『親父、判ってくれつ!』
アエネアスは、短く言葉を吐いて、父の目を鋭い目線で見つめた。
『親父、あんたの怒りはもっともだが、抑えてくれ。あれはもう過去だ。過ぎ去った一事に過ぎない。今の俺はそれどころではないのだ。少ないとはいえ一国とその一国の民を統べている。小さな感情で、一国の民を動かすことは許されないのだ。我々の将来は、もっと大切な一事に向かわなければならないのだ。そこを判ってくれ、それを判ってほしいのだ』
アンキセスは、息子の抱いている望みを垣間見た。しぶしぶだが息子の言葉に従う、あきらめの表情を浮かべた父の姿がそこにあった。
父のいっときの感情のたかぶりが落ち着いてきた。アエネアスも気持ちを落ち着かせた。背筋に流れる汗が冷たく感じられた。
交易を終えた砦には、日常のおちつきが戻ってきていたが、アエネアスには次のステップの決断と実行が迫ってきていた。
『よしっ!今日あたり、次のステップについて、さわりでもイリオネスらと話し合うか』
アエネアスは、背中を押された感じがした。すかさず振り返った、そこには、粗いつくりの壁を吹き抜ける風だけが動いていた。
『何だ、風か』
彼は館から外に出た。陽はさんさんと彼をやいた。行く手に待っている苦難を知らぬげに彼に光を注ぐ太陽は中天にかかりつつあった。
アエネアスは、短く言葉を吐いて、父の目を鋭い目線で見つめた。
『親父、あんたの怒りはもっともだが、抑えてくれ。あれはもう過去だ。過ぎ去った一事に過ぎない。今の俺はそれどころではないのだ。少ないとはいえ一国とその一国の民を統べている。小さな感情で、一国の民を動かすことは許されないのだ。我々の将来は、もっと大切な一事に向かわなければならないのだ。そこを判ってくれ、それを判ってほしいのだ』
アンキセスは、息子の抱いている望みを垣間見た。しぶしぶだが息子の言葉に従う、あきらめの表情を浮かべた父の姿がそこにあった。
父のいっときの感情のたかぶりが落ち着いてきた。アエネアスも気持ちを落ち着かせた。背筋に流れる汗が冷たく感じられた。
交易を終えた砦には、日常のおちつきが戻ってきていたが、アエネアスには次のステップの決断と実行が迫ってきていた。
『よしっ!今日あたり、次のステップについて、さわりでもイリオネスらと話し合うか』
アエネアスは、背中を押された感じがした。すかさず振り返った、そこには、粗いつくりの壁を吹き抜ける風だけが動いていた。
『何だ、風か』
彼は館から外に出た。陽はさんさんと彼をやいた。行く手に待っている苦難を知らぬげに彼に光を注ぐ太陽は中天にかかりつつあった。