「スペイン人はなぜ小さいのにサッカーが強いのか 日本がワールドカップで勝つためのヒント」(村松尚登 ソフトバンク新書 2010年)
最近評判の本である。
2008年のユーロ2008(欧州選手権)でスペイン代表が優勝、そしてそれと前後してのFCバルセロナのヨーロッパチャンピオンズリーグなどでの圧倒的な活躍、これらを見ると、いよいよ無冠のスペインが今度のワールドカップ(2010、南アフリカ)を勝ち取るかも知れない、と私も思っている。一回くらい勝たせてやりたい、と日本人であっても思ってしまう。
どうしてこのところこんなに強くなったのか、そして体格的にも日本人よりむしろ小さいスペインチームからのヒントが日本を強くしていくのでは、というところが、この本のポイントである。
まず、サッカーはサッカーを常時することによってうまくなる。ランニング、シュート、ドリブル、それらをいくら個別にやっても、一見すごいアスリートに見えるかもしれないが、サッカーをやらせると大したことない。
スペインではトップチームからそのクラブ組織、地域を10歳以下まで細かくレベル分けされたリーグがあり、また例えば何十人も選手がいればそれをA、Bという風にわけて、1チームは20人程度、シーズンは毎週一回は試合があるから、ケガとか途中交代などで、ベンチを暖めるだけなどという選手はいない。トーナメントではないから、負けたら終わりではなく、すぐ次の試合に切りかえる。
サッカーはカオスであり、攻撃がすぐ守備にかわり、その逆もある。野球のように攻撃と守備が決まっており、ポジションもあまり細分化されてはいない。
サッカーの技術、トレーニングを考える上で大事なのは、その習得すべき技術、スタイルというものは(なんと)フラクタルであるということ。すなわち自己相似形、というか、つまり1対1とか2、数人対数人、そしてチーム全体と、大きくなっても同じパターンでプレーできる、ということが重視される。意識にまで刷り込まれていて、そうあるべきとされた原則で無意識に体が動く、瞬時の判断がなされる、ということだろうか。
それはそのチームのクラブ組織では、子供が小さいグラウンド、少人数でおこなうときも徹底される。
こういうのが、サッカー文化とでもいうんでしょうね。
子供でも、サッカーを見る目はあって、今はやはりフォーバックが徹底されており、子供のときからコーチは、日本みたいに皆いいMFとうスタイルで育てるのでなく、例えば非常に高い身体能力とテクニックを持つ子を、左右の効き足他からサイドバックが最適とし、本人も納得してくるという。
日本でも、グラウンドを多く、チームを細分化し、地域でリーグを多く作る、みんな毎週試合ができる、となれば、、トップレベルばかりでなく、草サッカーというかそういうところも含め、もちろんファンの目も肥えてくる、という効果が出てくるかもしれない。
そうなれば著者がいう、名プレーヤーは育てるものではなく見つけるものだ、育てたコーチより見つけた人が評価される、というスペインのような形も現実的なものとなる。