スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)
アガサ・クリスティー 矢沢聖子訳 ハヤカワ文庫
アガサ・クリスティー (1890-1976) が1920年にはじめての探偵小説として発表したもので、ポアロシリーズの第一作でもある。
イギリスの郊外、裕福な階級の館に人々が集まっている中で、女主人が殺される。家族関係、使用人、財産の行方(遺言状)などがからんでいる。
この事件の前に家族の友人として招かれたのは元軍人のヘイスティングスで、そこから友人のポアロにつながり、二人で事件を解決していく、という多くのポアロシリーズに見られる形はここで始まっている。
先の「批評理論入門」に書かれていたが、これは一人の登場人物の語りとして書かれていて、そのため叙述、描写は具体的で、読者がこの種の物語を読み進みやすくしている。
そして、あのポアロの独特な、すべてを話さずヒントだけだったり、はぐらかしたり、あとでその言い訳をしたり、という面白さというか気障ともいえる癖(私も多少うるさいと思うところはある)が物語全体の調子を整えている、といったらいいだろうか。
この時代の人たち、館、道具などの細部はまずまず興味深いし、謎解きの展開、しかけも凝っている。ただ、犯人の動機に関するところは、最後の最後に意外過ぎる形で次々と明かされるから、謎解き探偵小説以上の、つまり物語としての味わいはそれほどではない。
訳は明快で、話の進行をスムースに追えるものとなっている。
アガサ・クリスティー 矢沢聖子訳 ハヤカワ文庫
アガサ・クリスティー (1890-1976) が1920年にはじめての探偵小説として発表したもので、ポアロシリーズの第一作でもある。
イギリスの郊外、裕福な階級の館に人々が集まっている中で、女主人が殺される。家族関係、使用人、財産の行方(遺言状)などがからんでいる。
この事件の前に家族の友人として招かれたのは元軍人のヘイスティングスで、そこから友人のポアロにつながり、二人で事件を解決していく、という多くのポアロシリーズに見られる形はここで始まっている。
先の「批評理論入門」に書かれていたが、これは一人の登場人物の語りとして書かれていて、そのため叙述、描写は具体的で、読者がこの種の物語を読み進みやすくしている。
そして、あのポアロの独特な、すべてを話さずヒントだけだったり、はぐらかしたり、あとでその言い訳をしたり、という面白さというか気障ともいえる癖(私も多少うるさいと思うところはある)が物語全体の調子を整えている、といったらいいだろうか。
この時代の人たち、館、道具などの細部はまずまず興味深いし、謎解きの展開、しかけも凝っている。ただ、犯人の動機に関するところは、最後の最後に意外過ぎる形で次々と明かされるから、謎解き探偵小説以上の、つまり物語としての味わいはそれほどではない。
訳は明快で、話の進行をスムースに追えるものとなっている。