期日前に不渡りの事を社員に打ち明けたことで
それが外部に出てしまい
大変なことになってしまった。
それは私という人間が大アマであったという事が原因であった事を
その2で書いた
その時点で不渡りの対外的な対策は事前に法律事務所に相談にしており
外部からの問い合わせや苦情には弁護士に一任しているという事で乗り越えた
それからは弁護士の指示通りに動き出していった。
そんな状態で一回目の不渡りを迎えた
当然当日は電話の問い合わせで事務所は混乱していた。
状況を心配をして会社まで訪問してくれる人も大勢いたが
私は精神的に不安定になっていて
応接した他人(ひと)の話を聞いてもボーっとしているだけで
話の内容など頭に入ってこない状態であった。
当時の事を家族に後で言われたが目の色が普通でなく虚ろであったそうだ。
本人の私は全く覚えていない。
意味は少し違いますが。w
今でも思いだされることだが
当時は他人に励まされたり
関わりを求められたりすることが本当に苦痛であった。
なのでその後は1年間家へ引きこもりの状態になっている。
そういう点で叔父が自宅に訪ねてくれて生活も大変だろうからと
言葉少なに10万円を玄関先で渡してくれた事があったが
私を落ち着かせてくれたその訪問が一番に心を和ませてくれた。
この恩は何時かは返さなくてはと当時思ったことを今でも思い出す。
と同時にもし身内が同じような状況になったら、
叔父と同じことをして慰めようと決めている。
一回目の手形不渡りのあと色々な人物が私に接触してきていた。
そんな中で詐欺まがいの話が舞い込んできた。
不渡りを出した後にある取引先の社長から
大きな会社のAさんという社長がわが社を助けたいと言っている
会ってみたらどうだという話がきた。
倒産は覚悟していたとはいえまだ会社継続に未練は有った
それと同時に精神的に冷静な判断が出来ない状態の自分も居た。
今ならばいくら言葉巧みな上手い話しでも見ず知らずの社長が
我社を助けてくれるという話などすぐにおかしいと判断できるだろう。
しかし当時の私はそんな話にでも飛びついてしまうような状態であったので
よく考えもせず面談を了承してしまった。
そして約束の日先方へ出かけるわけだが。
いつもなら一人で出かけていく私だがなぜかその時は
役員のYにも同行してもらっている。
このあと私はそのA社長の詐欺話にのってしまう
しかしその時にYは私の結論を正しい方向へ変えさせくれた。
ここでYを同行させるという行動はのちの結果を見れば明らかだが大正解となる
役員のYはAの詐欺話から私を目覚めさせてくれたからだ。
私はそこまでの期待をYに抱いて同行してもらったわけでは無かったので、
運があったとしか考えられない。
生まれたときに持っている運の数は誰もみな同じだ
だから日ごろからから無駄遣いしないで
人生を変えるようなこのような場面で
運が出てくるようにしておく事が大切だなと
当時のこの事件を思い出しては今も思っている。
当日
雪が降る中会社を午後に出発
先方には陽が暮れてから到着したような記憶が残っている。
私たちは先方の社長を待っていた、社長Aは
高級外車で乗り付けて秘書を連れて降りてきた。
外見は穏やかそうでソフトだ、話がしやすいお金持ちに見えた。
早速そのAと面談に入った。
すでにその時点で藁をもすがる状態の私はAの物腰と雰囲気に呑まれ
Aの話に嵌っていく状態になっていた。
Aは会社を助けるためには会社にどのくらいの現金が残っているのかをまず知りたいと
言葉巧みに私から聞きだしにかかった。
当時会社にどの位現金が有ったのか思い出せないので
今ここで具体的には書けない。
しかし12月の役員会の前に妻の母親にお願いをして
2000万円の現金を借りていたことは覚えている。
という事で2000万円が有ることはAに話した。
そうするとAは会社を立ち直らせるためには
債権者を一同に集め
Aが債権者の前でその2000万円を見せて
Aが「わが社の債務保証をして会社を立ち直らせる」と
債権者を説得するとのプランを示してきた。
藁をもすがる思いの私の足元を見すかして言葉巧みにそんな話を持ち掛けてきたのだ。
それと同時にその為には翌日直ぐにAの会社に
私の2000万円を振り込むように私を仕向けてきた。
Aが言うにはその金を債権者が一同に集まる席に
Aが持って行き見せ金として使い債権者を説得するというのだ。
その話にのめり込んだ私はA社長のおかげで会社は助かりそうだと思い込んだ。
私は納得して一つ返事でその話を承諾していた。
そこには長時間の話し合いで会社の再建は上手くいくと思い込まされ
安堵している自分がいた。
話が終わったのは夜10時を回っていたと思うが
夜食をどこで食べたのかの記憶もない。
A社長と別れほっとした思いを乗せて中央高速道に乗り
私は役員のYと一緒に帰途に就いた。
道すがらYは「社長今回の話はうますぎるのでおかしい」といいだした。
私はAのおかげで助かると思っていたところなので激しく反論をした
幸いなことに会社へ到着するまでには1時間以上かかったので
車の中で充分互いの考えを説明し合うことが事が出来た
私のバイアスは徐々に溶けて冷静な判断ができるようになっていった。
最後には二人で今回の話はおかしいという結論にたどり着けた。
不思議なものでそうなると一気に夢から覚めた状態になった。
今でもその「本当に良かった!だまされるところだった」と
感じた感覚は私の心のなかでモニュメントになっている。
役員であり同級生でもあったYには大いに感謝だ
あの状態で2000万円もの現金を振り込んでいたなら
だまし取られていたに違いない。
そうなれば現在の私は無かったのは間違いのない処だ
借りたお金をだまし取られ、挙句の倒産では
私は生きていけなかったと今でも確信している。
役員のYもTも私を会社の倒産という困難を
その後乗り越えるこえさせてくれる力をくれた命の恩人である。
翌日Aより 何回も2000万円振り込みの催促の電話を受けたがきっぱり断った。
30年近くたった今でもその記憶は鮮明にある。