歌劇「マクロプロス事件」
作曲:ヤナーチェク、原作:カレル・チャペック、演出:クリストフ・マルターラー
エサ・ペッカ・サロネン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アンゲラ・デノケ(オペラ歌手)
2011年8月 ザルツブルク祝祭大劇場 2012年3月NHK BS で放送録画
見るのも聴くのも初めてである。ヤナーチェクのオペラは、いくつか題名だけ知っているが、これはほとんど頭になかった。晩年の1923-1925年に作曲されたようである。
かなり変わった設定で、100年前1820年代からもめているある遺産相続、それも名家の子孫と非嫡出子の子孫の間で、遺言書だとかいろんな証拠が争われている。後者の子孫が頼んでいる弁護士事務所からはじまり、そこに宮廷劇場プリマドンナの歌手が現れ、どうも彼女がこの件にかかわっていて、しかも300年も生きているということらしい。
いつまでもついてくる過去、長生きするのにどんな意味があるのか、、、ということを聴衆に考えさせる。
複雑な糸がほどかれていきフィナーレ。3幕の間、舞台の袖で不思議な無言劇が演じられる。この演出では弁護士事務所の装置がほぼ変わらないで使われるのだが、それが劇場楽屋、ホテル、裁判所のようにも見せている。
そしてなんといってもここではアンゲラ・デノケが独壇場の演技である。濃いメイク、長身で、脚線美を強調し(これは物語としても意味があるようで)、このドラマを支配する。表現力がある歌唱も最後まで衰えない。音楽は特に浸れるようなものよりは、刺激的ではあるけれども、聴くことによって劇の進行にうまく身を委ねることが出来る。
サロネンの指揮も的確。終わってのカーテンコールは、細かく演出されているかのような形であった。
ともかく、こういうものが観られるのはありがたい。