『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  171

2011-09-22 06:36:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、父親の荒れた気持ちを受け止めた。
 『親父、あんたの気持ちは判る。俺もあんたの子として、あんたの気持ちを理解している。俺の率いる今の軍団でギリシアへ攻め込んでも、それは無謀というものだ、何にもならん。そのようなことより、もっと大切な一事で俺の頭は一杯なのだ』
 アエネアスは、ひと呼吸をおくために、ここで言葉をきった。彼は、じいっと父親の目を覗き込んだ。父親のわめきを抑えたい。アンキセスの荒れ昂ぶった気持ちを抑えなだめることの難しさを思った。
 アンキセスは、右手にしていた杖を振り回してわずかばかりの家具を叩きまわった。アエネアスは、父の絶叫に上回る大声をあげようとして、はたっと、思いとどまった。彼は、ユールスに老いた父と言い争う修羅場を見せたくはなかった。ユールスを従卒に託して外に出した。
 彼は思いきって大声をあげた。
 『親父っ!やめろっ!このまえにも、あんたに言ったではないか。アガメムノンは、今は死んで、もうこの世にはいない。その他の諸将の一部も命を失って、もうこの世にいないのだ。彼らは見えざる手ですでに成敗されている。そのようなことより、俺たちは、もっと大切な一事に向かわねばならないのだ』
 彼は、言葉をとめて気合いをはかった。