『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第13章  木馬大作戦  14

2008-06-06 07:44:41 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 各軍団は、陣営と船陣の撤収作業に大わらわであった。各軍団の将は、兵たちを追い立てて作業を急がせた。山から吹き降ろしてくる陸風の力を借りて出航する軍船には、食糧、水等も積み込んで出航させた。トロイとの開戦時に比べて、兵員の数は、3分の2になっていた。アガメムノン、ネストル、、イドメニス他の各将も出航した。残骸の陣営に残っているのは、最終作業の役務を担っている将兵たちであった。
 木馬に乗り込む将と兵たちも彼等を見送った。オデッセウスとメネラオスは、各将と兵に予定地点に集合する刻限であること伝えた。この木馬作戦の24人の将と兵は、黒い衣服を身にまとって、ばらばらになって、戦野の闇に融けて消えていった。
 出航した700隻余りの軍船は、遠くに黒く見えるテネドス島の西側の島影へと急いだ。航走時間は、3時間ぐらいと思われ、太陽の昇る前に目的地に着く予定である。
 木馬作戦の24人は、集合地点に集まった。そこには、エペイオスが闇に包まれて待っていた。

第13章  木馬大作戦  13

2008-06-05 08:07:56 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 パルタカスは、海峡管理隊の兵を引き連れて、帰陣、メネラオスに復命した。彼等は小休止したあと、陣営及び船陣の撤収作業に当たった。兵の損害がほとんどなかったことにメネラオスは、ことのほか喜んだ。
 オデッセウスは、トロイ側に顔の知られていない、最後の大役を任せられる兵を探していた。木馬に不審を抱く者に調べられたり、木馬を壊そうとされたりしないためとトロイ市民の手によって、難なくトロイ城市内に引き入れられるように、詐略の説得と演技をしてくれる者を探した。オデッセウスは探し当てた。ボイオチア軍団の将ぺネレオスの具足持ちをしている若い兵でシノンいう者であった。オデッセウスは、この者の資質を見抜き、役務となすべきことを詳しく説明して、この大役を彼に任せた。うまくやってくれるか、どうか。結果はやってみなければ判らないが、そのシノンという男に莫大な成功報酬を約束した。このことがうまくいかない限り、この奸計である謀略の成功がない。不安が頭をかすめるが、作戦の失敗は有り得ない、と、オデッセウスは、強い自信力と思念の伝達で、シノンが行う詐術を成功に導くことにした。

第13章  木馬大作戦  12

2008-06-04 09:18:03 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 木馬が姿を現していく、前面の塀が取り払われ、打ち壊された頃には、闇が濃くなっていた。木馬が、その巨大な姿を夜の闇の中に現した。それを目にした兵は驚いた。
 『ややっ!あれは何だ!』 暗闇の中の木馬は、兵たちにただならぬ恐怖を覚えさせた。木馬には引き綱がセットされている。どこからともなく集まってきた兵たちが、その引き綱に取り付いた。兵の数は、150人くらいと思われる。綱を引く者、木馬を押す者もいた。皆が木馬に取り付いた。
 台車の車輪が鈍くきしみ始めた。木馬がそろり、そろりと動き始めた。濠を渡っていく、木馬は、見上げる兵たちを見下して、揺れながら、そろりそろり車輪をきしませながら前へ進んだ。濠を渡りきった。エペイオスは、ひと息ついて胸をなでおろした。
 エペイオスは、引き綱を引いている兵たちを励ました。トロイの城壁を目指して木馬は進んで行く、木馬は引かれて、城壁近くの樫の木のほとりに止めた。今宵は、月がない、星明りも心なしくらい、漆黒の暗闇であった。運の良かったことは、気付かれることなく、ここまで運びえたことであった。トロイの城壁まで、まだ、かなりの距離がうかがえた。
 木馬の大きな目は、暗闇を見透かそうとしている、その目線の先には。城の櫓があった。

第13章  木馬大作戦  11

2008-06-03 07:59:36 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 陽が海中に、その身を沈めて行く。多くの血を吸った生臭い戦野を、トロイの城壁を茜に焼いていた。
 トロイ軍の兵が戦野のあちこちから現れてくる、その兵たちが二人となり、三人となり、ひとつの塊が50人くらいの小隊となり、14~15の小隊が戦野に散開して、海峡管理隊の陣営を目指して進んで来る。
 これを見たパルタカスは、敵の作戦を感知、推察した。彼は、その頃、すでに彼の配下の3分の2に当たる1300人の兵を事前にスカマンドロス河の手前まで退かせ、襲撃に備えて待機させていた。また、残った兵の退路も確保していた。船を使い海上を退く者、また、陸上を退く者と万端を整えていた。敵は迫ってくる、襲撃が開始された。パルタカスは、退却を指令した。管理隊は退いて行く、干戈を交えるが、あえて、敵せず逃げた。襲撃隊は凱歌を上げた。彼等は、逃げる管理隊を追撃してきたが、深追いはして来なかった。トロイ軍は、海峡の利権を奪回した。アエネアスは、この襲撃作戦が成功したことの何故については深く考えなかった。海峡の利権を10年ぶりにトロイに戻ったのである。プリアモスも、この報に接し、ことのほか喜んだ。
 連合軍の陣営では、エペイオスが日没を確かめて、木馬の塀の取り壊しに着手した。

第13章  木馬大作戦  10

2008-06-02 20:10:14 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 海峡管理隊が襲撃されることを危惧したメネラオスは、昨夜の間に、更に1000人に及ぶ部隊を派遣して護りを固めるとともに、この部隊を率いる将パルタカスに指示を与えていた。
 『ここに1000人の兵を率いて、お前を行かせるのは、トロイ軍にこちらの意図を見抜かせないためだ。これだけの兵力があれば、敵は簡単に襲撃してこないと思うからだ。明日、日中は、海峡の陣営守護にあたり、日没後、深夜に至って、陣営の灯火は、そのままにして、全軍、敵に気付かれないように引き揚げるのだ。我々は、4日から5日にかけて、作戦計画を練っている。また、襲撃されたら、襲撃されたでいいから、退却するのだ。いいな!退却方法は、お前に任せる。兵を失うでないぞ。いいな。だが、スカマンドロス河を越えて追ってくるようであれば、必死に戦って、敵を叩き潰せ!頼んだぞ。尚、そのときは、ネオプトレモスの軍団に連絡をとり協力を頼め。話は通してある。判ったか。』
 その頃、トロイ軍の総大将アエネアスは、夜襲攻撃の勝利もあり、海峡の利権の奪回を計画していた。アエネアスは、デイポポスに謀った上、3日、日没後の火ともし頃に襲撃する計画を立てていた。