自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャガイモの真正種子と,その周辺の話(7)

2013-12-05 | 随想

これまで,簡単に真正種子・品種改良ということばを使ってきました。その簡単さがちょっと気になっています。このシリーズ話を締めくくるにあたって,すこしだけ,改良にまつわるたいせつな事柄に触れておきましょう。

その1。種子一つひとつにはそれぞれ異なる遺伝的形質が受け継がれているという点です。

播種してできたイモは,見た目にわからなくても株ごとに微妙に形質が異なっているのです。わたしが実験観察しているジャガイモの実生植えもそうです。株ごとに異なった形質が現れることになります。つまり,形や色などにバラツキがあるというわけです。

これは,ジャガイモの種イモを植えることと比べると大きな違いです。種イモはいくつに切って植えても,あるいは同一品種のイモをいくつ植えても,形質(形,色とも!)は揃っています。なにしろ,すべてが一個の芋から始まったクローンで,自分自身だからです。

 

人間が食糧として利用する点を念頭に置いて考えれば,この方が形質が安定していて便利です。しかし,ジャガイモの身になって考えると,単一形質の場合は自然環境の変化や,ウィルスなどが起因して,種族の維持が脅かされる場合が想定されます。そうなると,種が全滅の危機にさらされる事態も起こりうるのです。これに対して形質が多様なら,種としての滅亡が避けられます。いくつかの種は,確実に環境の激変に応じていける,ウィルス感染から逃れることができる,など柔軟に対応していけます。

 

したがって,ジャガイモだけでなく,すべての種子植物にとって,種をつくる営みはとても重要な意味があることが理解できます。