『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  161

2011-09-08 07:34:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~い、パリヌルス。俺がお前に頼んでおいた、あの船足の速い舟艇は出来ておろうな』
 テカリオンは、浜に着くなり、舟艇の存在を確かめていたにもかかわらず、パリヌルスに確かめの質問を投げかけた。パリヌルスは、そのことを百も承知の上で答えた。
 『テカリオン、約束は守る、このパリヌルスだ。期待以上のものを造ってお前の来着遅しと待っていたのだ。遅いから、イブリジエからの希望者に譲り渡そうかと考えていたところだ。よ~く見まわしてみろ、向こうに見える帆柱がその舟艇だ』
 『お~っ!そうか。パリヌルス、お前、冗談がきついぞ。ハッハッハ、俺とお前の仲だ。駆け引き無しでお前の希望値を言ってくれていいぞ。ただし、ただしだ、考えられないような高い値段は、言いっこなしだ。お互い、まじめに行こう。あとでゆっくり見せてくれ』
 『テカリオン、まじめな話だ。船は聖なる乗り物だ。ヨッパラッた目で見られることを嫌がる。人智と技術と精魂の結晶の建造物だ。明朝、確かな目で見てくれ』
 『そこまで言うか。そこまで言うなら、お前の言い分を了解した』
 『よっしゃっ!それでいい。今日はしこたま呑んでくれ』
 二人の言葉の掛け合いは和気あいあいであった。