“……甘い…”
“……甘すぎる…”
制作発表での二人は寄り添うように座り
お互い見つめあったまま会話をしている。
「……。」
「……。」
「……。」
その甘い雰囲気の二人の中にメンバーはおろか
司会者も入る事が出来ずただただ見守る。
いつもの事と言えばいつもの事だけど。
翔さんのリーダーに向けられる視線はまっすぐで
とても優しく、そしてとてもとても甘い。
昔から翔さんは大野さんの描く絵が好きだった。
グループ結成前から大野さんが絵を描いていると
じっと隣に座って見ていた。
“それにしても……”
翔さんのリーダーに向けられる視線は甘すぎる。
これが本当に生中継で全国に流れてしまっても
大丈夫なのかと思わず心配になってしまうほど。
“……そう言えば去年のチャリT発表の時も激甘な雰囲気だったっけ”
翔さんとリーダーがお互い見つめあいながら時折
笑っている姿を見ながらふと去年の制作発表を思い出す。
まぁ相変わらず二人で幸せそうだし、いいかって思った。
「んふふっ。翔く~ん」
家に帰ってやるべき事をやりパソコンを操作していると、
雑誌を読むのに飽きたのか智くんはそう言って
自分とパソコンののってるリビングテーブルの間に入ってきた。
そして膝の上に跨るようにして向かい合わせの形で座る。
“嬉しいんだけどね。もしかして酔ってる?”
「どうしたの?」
リビングテーブルを前側にずらし
ご機嫌で座っている智くんに話しかける。
「だって、終わったじゃん」
……相変わらず主語がないし。
「……? ちゃりTの事? 制作発表の事?」
今日5人で制作発表をした事を思い出す。
「まぁ、それもそうだけど。翔くんのが、さ」
そう言って、んふふっと笑った。
“可愛いんだけど意味が分からないよー”
「んふふっ。家族げーむ」
そうか。撮影はとうに終わってたけど、それからなんやかんやと
お互い忙しくてゆっくり二人で過ごせていなかった。
「んふふっ。翔くん、お疲れ」
そう嬉しそうに言うと膝の上に跨ったまま
首に腕を回し頬にちゅっとキスをする。
“もう、可愛すぎだから”
アルコールがいつもより入っているせいか頬が紅潮し
潤んでいる瞳のせいで可愛らしさが半端ない。
「ありがと」
そう言うと智くんは跨ったままの状態で
今度はぎゅっと抱きついてきた。
ドラマが終わった。
いつもさりげなく気を遣ってくれる智くんだけど
撮影中は特に気を遣ってくれる。
智くんは智くんで色々と大変だったはずなのにそれを一切出さない。
たくさん我慢もさせてしまっただろうとも思う。
その綺麗な顔を見つめながら額にちゅっとキスをした。
「新しい番組も始まってたから……」
智くんは少し考えるような表情をするとそう小さく呟いた。
誰よりも身体の事を心配をする智くんだから
ずっと体調を心配していたのだろう。
「おれは、大丈夫だよ。お陰様でドラマは無事終了したし」
そう言ってその華奢な身体に腕を回し抱きしめた。
しばらくそのままの状態で過ごす。
しばらくそのままでいたが時間もかなり遅いせいか
智くんは大きな欠伸をした。
制作発表の後久々にメンバーと飲んでアルコールがいつもよりまわったせいか
ドラマが無事終わったことを聞いて安堵したのかうとうとし始める。
「……そろそろ寝よっか?」
「……うん」
そう言うと智くんは小さく頷いた。
そしておもむろに両手を差し出す。
「……?」
“もしかして運んでくれって事?”
「抱っこして運ぶ?」
「うん」
……即答だし。
笑ってしまいそうになるのを必死に堪えながら
そのままゆっくりと身体をずらすと
その身体を抱え上げお姫様抱っこをした。
“終わったとたん、こうして甘えてくるのが可愛いんだけどね”
そう思いながらそのままベッドルームに運びその身体を優しく横たえた。
そしてそのまま一緒にベッドに入ると
智くんは胸に顔をうずめるように抱きついてきた。
その顔を包み込むようようにして両手で顔を上に向かせる。
「ありがとね、智くん」
そう言うと何が?って顔をして不思議そうな顔で見つめる。
「いや……何でもない」
いつもその存在に助けられている。
本人はきっと分かっていないだろうけど。
でもそれを口に出したところでなんら意味がないように思えた。
「智くん、好きだよ。愛してる」
その綺麗な顔を見つめたままそうつぶやくと智くんは小さく頷く。
そしてゆっくりと顔を近づけると唇に唇を重ね深いキスをした。