つい先日,遠くの港町にある小学校から野草紙づくりについて教えてほしいと依頼を受けました。4年生の「総合的な学習の時間」のテーマとして紙づくりを取り上げ,海浜植物を使って作ったものの,期待したものができないという話でした。
わたしはフリーの身ですから,「お困りでしたら,いくらでもサポートさせていただきます,遠隔地であっても気遣いなしでお願いします」と伝えました。結局,お訪ねして子どもたちの作業の中で助言することになりました。いってみれば“紙づくりおじさん”になるわけです。
その後,子どもたちがこれまでに漉いた紙について,写真を送っていただき,それをとおして見える問題点を伝えておきました。
さて,せっかく行くのですから,わたしが漉いた紙を見てもらうことにしました。子どもの目線で考えると,葉書程度の大きさで,秋の素材を使ってみるのがよいだろうと思いました。それで,採取したのがエノコログサ,ススキ,トウモロコシの三種です。前の二つは茎と葉,トウモロコシは実を包んでいる苞葉です。
今回,紙をつくるにあたっての基本的な心得は以下のとおりです(主なもののみ)。
- 木質化している(しかけている)硬い部分は使わない。(根元に近い部分を避ける)
- 植物を煮る時間は硬めのものは4時間が目安。長くて6時間。(この例ではエノコログサ,ススキ)
- 溜漉き法でつくる。(植物繊維を無駄なく利用できる)
- 紙漉き道具が少ないときは,湿紙をアイロンで乾かす。(ただ,乾きムラが出ないように注意する)
- お盆を過ぎると,自然乾燥に時間がかかるようになるのでアイロンを使うのがよい。
採取する植物の一番目はエノコログサ。
二番目はススキ。
おしまいは,畑のトウモロコシ。これがいちばん手軽。タイミングよく9月収穫用に晩生種を栽培していました。苞葉がしなやかなので2時間も煮れば大丈夫。
こうして三種の植物繊維を取り出しました。紙がつくれるかどうか,これは繊維が取り出せるかどうかにかかっています。とにかく繊維が取り出せさえすれば紙ができるのです。ということは,わたしの場合,今の段階で紙がもうできたといっても差し支えありません。