ベッリーニ:歌劇「清教徒」 (I Puritani)
指揮:パトリック・サマーズ、演出:サンドロ・セキ
アンナ・ネトレプコ(エルヴィラ)、エリック・カトラー(アルトゥーロ)、フランコ・ヴァッサロ(リッカルド)、ジョン・レリエ(ジョルジョ)
2007年1月6日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場、2012年1月WOWOWの放送録画
このオペラを見るのも聴くのも初めてである。イギリスの議会派と王党派の争いが背景にあるから清教徒(議会派?)というタイトルになっているのだろうが、登場人物はほとんど議会派だし、最後もどうしてそうなるのかよくわからないという筋立て。そういえば「ルチア」もスコットランドの話であった。
それでも、エルヴィラが恋する相手アルトゥーロが裏切ったと誤解して演じる狂乱の場 がすべて、それがよければ満足というもので、演じる方も、観に行く方もそのつもりのようだ。
狂乱の場(Mad Scene) は30分に及び、ベッリーニ(1801-1835)最後の作品だけあってメロディーは美し、ここでは血みどろという側面はない。、歌うアンナ・ネトレプコは、このところ何度も録画に出てくるようにメトのもっともすぐれたディーヴァの一人で、寝転がって歌うところなども含め歌唱の魅力は文句なしといってよい。それにアップで撮られていることを彼女はわかっているわけで、それを前提としたしぐさや表情など、女優としても大したものである。
幕間の随所で過去のこういうベルカント歌手の談話、ラジオ版解説で出ていてこの役もよくやっていたビヴァリー・シルズなどの解説があり、いかにこの曲を彼女たちが愛しているか、モーツアルトに比べても「声」にいいのは、メロディーラインに無理がなく、オーケストラ編成が小さいので無理して張り合わなくてもいいなど、なるほどと納得する話が多かった。
シルズはこの半年後に亡くなったそうだ。
メトロポリタンでこの種のものをやってくれて気楽に見ることが出来ると、オペラの世界の理解、楽しみが、もう少し広がるかもしれない。