第２章 トラキアへ １０９

　アエネアスは、よくよく考えたと思われたことを話した。
　『いま、考えていることは、今年の収穫のことなのだ。今なら、まだ間に合うと思っている。今年の収穫は、この地でやりたい、そして、我々が住む砦は、我々が選んだ土地に、我々が建設する。この思いだ。この考えをスタンスとして、一同の意見を聞きたい。皆は、どのように考えているか、聞かせてくれ。』
　イリオネスが手を上げた。
　『統領。よく言ってくださいました。私たちは、統領の意向に沿って、これからを考え、物事に当たっていきます。それで統領の思いでは、抑えたポリメストルの砦をどのようにしようと思っておいでか。また、我々がこれから生活を営む砦の建設についても、その一端を、お聞かせください。』
　『あ～あ、俺の思いか。砦の建設は、海岸から遠く離れていないところがいいと思っている。そのうえ、遠く離れていない地点で、予定した収穫が得られる沃野の広がっているところを望んでいる。ポリメストルの砦については、エノス一帯を治めているエノスの砦の領主に引き渡そうと思っている。はじめて話すのだが、エノスの砦の領主には、今日、この地で戦うことを伝えておいた。この戦いは、どうしても避けることが出来ない旨を伝えておいたのだ。そのとき、領主はどう言ったと思う、『闘う以上は、勝て！』と俺に言ったのだ。なんと言っても戦いの場が、領主の庭先だからな。そういう経緯があったのだ。判ってくれたか。』