メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

リオ・ブラボー

2020-05-12 09:14:14 | 映画
リオ・ブラボー (Rio Bravo、1959米、141分)
監督:ハワード・ホークス、音楽:ディミトリ・ティオムキン
ジョン・ウェイン(保安官チャンス)、ディーン・マーチン(デュード)、リッキー・ネルソン(コロラド)、アンジー・ディキンソン(フェザーズ)、ウォルター・ブレナン(保安官助手スタンピー)、ワード・ボンド(ホイーラー)、ジョン・ラッセル(ネイサン・バーデッド)
  
シリアスな西部劇から始まり、脚本、配役、演技(ガン・プレイ他)、撮影など、娯楽要素を充実させてきたホークスの一つの回答というように受け取れる傑作。見た記憶がなくはないが、おそらくカットも入ったTV放送だったのだろうか、もっと軽い娯楽作品と思っていた。
 
リオ・ブラボーの酒場で、いざこざがあり殺人を犯した男を保安官チャンスが捕まえるが、男はこのあたりの有力者の弟で、その一家はチャンスに脅しをかける。いざこざに巻き込まれたのは、以前は拳銃でも名の知られたデュードだが、落ちぶれた飲んだくれになっていた。町でなんとかしようとしたホイーラーが殺され、その組にいた若い拳銃使いのコロラドが、チャンスの味方になってくる。老いて足の悪い助手スタンピーも含め、この4人で、一味にあたることになるが、もちろんこの種の映画でお約束通り多勢に無勢、4人の中にもそれぞれ事情があり、一筋縄では一体にならない。
 
それで映画は長くなるのだが、そのなかに楽しみは数多く撒かれている。飲んだくれのガンマンといえば、同じホークスの「エル・ドラド」(1960)のロバート・ミッチャムを思い出す。ディーン・マーチンはまだ顔も体も細くて、落ちぶれたイメージによくフィットしている。
 
リッキー・ネルソンはまだ19歳? でもこのとき私もよく見ていたネルソン一家のホームドラマでおなじみだった。このあと歌手としてかなりヒット曲を出し、人気もあったが、飛行機事故で死んでしまったのは気の毒。45歳だった。「赤い河」のモンゴメリー・クリフトといい、このリッキー・ネルソンといい、ホークスは意外性のある配役、特に若手の起用で新鮮味を出してくれる。
 
ウォルター・ブレナンも、これはお約束どおりというか笑わせてくれるが、肝心なところで納得できる働きをする。
  
そしてここに旅の女、ちょっと怪しげでいわくありげな美女、アンジー・ディキンソンである。風貌、髪型、服装などモダーン、とてもこの時代のこの場には、という感じなのだが、あえて彼女を使ったのはホークスの好みだろう。決して演技がどうのという彼女だけれど、見ていて楽しい。保安官のウェインも彼女とのからみがあるから、単に従来の保安官役から想像するイメージより、少しふくらみが出ているようだ。
アンジーが確かその美脚に高い保険をかけたということをきいた覚えがあ、それはそうだろう。
 
有名な割にあまり映画には出なかったようで、しばらくはあのバート・バカラックと結婚していた。バカラックの「自伝」よれば、二人の間に生まれた娘につらい疾患があり、苦労したようだ。
 
音楽はホークスとのコンビが多いティオムキン。保安官たちと一家の決闘が近くなって、酒場から聞こえるのが印象的な「皆殺しの歌」(トランペット)、これはアラモを攻撃したメキシコ軍の曲をもとにしたといわれていて、この映画のすぐあとの「アラモ」でも使われている。
また「ライフルと愛馬」はよく知られたヒット曲で、決闘の前夜、室内でマーチンがネルソンと彼のギターで歌って楽しませてくれる。「赤い河」でも印象的だったが、確か歌詞はなかったと思う。


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