第２章 トラキアへ １０８

　『判った。先ず、ポリメストルのほうだ。イリオネス、アレテス、お前たち二人が担当せよ。生存者５人にポリメストルの遺体を持たせ、部隊を率いて、ポリメストルの砦に赴き、砦を押さえるのだ。事が収まるまで我が方でこれを管理する。次に、ラミドトスのほうだ。これには、パリヌルス、オキテス、お前たち二人の担当だ。ラミドトス側の生存者１５人にラミドトスの遺体を引渡し、船に積んで、出来るだけ早く出航させるのだ。ラミドトスの故国まで、どれくらいの日数で行けるか。俺の思いでは早ければ２日、おそくて３日くらいだと思うが、どんなものだろうか。この暑さだ、遺体が傷む。海水に漬けて運べば、それなりで故国に着けると思うが、どうだろう、パリヌルス。』
　『はい。私は、この季節、屍体を運んだことはありませんが、いま、統領の言われたことが、最適と思われます。故国までの日数も、それくらいで着けると思います。判りました。指示通りに事を運びます。』
　『パリヌルス、必要と思われるだけの食糧も持たせてやれよ。』
　『判りました。万事抜かりなく行います。』
　このエノスの浜の東のはずれから、ラミドトスの故国へは、海路で３５０キロ余りである。順調な航海で３５時間くらいであり、明日の夜には故国に到着できると想定された。
　『イリオネスにアレテス、砦の管理の件については、出発時に話す、それでいいな。次は、押さえた砦をどうするか打ち合わせたい。我々の今後については、俺の抱いている思いについて話す。それを聞いた上で、一同の思いを聞かせてほしい。充分に思いのたけを話してくれ。』