは、建設業、解体業、ラーメン店経営など様々な仕事を転々とした
国民年金で、妻と合せても月3万円足らず


妻は両眼、緑内障で治療中
将来失明の心配
夫の介護どころではないのだが
頑固、我儘な夫は
かたときもベッドの傍らに妻をおき
世話をしてもらっている

夫は大声で妻や長女を怒鳴ったり叩いたり物を投げたりする
そういうときは好きな焼酎も飲まさせなければ、と思うも
そうはいかない

妻も長女も疲れきっている

妻が服薬の「管理」をしているのだが
2年前のインスリンやら錠剤が
4,5個のビニール袋にいっぱい入っていた

朝昼晩
どの薬を、何錠服薬するのか
妻もわからなくなっている
一包化の薬もあれば
シートごと服薬されていない錠剤もあった
その他に打たれていないインスリン

私の方も何だかストレスが溜まりそう
一度本人と妻と一緒に
通院同行し
インスリン注射を服薬に変更することが可能なのかどうか

そして最低限必要な薬だけに絞ってもらえるのかどうか

服薬をわかりやすくしていかねば
薬は溜まる一方

心疾患、肺疾患、そして糖尿病もあり
正しく服薬しないと大変なことになる

今月、あと2,3回は訪問せねばならない



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1041;嫌われる老人

2019-04-05 05:05:33 | 老いの光影 第4章
南みちのく 桜の開花はまだまだ・・・


 嫌われる老人

嫌われる人間は 何処にでもいる
自分がそう思われぬよう 気をつけなければ・・・・

しかし、嫌われている人間の方が
ときには正しかったりする場合もある

認知症が進んでくると
その人の 性格(人柄)は丸裸に晒される

認知症老人は「何もわからなくない人」だと誤解、偏見がある
何もかもがわからなくなることはない
理解力や判断力などは落ちてゆくけれど
感情は失われずにある

自宅やデイサービスは介護施設などで過ごされていて
誰が 私の見方(理解者)であり
敵(命令や指示をする人、ときには叩く人)であるか の区別はできる

感情は失われずにあるけれど
感情が裸のまま晒され

思っていることをそのまま言葉や態度に出てしまうことがあるだけに
やっかいである

老人の性格は
認知症になる前
その老人が培ってきた人柄や性格、価値観など
周囲の人を気にせずストレートに相手を傷つける言葉を吐いてしまう
注意してもわからず 同じ言葉を繰り返す

頭痛の種となる

85歳の関辺婆さんは大きな声で話す
(話すというよりは暴言を放すである)
同年齢の小田倉爺さんだけでなく周りの老人たちにも聞えよがしに
「あんな躰(脳梗塞後遺症、左半身麻痺、軽い言語障害)になってデイサービスに来たいんだべか。俺だったら来ない。食べ方が汚い・・・・」等と大きな声で放す

その老人の持っている性格を変えることは難しく
注意してもわからず
認知症もあり また心ない言葉を吐いてしまう

その婆さんは
同居している嫁様の罵詈雑言(ばりぞうごん)
「東京に嫁いだ長女が一番可愛い」と放たれ
「娘(長女)と鰻を食べてきた、美味しかった」の一言だけで、長男夫婦に手土産の鰻はない

関辺婆さんは いま
悪性リンパ腫でこの先どのくらい生きられるかわからない
本人に告知されたが
病名も告知も忘れている

老いてからも嫌われぬよう気をつけねばならぬ

人を傷つける言葉を吐く
当の本人は気がついていない

言葉は刃物にもなる

言葉は人を癒してもくれる
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1030 地獄の沙汰も金次第

2019-03-29 03:49:44 | 老いの光影 第4章
在宅介護も青い空のように パッと晴れていきたい

 地獄の沙汰も金次第

地獄の沙汰も金次第

金さえあれば飛ぶ鳥も落ちる(類義語)

お金が全てではないが、お金はあると便利な物

老人介護も金次第
老人介護もすべて金で解決する

老人のお金と言えば
年金の種類と受けとる額

その受け取るお金が少ないか多いかによって
十分な介護サービスが受けられるどうかが左右される


年金は老人の物なのだが
老人の手から離れ
子ども夫婦の手に渡ると
誰のためのお金だかわからなくなる家族もある

介護サービスの計画(プラン)を決めるとき
「介護に使えるお金はいくらまで可能ですか」と尋ねることにしている
それぞれ生活費のなかでどのくらい介護に使えるのか

要介護5の認定を受けた老人の場合は
要介護度が重く、それだけ手間(世話)もかかり
使える介護サービスの支給限度額も高いけれど
肝心のお金が無いと家族介護者の負担は大きくなる

ケアマネジャーの仕事は
「マネマネジャー」と比喩される
要介護老人やその家族介護者が必要としているサービスをプラン作成し
老人の自立や家族を支援していく
そのとき支援していく介護サービスの種類や回数が多いと
その分介護負担(自己負担は1割から3割、年金額などの所得によりそれぞれ違う)が増えてくる

現実 年金の受給額によって介護サービスの枠(額)が決められてしまう
老夫婦 国民年金だった場合は本当にそのやりくりが大変
介護を受ける人は介護費用だけでなく医療費の出費もある
その上に後期高齢者医療保険料や介護保険料も馬鹿にならない

場合によっては、生活保護受給世帯の方が「恩恵」が多い
介護扶助が適用になると
介護サービスの自己負担は「なし」
認定を受けた要介護の区分支給限度額の上限枠まで自由に使える

医療扶助の適用も受けていると
医療費、薬代の自己負担はなく
その上に受診する際の交通費も負担してくれる

介護保険料、医療保険料も免除

こんなことを書くと
誤解を招いてしまう
決して生活保護受給者のことを
「問題視」しているのでもなく蔑視しているのでもない

ただ
生活保護を受けている人の場合
ケアマネジャーにとり極めてストレスが高い介護相談の様相にある

老人介護もすべて金次第とは思いたくないけれど
金その存在は大きい
でもそのお金を使うのは人間

お金も大切だが
もっと大切なものがあるような気がしてならない
家族や老夫婦のなかに
思いやりや支え合いなど家族愛があるかないかによっても
介護の質が左右されることも確か

年金と老人介護は表裏一体
いま年金を納めている方々
老人介護はあなた自身の事なのかもしれない


私の場合
年金受給額は生活保護受給額と比べると
そう大差はない
できるものなら
年金を返上して生活保護を受給した方が楽なのかな、と思っても
現実はそうはいかない

だから老いても働いている
老人介護は自分自身の事もでもあり
それは目の前に来ている




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1028 葬祭ホールを予約した

2019-03-28 08:25:51 | 老いの光影 第4章
春には春の花が咲く
 
葬祭ホールを予約した婆さん

谷亀子婆さん(85歳、要介護1)は
70坪余りの大きな平屋に
長男嫁と暮らしている

まだ自分でご飯は炊ける
おかずは嫁様が作り隠居部屋まで運んでくれる

春になり
ようやく土から
出てきた草を
容赦なく根こそぎ草取りに熱中する亀婆さん

何もすることがなくなると
「死にたい」と漏らす

死んだときのことが心配になり
農協の葬祭担当者に電話をかける

どんな葬式にするか
パンフレットを見ながら
葬祭ホールや葬祭内容と
支払いは孫夫婦が行うことで
予約した

亀婆さんは
「いつ死んでもいい」と話されたので
私は「葬祭ホールを予約したから、きっと長生きするね」と答えた
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