「オーケストラ!」(Le Concert 、2009年仏、124分)
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、ドミトリー・ナザロフ、ヴァレリー・バリノフ、アンナ・カメンコヴァ、ミュウ=ミュウ
見始めてしばらくはこのつくりになじめない。ブレジネフ体制下のユダヤ人音楽家排斥、それに反抗した指揮者(主人公)がボリショイ劇場で清掃係をしていて、たまたま目にしてしまったファクスで求められているのはパリ・シャトレから予定キャンセルの代役としての2週間後のオーケストラ公演、そのファクスを盗んでしまい嘗ての仲間を集めて偽オーケストラを組みパリに乗り込む。共演ソリストの若手女性ヴァイオリニスト、なぜ彼(指揮者)は強引に彼女を指名したのか。
体制の、時代の背景、個人の人生の答え探し、それを組み合わせて進んでいくドタバタコメディ、映画としては今にも破たんしそうになるのだが、何とか興味は最後までつながれ、言うのも恥ずかしいが感動的なフィナーレが待っている。
そしてこのドラマのライトモティーフとなり、まさにその音楽が奇跡を呼ぶのがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、他のどんな曲でもこれは不可能だったにちがいない。この曲の力を思い知らされる。
29歳のヴァイオリニストを演じるメラニー・ロラン、クレジットにヴァイオリンのコーチの名前が出てくるけれども、よく演じた。そしてこの映画では、憧れのパリのヴァイオリニストでないといけないのだが、それにぴったり。
伝えられた楽譜を見て弾くリハーサルなしのカデンツァで、指揮者は彼女がすべてを知り受け入れたことを知る、このあたりも見事。
29歳の評判のヴァイオリニストがチャイコフスキーを一度も弾いたことがない、というのは無理があるけれども、それは突っ込まないことにしよう。
メラニー・ロランはほんとうにチャーミング、特にブラウスの着方がパリジェンヌ。