メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

リトル・ミス・サンシャイン

2007-03-06 22:22:06 | 映画

「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine、2006、米、100分)
監督: ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス、脚本: マイケル・アーント
グレッグ・ギニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン
 
アリゾナに住み、自己を高めていく成功法ともいうべきものの研究・教習をやっているがなかなかうまくいかない父親(グレッグ・ギニア)、高校にいく前あたりの息子はへそを曲げて筆談だけでニーチェに心酔、小さい娘(オリーヴ)は子供ミスコンを夢見ている。なんと祖父はヤク中、そこへゲイで失恋し自殺未遂した自称プルースト学者の伯父が転がり込む。母親(トニ・コレット)は多少まともだが希望はない。
 
つまり6人とも、頭は悪くないのだが、勝ち組にはなれず、負け組と自他ともに認めている。しかし、祖父を除けば、それぞれのスタイルで勝ち組をめざしている。このあたりが、やはりアメリカ、どうしようもなくアメリカで、見ていてはじめはちょっとうんざりする。
息子がだまってどこかのフライドチキンがつまった紙のバケツをテーブルに置き、紙の皿を配置して夕食の準備、というのを見ると、おいおいといってしまうのだ。
 
そこへ、幸運にも娘がカリフォルニアで行われるミスコン全国大会(リトル・ミス・サンシャイン)に出られることになり、お金はないが皆で行こうということから、ボロの黄色い小型バス(ワーゲン)を借りて、出かけることになる。
ここからが典型的なロード・ムービーで、すぐにクラッチが壊れ、発信時はかならず皆で押しがけしないといけないはめになる。ここだけはいやでもまとまらないといけないということだ。この何度も出てくるシーンのヴァリエーションが、ストーリーを反映して、面白い。
 
こういう設定で、そこそこの役者を使えば、皆下手な演技をするわけはない。トニ・コレットは「イン・ハー・シューズ」でキャメロン・ディアスの姉を好演したが、あれよりも自然な感じ、アラン・アーキンは楽しそうで、この程度の出演時間でオスカー(助演男優賞)というのはちょっと功労賞かなとも思うが、これもよくあることだ。どっちかというと伯父役のスティーブ・カレルがなかなかいい。甥と同病相憐れむ風のところはしみじみしている。
 
娘のアビゲイル・ブレスリン、子役でオスカー(助演女優賞)ノミネートというのは好みでないが、うまいことは抜群である。(でもちょっとおなかが出すぎているよ)
終盤、なんとか会場について、なかなかの脚本だったけれどミスコンでオリーヴがどっちに転ぶかそれぞれについて想像し、それで終わるのかな、と思っていたら、こういうやり方があったかと驚き、笑い、そして自然に泣けてくる。脚本に「まいった」である。(オスカー・オリジナル脚本賞!)
 
ただ脚本がいかに素晴らしくても、このフィナーレはアビゲイル・ブレスリンの演技とそれを引き出す演出がなければ、こうはいかなかった。さらに考えれば、ここにはアラン・アーキンの演技が下味となっている。


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