メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ドニゼッティ「連隊の娘」(メトロポリタン)

2012-05-08 22:36:46 | 音楽一般

ドニゼッティ:歌劇「連隊の娘」

指揮:マルコ・アルミリアート、演出:ロラン・ペリー

ナタリー・デセイ(マリー)、ファン・ディエゴ・フローレス(トニオ)、フェリシティ・バーマー(ベルケンフィールド公爵夫人)、アレッサンドロ・コルベッリ(シェルピス)

2008年4月26日メトロポリタン歌劇場、 2012年4月WOWOW放送録画

 

ドニゼッティ(1797-1848) が1839年に作曲したフランス語のコメディ・オペラ。スイスに居るあるフランス連隊に幼児のころ拾われた娘(マリー)がいて、洗濯など雑用をしており隊のマスコットともなっている。たまたま出会った男(トニオ)と互いに一目ぼれになるが、隊の軍曹シェルピスは隊のもの以外と結婚させないと反対する。そこへ、マリーが実はわけあって捨てられた貴族の娘だという公爵夫人が現れ、彼女を連れ去ってしまう。そしてパリで、マイ・フェア・レディのイライザさながらの教育訓練を受け、貴族との結婚話が持ち上がり、彼女は悲嘆にくれるのだが、そこへ、、、というよくあるパターンの話である。

 

ところが、予想以上というか、私が知らなかったのだが、「ランメルモールのルチア」や「ドン・パスクワーレ」を見てみればわかるように、ドニゼッティは極めて充実したそして耳に心地よい音楽を紡ぎだす人で、それはこの作品でも例外ではない。そして、この比較的短い作品は傑作である。もちろんこの上演の出来もあるのだが。 

 

マリー役のナタリー・デセイはルチアの狂乱の場もすごかったが、ここでは少年のような容貌でコミカルな動き、セリフと演技、それでいて歌も表現の幅があって素晴らしい。彼女がフランス人であることも効いている。

そしてフローレスが演じるトニオ、この役のハイCであのパヴァロッティが一躍スターになったということだけれども、フローレスはこれをクリアし、インタビューではアドリブでさらに高いDフラットもいれたとのこと。この人、姿もいいし、朗らかで、これは例の「オリー伯爵」の3年前だが、ここでの実績で起用されたのかもしれない。

 

父親代わりシェルピス役のアレッサンドロ・コルベッリも達者で楽しい。

 

また、パリの公爵夫人邸で、小間使達が掃除などの仕事をする時の動きが、バレエの基本練習のパターンになっているのが笑える。 

 

この楽しさに気づくと、アメリカのミュージカルにはドニゼッティなどのこの種の作品が影響を与えているのでは、と思えてくる。これまではウィーンのオペレッタが原型かと思っていたが、そればかりではなさそうだ。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする