メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

マルセル (高樹のぶ子)

2012-04-29 19:07:49 | 本と雑誌

マルセル (高樹のぶ子) (2012年3月 毎日新聞社)

 

1968年、京都国立近代美術館で開催されていた「ロートレック展」で、フランスのアルビ美術館から借りていた「マルセル」が盗まれ、犯人はわからないまま時効成立後に返ってきた。この事件を題材に、その事件を追った新聞記者の遺児でやはり新聞記者の女性が、父の死後、その謎を追いかけるとともに、彼女も独り立ちしていくというストーリーである。

 

「マルセル」はその後また日本に来たらしいし、写真には見覚えがあって、どこかで見ているはずだが、はっきりしない。

 

現代になっての展開は作者のイマジネーションによるものだろうが、意外性も十分あって面白いことは面白い。それに、コピーとは、傑作は誰のもの?ということを考えさせるところもある。

 

ただ主人公の女性の自立への道筋、その中での葛藤などの描き方は、好みはあるにしてもちょっと甘いかなと思う。作者は私と同世代だが、これがもっと若い世代、たとえば角田光代あたりだと、もっといろんな心理の層を見せるかたちになったのではないか。

 

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