「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」 上・下
スティーグ・ラーソン著、ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利訳 早川書房
三部作の最初、スウェーデン生まれの作者スティーグ・ラーソン(1954-2004)は、発表後の大成功を見ることなくなくなってしまったそうだ。
孤島で起きたある財閥一族少女の失踪事件から30年以上たち、その一族の有力者である老人から社会派雑誌「ミレニアム」の主宰者(主人公)にその調査を兼ねた自伝執筆が依頼される。主人公はその前にある経済界の大物に関するスクープをするがそれが間違った情報を使ったということで名誉棄損の判決を受け入れざるを得ない状況になっていた。
ここから、一族の大勢が登場、その解きほぐし、過去の掘り起しが始まるが、徐々に危険が迫ってくる。というあたりは予想どおり。
主人公にからんでくる、そして助けることになる、謎の若い女性、いろいろハンデキャップがあるが、天才的な面も持っている。
犯罪は、狂気、性的異常、宗教がらみであって、なにか「羊たちの沈黙」を思い起こさせるが、主に登場する人たちに天才もいなければ警察官がいるわけでもない。
この作品の魅力は、そういうプロットに加え、またそれよりも中心となる男女二人の会話、そして作者の文章にあって、あっという間に最後まで読むというより、その間の文章を楽しみたいという気にさせる。
原文はスウェーデン語で、その仏訳から一人が和訳したものをもう一人が原文と照らし合わせるというプロセスをとったようだ。これが成功したのだろうし、この文章の心地よさは原作者のものなのだろう。
三部作の2、3、そしてこれらの映画も見ていくつもりで、しばらく先までの楽しみが出来た。