『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  107

2009-12-15 13:30:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 打ち合わせの場を決めたイリオネスは、アエネアスを呼びに来た。日陰のない浜辺より荒野のあちこちに点在する林のひとつを選んで打ち合わせの場を設定した。場に臨んだのは、パリヌルス、アレテス、オキテスの三名、加えてオロンテス、アカテス、二人の浜頭、合わせて九人で林の一隅に座して打ち合わせの話し合いをした。
 オロンテスら四人は浜から打ち合わせの林に至る道すがらに目にした戦争直後の凄絶な情景に目を見張り、鼻腔を突く血なまぐささに息を止めた。風はなく、照りつける暑熱の太陽、戦場の匂いは風に飛ばされることなく、その場に停滞していた。
 『おう、一同、揃っているな。オロンテスほか浜頭たちも加えて打ち合わせをやる。イリオネス、いいな。パリヌルス、アレテス、いいか。では、始めよう。』
 この言葉で一同の気持ちが引き締まった。
 『一同にはかる案件は、5件だ。先ずそのひとつは、戦後処理のことだ。これは俺からの指示である。イリオネス、訊ねるが。ポリメストルの軍団の生存者数と、ラミドトスの軍団の生存者数は、どれだけだ。』
 イリオネスは、この問いかけに答えた。
『はい。ポリメストル側の生存者は5人です。この5人は、皆、自分で歩けます。ラミドトスの方は、生存者は15人です。このうち5人は、重傷者で歩行は無理です。』