「国宝 阿修羅展」(東京国立博物館平成館、3月31日~6月7日)
興福寺の阿修羅像、一度奈良で見たようにも思うのだが、定かではない。写真などでは全体に赤い色調で、そういうイメージがついていたが、やはり実際に見てみるものである。
全体は想像したより比較的小さい。八部衆の一つという知識がなかったのだが、そうであればこのくらいだろうか。また色はそんなに赤くない。
こうして360度、すべての角度からゆっくり眺められるというのは、やはり価値がある。正面のなんとも言いがたい顔はもちろんだが、左側の下唇をかんだ顔ももう少し後ろに回ると、またそういう激しさとは別の面が見えてくる。
右側の顔も真後ろに回って見るとなんとも美しい女性の顔だが、正面に回ってくるにつれてきりっとした男性の顔も見て取れる。
彫刻や能面など、角度によって同じようなことはあるから阿修羅だけのことではないが、この展示はありがたい。
極端にスマートなプロポーション、不思議な6本の手、衣、靴、734年の作である。これを浮かび立たせる照明も、この数年この館の熟練の成果だろうか。ここまで思い切った見せ方は、自信がないとなかなか出来ないだろう。
中金堂鎮壇具という数々の展示物、金、水晶、瑪瑙などの美しいものが多い。並べ方にもセンスがあった。
順路の最後の一室で、凸版印刷がつくった中金堂(再建中)と阿修羅像のヴァーチャル・リアリティ技術を使ったデジタルアーカイブ映像抜粋が上映されている。SONYのいわゆる4K(横4000縦2000)プロジェクターによるものだが、このような中小映画館規模の画面になると、画質はあと一息に見えた。