『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  166

2011-09-15 08:01:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 舟艇の商談も決着した。交易の商談の全てが終わった。
 自分たちの守るべき領域で大満足もあれば、ちょっぴりの不満をこらえての満足もあった。だが、最後には、笑顔を交わせる満足で商いは締めくくられた。互いに有利不利を抱きながらも平和な交易であった。
 浜は荷役の作業で沸いた。作業を終えたところで、ささやかではあったがカタチだけの小宴をひらいて、互いの別れを惜しんだ。季節が船を運ぶ頃まで、この浜に交易の船が訪れることはない、秋風が渡っていく浜の午後であった。
 交易の船が出て行く、船上で手が振られている。浜に居並んでいる者たちも手を振って答えていた。
 各舟艇には三人の水夫が乗り、船団の各船が一艇づつ曳航して去っていった。
 浜では、イリオネスを中に据えて、一つの大事をなし終えた安堵感で話し合っていた。
 『いやいや、皆ご苦労であった。計画した交易というひとつの大事を為し終えた。お前たち本当にご苦労であった。お前たちに対する感謝はこのようにいっぱいだ。俺の気持ちを判ってくれるな、ありがとう、ありがとう』
 ありがとうを両の手を広げ感謝を体で表した。そして、だれかれかまわず手を握った。
 『みんなに見せる。これがテカリオンからもらった土産だ。我々が目にしたことのない品だ。これを統領に進呈しようと思っている。お前らの気持ちもそれでいいな』
 『それでいいです』
 『判った!』
 イリオネスは話を結んだ。