とめられなかった戦争 加藤陽子 著 2017年2月 文春文庫
「NHKさかのぼり日本史 ②昭和 とめられなかった戦争」2011年7月 NHK出版の文庫化
太平洋戦争終結翌年生まれの私が、これまでこの戦争についていろんな角度の論考を見てきて一番に思うのは、なぜ1944年のサイパン陥落の前後、できればその前に、戦争を終えられなかったのか、ということである。
もちろん戦争にならなければよかったのだが、それはそうだとしても、あの状況で早くとめることが全く不可能だったは思えない。もしとめられていれば、あの本土大空襲、沖縄、広島、長崎はなかったわけだ。
さかのぼりだからか、著述はこのサイパンから始まっている。その前の戦況展開についても明解である。そして日米開戦、日中、満蒙とさかのぼる。だからといって、これがなければ後の事態はないということではない。条件、要因はいろいろあっても、だからといってその後必然的にそうなるものではないという前提で書かれている。その一つ一つの判断について、的確な評価がなされている。そうでなければ、明治以来の日本のありかたが、、、という無責任な議論があいかわらず続いてしまっただろう。
著者のまとまった本は読んでいないが、新聞、TVなどのメディアで、最新の資料を駆使した冷静な論考は注目していた。いまだイデオロギッシュな面が中心となった議論がかなり残っている中で、右寄りといわれることすらあるが、それはナンセンスである。とにかくあの戦争に入っていった、その日本の体制、教育、空気といったものが主体の議論、そして絶対に戦争に入ってはならないということがベースの考え方が今後も続くようだと、それは少しでも戦争状態にならなければよいが、人類の何千年を眺めても、確率100%ではない以上、おこる可能性はあって、そうなったとき特に侵略されたとき過激な平和主義者はおそらく正反対に好戦的になるか、玉砕主義になるのではないか、と考えている。戦争状態でいかに冷静にことを進めるかを考えたことがないから。
この本では、特にあの真珠湾は米国がわざと呼び込んだわなという説が昔からある以上に、中国政策、対ソ連戦略から、米国の周到な日本包囲政策が進められていたことがわかる。
私が考えるに、戦争に突き進んでいった背景、要因として、これまで言われていたものは、程度、比重の差はあれ間違ってはいないのだろうが、なぜもっと早く終えられなかったかといえば、情報収集能力・分析能力の貧弱さ、その結果として政治家と軍人の未熟が考えられる。特に海外の事例を眺めても、無茶な戦争の開始・続行を抑えるのはむしろ優れた軍人なのだが。
また一つ加えれば、日本は古来本土四島が侵略されたのは蒙古に九州沿岸を少しやられたくらいで、それがいざ攻め込まれたときにどうするか、どう交渉するかがわからない、国民レベルでもコンセンサスなど得られないのではないだろうか。実はそれは米国もそうで、だから真珠湾は占領されはしなくても衝撃だったのだろうが、本土については未だ未経験である。したがって、今後危なっかしいことがないとは言えないと考えている。
「NHKさかのぼり日本史 ②昭和 とめられなかった戦争」2011年7月 NHK出版の文庫化
太平洋戦争終結翌年生まれの私が、これまでこの戦争についていろんな角度の論考を見てきて一番に思うのは、なぜ1944年のサイパン陥落の前後、できればその前に、戦争を終えられなかったのか、ということである。
もちろん戦争にならなければよかったのだが、それはそうだとしても、あの状況で早くとめることが全く不可能だったは思えない。もしとめられていれば、あの本土大空襲、沖縄、広島、長崎はなかったわけだ。
さかのぼりだからか、著述はこのサイパンから始まっている。その前の戦況展開についても明解である。そして日米開戦、日中、満蒙とさかのぼる。だからといって、これがなければ後の事態はないということではない。条件、要因はいろいろあっても、だからといってその後必然的にそうなるものではないという前提で書かれている。その一つ一つの判断について、的確な評価がなされている。そうでなければ、明治以来の日本のありかたが、、、という無責任な議論があいかわらず続いてしまっただろう。
著者のまとまった本は読んでいないが、新聞、TVなどのメディアで、最新の資料を駆使した冷静な論考は注目していた。いまだイデオロギッシュな面が中心となった議論がかなり残っている中で、右寄りといわれることすらあるが、それはナンセンスである。とにかくあの戦争に入っていった、その日本の体制、教育、空気といったものが主体の議論、そして絶対に戦争に入ってはならないということがベースの考え方が今後も続くようだと、それは少しでも戦争状態にならなければよいが、人類の何千年を眺めても、確率100%ではない以上、おこる可能性はあって、そうなったとき特に侵略されたとき過激な平和主義者はおそらく正反対に好戦的になるか、玉砕主義になるのではないか、と考えている。戦争状態でいかに冷静にことを進めるかを考えたことがないから。
この本では、特にあの真珠湾は米国がわざと呼び込んだわなという説が昔からある以上に、中国政策、対ソ連戦略から、米国の周到な日本包囲政策が進められていたことがわかる。
私が考えるに、戦争に突き進んでいった背景、要因として、これまで言われていたものは、程度、比重の差はあれ間違ってはいないのだろうが、なぜもっと早く終えられなかったかといえば、情報収集能力・分析能力の貧弱さ、その結果として政治家と軍人の未熟が考えられる。特に海外の事例を眺めても、無茶な戦争の開始・続行を抑えるのはむしろ優れた軍人なのだが。
また一つ加えれば、日本は古来本土四島が侵略されたのは蒙古に九州沿岸を少しやられたくらいで、それがいざ攻め込まれたときにどうするか、どう交渉するかがわからない、国民レベルでもコンセンサスなど得られないのではないだろうか。実はそれは米国もそうで、だから真珠湾は占領されはしなくても衝撃だったのだろうが、本土については未だ未経験である。したがって、今後危なっかしいことがないとは言えないと考えている。