『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  164

2011-09-13 06:27:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 舟艇は追い風で波立つ海面を割って快走した。櫂を上げての航走は風に任せた。
 テカリオンは、堅く口を結んだまま頭に浮かぶチエック項目をチエックしていた。自分の思いを超えている舟艇の走りに舌を巻いた。感動を心の中に秘めて、パリヌルスに話しかけた。
 『おう、パリヌルス。なかなかいい!気に入ったっ。このぶんなら外海で大波にさらされても、それなりにいける。脱着できるセンターボード、船尾の三角帆、三角帆と操舵をひとりでやれる。これは評価できる。センターポールの帆の大きさもバランスがいい。文句なしだ。どうだ、そろそろ引き返そうか』
 『テカリオン、もういいか。お前このまま国に帰ってももいいんだぜ』
 『おいっ、冗談はよせ。浜へ帰って商談をまとめよう』
 『よっしゃ!浜へ帰ろう。試し乗りはもういいな?』
 『いいっ、もう充分だ。帰ろう』
 パリヌルスは、舟艇の回頭を指示した。航跡は半円弧を描いた。舵手は艇の操舵に首を傾げた。パリヌルスは、これを見逃してはいなかった。
 艇は、浜に向かって波を割っていた。テカリオンもパリヌルスも互いに思惑を抱いて艇上にいた。