「ナンシー関 大ハンコ展」 (渋谷パルコ パート1パルコファクトリー、6月5日~6月15日)
ナンシー関(1962-2002)の死後、その消しゴム版画を集積し、約5000点版木(ゴム)と代表的な作品を展示したもの。
週刊文春で1993年に始まった「テレビ消灯時間」、その版画と思いがけない指摘に驚かされるテレビ批評をずっと楽しんできた。
彼女の死後、テレビに緊張感がない、彼女だったら今この人をどう彫るか、どうか書くか、というのは多くの人に共通する思いだろう。
丁度七回忌でもあり、多くのメディア関係者のビデオメッセージが流れていたが、皆そのとおりで、入場者みなさん、肯いていたようだ。
青森県棟方志功記念館の隣の小学校出身で、そこは版画教育が盛んだったそうだ。版画の中に志功、そして同じ青森の太宰治があって、オマージュであると同時に、何か共通するものを感じた。
ゴム印というのは、押したときの感じを想像するに、これがあの独特の張力をはらんだ線を出すのだろうか。
その一方で、スポーツなど連続的な動きを数枚に表現したものは、別のすっきりしたユーモアが、北斎漫画に通じる。
もちろん、リアルタイムで見てこそだが、ナンシーの特徴は、誰にもわかる対象の特徴と、ナンシーが見出したそういえばこの人にはこういうところがあるかもしれないと思わせるちょっとした描写の添加、その微妙なバランスが、見るものに声にでない笑いを引き起こす、そういったものだろう。
一方で、おそらくナンシーが単純に好きだったものを彫ったものは、単純にいい絵である。例えばジャイアント馬場、十六文の足がおしゃれだ。