『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  158

2011-09-05 06:56:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『この舟艇に乗った者たちは、舟艇の走りをどのように感じただろうか』
 パリヌルスは、彼なりに彼らの試乗感を推し量った。
 『まあ~、いいか。統領ほか身近の者たちの意見を艇の上でそれなりに聞いた。チエックの抜け落ちたところはない。この舟艇に関する限り、この俺が全てだ。自信を持とう。舟艇建造の構想を充分に備えている。自賛のところも少々ある。ま~いいか』 としたが、
 懸念が一点ある。それは海上を航走する舟艇が大波にもまれたときの状態である。
 彼らは、浜に帰ってきた。試乗に費やした時間は3時間に至ろうとしていた。
 パリヌルスは、艇から真っ先にとびおりた。彼は艇から降りてくる者たちを迎えた。彼らは新艇を褒め上げた。
 『この新艇は、素晴らしい出来だ、パリヌルス』 とイリオネスが言う。
 『海上での船速がこんなに速いとは思ってもみていなかった』 カイクスは驚きの目を見張っていた。
 『海上を走る姿がこんなに美しいとは。浜で見ていたときには想像もしなかった』 とオロンテスが言った。
 浜衆たちは、『こんな、かっこいい船に乗ったのははじめだ』 と感嘆の声でほめた。
 オキテスは、とんでもない意見を口にした。
 『おいっ!パリヌルス。大変なことだ。お前なんだか分かるか。船尾の三角帆のことだ。舵の取り具合で、これまでより簡単に風上に向かえるかもしれないぞ。そうなると大ごとだぞ』
 『いやあ~、パリヌルス様。いい船です。そのひと言です』 トリタスの感極まったひと言であった。
 皆は、パリヌルスに賛辞を贈った。