メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

偉大なるしゅららぼん (万城目 学)

2011-06-26 16:49:09 | 本と雑誌

「偉大なるしゅららぼん 」 万城目 学 (集英社)
 
今回はパワースポットとしての琵琶湖を舞台にした物語である。
京都の「鴨川ホルモー」、奈良の「鹿男あおによし」、大阪の「プリンセス・トヨトミ」(映画とちがい原作はこのように中黒が入る)ときて、滋賀は琵琶湖というのはお手軽だが、これはありだろう。
 
物語の背景に広がる非現実かつお伽噺のような世界は、それでもありそうで想像してもいいなと思わせる鹿男やプリンセスと比べると、これはかなり飛躍した話で、鴨川ホルモーに近い。
 
琵琶湖に古くからいる二つの家系、その一族に今も不思議な力を授かる人がでてくる。彼ら、彼女らが、その一員たちの高校入学を期にこれも不思議な葛藤、絡み合いを見せる。
そういうと変な話のようだが、ストーリーの一つ一つの要素は、青年期に人が外界との関係で問題になる、また他人との関係で苦しむ、そういうことを象徴していて、そういういろんなことをこの物語の中に解体し、様々に組み合わせて展開していった、ということはわかる。その展開は先を読みたくなるもので、だからかなり長いにもかかわらず、退屈しないで読める。 
 
それはそうだが、読み終わると、忘れるのも早いかなとも思うし、前作などに比べると映画化するなら配役は、、、という想像もあまりでてこない。
とはいえ、こういう途方もない話を思いつく作者は不思議な人である。


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