「ぼくのプレミア・ライフ」(Fever Pitch 、1997、英、102分)
監督:デヴィッド・エヴァンス、原作・脚本: ニック・ホーンビィ
コリン・ファース、ルース・ジェメル、マーク・ストロング
この原作(同名)も読んだし、このあと作者、監督も製作にかかわり設定を野球のボストン・レッドソックスにしてリメイクした「2番目のキス」(2005)も見たが、こっちはやっとDVD再発売で見ることが出来た。
作者がおそらく原作で描きたかったであろうリーグ特定チームのファンが、どんな思いで生活し、人生をたどっているか、それはこの映画を見ると一番はっきりわかる。
主人公は国語の教師、アーセナルのファン、チームにはいつも裏切られ続け、18年を経た1989年、この試合でリバプールに2-0で勝てれば優勝というとき、恋人との事情で試合には行かず、友人とTVを見ながら、負けるに決まっているから見るのはやめて飲みに行こうと自虐的な悪態をつき続けるところなどは、まさしく「見ていられない」といいながら薄目をあけて見ている、という典型的なファン心情がよく出ている。程度は違うがちょっと身につまされるところだ。
特にサッカーでは、90分とロスタイム、本当に終わるまで勝つも負けるもわからないというケースがよくあり、だからその期待と悲嘆の落差、そして結果が出るまでのストレスは実に大きい。
そうはいってもこの映画、要するに原作を反映しながらもこの一点に集中しているので、ドラマとしては単純で、本国以外ではそんなに売れなかっただろう。
コリン・ファースは、まだ若いこともあり、好漢と自堕落の二面を持つこの役にはぴったりで、むしろここからダーシー・キャラに飛躍したことの方が意外である。
そこへいくと「2番目のキス」は、後で作っただけあって、もっとドラマの構成を考えた作りであり、野球ということもあって、試合の進行がゆっくりでしかもメリハリがきいているから、観客席内の描き方などは多様で面白い。
1989年当時のアーセナルユニフォームは、選手、ファンそれぞれに沢山出てくるが、胸の大きなスポンサー・ロゴはJVC(日本ビクター)である。会社は今どうなるか微妙なところだが、こういう映像が残っていくことはある意味で名誉なことだ。