イヴ・サンローラン(L'amour Fou、2010仏、103分)
監督:ピエール・トレトン
イヴ・サンローラン(アーカイブ映像)、ピエール・ベルジュ
イヴ・サンローラン(1936-2008) が若くしてディオールに見込まれてデビュー、直後のディオール死去で後を継ぎ、フランスファッションの危機を救ってから、彼自身の死去、そしてその膨大な美術コレクションがクリスティーズでオークションにかかるまでを、生涯彼の公私にわたるパートナーだったピエール・ベルジュのモノローグ主体に描いたドキュメンタリー映画である。他に何人かの発言はあるが、通常のナレーションはない。
トップになってから極度の緊張と疲労、それが並大抵なものではなかったことが想像される。そういうなかで、そこそこの年齢まで生きながらえて引退したのは、ベルジュとの関係がうまくいっていたことが大きいのだろう。
サンローランが集めた美術品、そしてリフレッシュするために訪れた場所、住まい、それらは伝統的なヨーロッパではなく、異国的というか、具体的にはアフリカ、アジアの色彩が多い。それは彼の作品にも反映しているように思われる。
この世界の高い水準を維持し続け、その一方でパンタロン・スーツ、またプレタポルテというビジネスで、働く女性、多くの地域の人たちに寄与した、こういう傑出した人を、こういう形で描くのはフランスだけかもしれない。何という自信!