難度の極めて高いコットン紙づくりなのですが,ここでストップしてはなんだか悲しい話。とりあえず試作できたものですから,今度は十割コットン紙を漉くことを念頭にさらに工夫してみようと思いました。改良点は次の3点です。
- できるだけダマを少なくするため,繊維を短く切る。
- できた紙料が均一に散らばるように粘剤を入れてからミキサーにかける。
さっそく知人に連絡してコットンを持って来ていただきました。前と同じようにアルカリ剤(セスキ炭酸ソーダ)を加えて煮ます。
ここでちょっと付け加え話。わたしの紙づくり法なのですが,強アルカリ(水酸化ナトリウム)は絶対に使いません。理由は簡単です。だれでもが,安全に紙づくりをたのしめることが主眼だからです。この点,ゴーグルで目を保護し,ゴム手袋をつけて行う紙づくりは推奨できません。
煮終わったあと,離解・叩解工程ではミキサーに頼らざるを得ません(手作業でやらない限り!)。叩解のはじめから粘剤を加えて処理します。これはできるだけダマの数を減らすためです。繊維をいったんきれいに水洗いしたのち,再び粘剤を加えミキサーにかけます。前回は手でかき混ぜるだけでした。改良点1で「できるだけダマを少なくする」と書きました。その手だてとして,手に代えてミキサーで撹拌するのです。おまけに粘剤を徹底して使います。
コットンの色が茶色なのは和綿の特徴です。
結果,すこしはダマが目立たなくなった感じがしますが,期待したほどの効果は得られません。困ったなあと感じながら,とにかく最後までやってみることにしました。
でき上がった紙料を容器に移し替え,さら粘剤を加えて手でかき回しました。下写真がこのときの繊維の様子です。やはり繊維の細かな塊が散在しています。
この紙料についてはこれ以上の改良策は見当たらず,漉くことにしました。
結局,良質のコットン紙をつくるには最小単位の繊維を最大に分離するほかはありません。いってみれば,繊維がどろどろ状態になって,それより長めの繊維が適当に散らばっているというイメージです。長いものがないと紙の強度が保てません。
そう考えると,繊維をさらに短めに切る,具体的には5mm程度に切っておくとそれに近い紙料が得られるのかもしれません。高水準の粘状処理といってもよいでしょう。
さらなる試みが続きます。