古代日本国成立の物語

素人なりの楽しみ方、自由な発想、妄想で古代史を考えています。

加茂岩倉遺跡(丹後・出雲 実地踏査ツアー No.19)

2017年04月01日 | 実地踏査・古代史旅
 加茂岩倉遺跡に到着したのが9時半頃だっただろうか。駐車場に車を停め、山あいの細くゆるやかなのぼり坂を歩く。空はスカッと晴れ上がっているのに日陰に入ると肌寒い。次の荒神谷遺跡も山あいの似たような場所にあるので、それを感じてもらおうと「山あいのこの雰囲気を覚えておいて」と二人に伝えたのだけど、どうだったのだろう。
 加茂岩倉遺跡は島根県雲南市加茂町岩倉にある弥生時代の青銅器埋納遺跡で、1996年、農道工事中に39個もの銅鐸が出土した場所である。一度にまとまって出土した数としては全国最多で、出土した銅鐸は全て国宝に指定され、古代出雲歴史博物館に展示されている。なお、遺跡は銅鐸が出土したときの状況が再現される形で保存され、自由に見学ができる。
 歩き始めて5分ほどで現場に到着。「加茂岩倉遺跡ガイダンス」という名の展示施設が谷をまたいで設けられている。いつものパターンならまずここに入って情報収集してから遺跡の現場を見るのだけど、前回ここへきて遺跡を最初に見たときの印象が強烈だったので、直感的にまず現場を見てもらうのがいいと思い、右手に設けられた階段を登ることにした。前回訪問時の印象をもとに書いた記事がこちら

 私は下で写真を撮っていたので少し遅れて登っていったのだが、頂上に近づくと何やら会話が聞こえてくる。到着するとOさんと掃除の爺さんが会話している。どうやら掃除のついでに遺跡の説明をしてくれているようだ。

遺跡に登る階段の手前にあった説明板。


銅鐸が出たのはこの通り結構高いところ。


銅鐸の出土状況が再現された遺跡。




 ひとしきり現場を観察して写真を撮影したあと、ガイダンスへ行くことにした。爺さんはひと足先に現場を離れ、ガイダンスへの遊歩道を掃除しながら歩いている。


遺跡からガイダンスを見る。右側から遊歩道が延びる。


ガイダンス付近からの眺め。ちょうど向こう側に遺跡が見える


 遊歩道でまた爺さんと一緒になり、そのままガイダンスへ。そこで爺さん「どうぞどうぞ、まあ入ってください」てな感じで三人を迎え入れてくれた。中へ入って何をどう見たらいいのか戸惑っていると、ビデオのスイッチを入れて遺跡を紹介する映像を流してくれた。さらに椅子に座って映像を見ていると「まあどうぞ」と、何と三人にお茶を入れてくれたのだ。こんなに朝早くに見学者がやってくることは滅多にないから嬉しかったのだろうか。我々を客人としてもてなしてくれるのだ。それにしても気さくで親切な爺さんだ。
 ビデオを見終わってさあ見学、と思って立ち上がると今度は「説明しましょうか」ときた。こやつ、単なる掃除の爺さんではないな。もしやここの館長か? さすがにそれはなかったが、考古学の専門家でもなんでもない地元の爺さんがここの仕事をするようになってから勉強したそうだ。部屋に並ぶ銅鐸のレプリカをひとつひとつ、その特徴を説明してくれた。有難かった。

出土した銅鐸のレプリカ。



入れ子の状態まで再現されている。


遺跡発見当時の現地説明会のときの様子。長蛇の列だ。


 ここへ来たのが2回目。1回目は雨が降る中で時間も余りなかったのだが、今回はゆっくり見ることができた。それでも何故ここに銅鐸が埋められたのか、それもこれだけたくさん。ここはどういう場所だったのか、39個にはどういう意味があるのか。疑問は解決しなかったが、前回訪問時には気がつかなかったが、今回発見したことがひとつある。車を停めるときに遺跡に一番近い駐車場に停めずに案内表示のままに少し離れたところに停めてしまった。その駐車場のすぐ近くに「大岩」という、いわゆる磐座と思われるものがあるのを見つけた。

大岩。


大岩の説明。


 岩倉という地名から、このあたりに磐座があるのは想像がつくのだが、遺跡から目と鼻の先にこんなに大きな磐座があったとは。この記事を書くにあたって調べてみると、その昔、この大岩の裏から通じる小道の先に矢櫃神社(やびつじんじゃ)というのがあったという。今は廃社となり近くの屋裏八幡宮に合祀されているが、跡地にはご神体であったと思われる磐座がある。このあたりは神が舞い降りる神聖な土地なのだ。銅鐸を埋納した集団は何らかの理由で自らの祭祀方式を放棄せざるを得ない状況に陥った。おそらく別の集団に制圧されたことによるものだろう。祭器であった銅鐸をこの神聖な地で神に奉げるように埋納したのではないか。

 館長代理(?)の爺さんのお蔭で有意義な訪問となった。この爺さんの登場は、SさんとOさんによる加茂岩倉遺跡と荒神谷遺跡に対する強い執念によるものだ。それは次の荒神谷遺跡で証明されることになる。





コメント
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