トロイ軍の将は、シノンに対して訊問を始めた。
『この私を、この私を、助けてくれる、本当に!言います、言います。何でもあらいざらい話しますとも、話しますとも。どうか、どうか、助けてください。』 シノンは、泣いて、涙を流しながら、トロイの将にすがりついた。他人に見つからないようにして、すばやく、シノンは、隠し持っていた黄金の豆板を将の手に握らせた。トロイの将は、気取られないように、シノンを足で力いっぱい蹴飛ばした。
『では、言います。私の名は、シノネスと言います。私はラメデスという将軍の具足持ちをしていたのです。ところが、今度の帰国のこと、逃げ帰ることで、オデッセウスに反目したのです。尻に火のついているオデッセウスは、考えている暇がない、誰にも知られないように亡き者にしてしまった。その光景を具足いれの影から私が見ているのに気付かなかったようなのです。陣払いでごった返しているし、私は、そのことを誰かれ問わずにしゃべったのです。オデッセウスは、それを耳にして、私の命を狙ったのです。私は怖かった。私は逃げ出したのです。しかし、しかし、広い陣営です。私は何とか逃げ切ったのです。私の言っていること聞いてくれているのですか。いやいや、私がトロイで捕まって首をはねられる。それをオデッセウスも願っているはずだ。さあっ、ひと思いに私の首をはねてくれ!ひと思いにやってくれ!』 シノンは、ここまで言って話を中断した。シノンは開き直っている。両手両足を広げて、地面に寝てわめきちらした。
プリアモスは、訊問している将に言葉短く指示をした。
『話を続けさせろ!』
『この私を、この私を、助けてくれる、本当に!言います、言います。何でもあらいざらい話しますとも、話しますとも。どうか、どうか、助けてください。』 シノンは、泣いて、涙を流しながら、トロイの将にすがりついた。他人に見つからないようにして、すばやく、シノンは、隠し持っていた黄金の豆板を将の手に握らせた。トロイの将は、気取られないように、シノンを足で力いっぱい蹴飛ばした。
『では、言います。私の名は、シノネスと言います。私はラメデスという将軍の具足持ちをしていたのです。ところが、今度の帰国のこと、逃げ帰ることで、オデッセウスに反目したのです。尻に火のついているオデッセウスは、考えている暇がない、誰にも知られないように亡き者にしてしまった。その光景を具足いれの影から私が見ているのに気付かなかったようなのです。陣払いでごった返しているし、私は、そのことを誰かれ問わずにしゃべったのです。オデッセウスは、それを耳にして、私の命を狙ったのです。私は怖かった。私は逃げ出したのです。しかし、しかし、広い陣営です。私は何とか逃げ切ったのです。私の言っていること聞いてくれているのですか。いやいや、私がトロイで捕まって首をはねられる。それをオデッセウスも願っているはずだ。さあっ、ひと思いに私の首をはねてくれ!ひと思いにやってくれ!』 シノンは、ここまで言って話を中断した。シノンは開き直っている。両手両足を広げて、地面に寝てわめきちらした。
プリアモスは、訊問している将に言葉短く指示をした。
『話を続けさせろ!』