「え~!」
二人で久しぶりに過ごす時間。
シャワーを浴び、飲み物やつまみを準備していたら
智くんが急にびっくりしたような声を出した。
「ん? なになに?」
何だろ? と思いながらリビングに戻り
智くんの座っているソファの隣に座る。
そして智くんが見ているTV画面を見た。
「あ~これ」
そう言えば、こないだ会った時に出たって言ってたっけ。
それに智くんがコメントを出したって聞いていたから
ずっと見たいと思っていたんだよね~。
「何かね、松潤、リーダーになりたがっているんだって」
そんな事を思っていたらなぜか隣で妙に興奮している智くんがいた。
珍しく興奮してるね~。
まぁ、そんな智くんもかわいくていいんだけどね。
そう思いながら可愛らしく興奮している智くんを見つめる。
“松潤がリーダーになりたがっている?”
そんな事言った事あったっけ。
いや言っていなかっただけで実はって事なんだろうか?
「何だよなぁ~そうと分かっていたら譲ってたのに~」
「えぇ?」
そんな事を考えていたら智くんが譲るとか言い出していた。
慌てて、ちょっとごめんねと言って画面を巻き戻し確認すると
確かにそうは言われているけど
松潤自身が一番意外って顔していた。
「んふふっ。それとも、明日からリーダー交代しちゃう?」
「いやいやいや」
智くんは可愛らしく妄想を膨らませていて交代しちゃう?
なんて嬉しそうに言っている。
本人はどう思っているのか分からないけど
そこで言われている通り嵐のリーダーは智くんで
本当に良かったと思っているし智くん以外では考えられない。
自分自身もそうだし松潤もそうだけど
もしリーダーが智くんじゃなかったらワンマンになってしまって
今みたいな和やかな雰囲気のグループには決してならなかっただろう。
確かに最初の頃はリーダーぽく指示されるという事は
なかったけど(今も本人がそういうのを好まないからそれはないけども)
最初から誰よりも陰で努力する人で、歌もダンスもその才能は群を抜いていた。
でもそれだけの才能がある人なのにそれを一切鼻にかける事もなく
しかもこういう場でこういう事を言えてしまうような
懐の深さを持ち併せた人でもある。
“本当にこの人は新しいリーダー像を確立してしまっているな”
「なんか度々俺の名前が出てきて複雑な気分なんですけど」
そんな事を考えていたらDVDを見ていた
智くんが複雑そうな顔をしてそうつぶやいた。
「いやぁ、同じグループとして全然名前が出てこない
俺らもそれはそれで複雑だよ。
しかも俺なんてこないだゲストに出たのにさ」
そう言うと、智くんはそれもそうだねと言って
お互い顔を見合わせ笑った。
そう言えば自分が前回出た時は理想の女性について話たんだっけ。
でも、放送後そんな女性はありえないだの
いるはずはないだのって書かれていたのを
どこかでちらっと見た気がする。
人を立てることができる
人に流されない
家族思い
損得勘定で行動しない
裏表がなく嘘をつかない
同性から信頼される
ってそんなにありえない内容だろうか。
現に智くんはすべてに当てはまっている。
そう言えば今回のコメントでもちゃんと智くんらしい
松潤を立てるコメントを出していた。
という事は智くんがやっぱり理想の人って事なんだろうか。
なんて事を考えていたらすでに松潤のコーナーは終わっていて
智くんが不思議そうな顔をしてみつめていた。
「何、ニヤニヤしてたの?」
「……え? 俺ニヤニヤしてた?」
「うん、ニヤニヤしてた。何考えてたの?」
智くんは話すまでは許してくれないって顔。
「いや、前回ね、俺がこれ出た時に理想の女性を挙げていったんだけど さ」
「……うん?」
まっすぐな視線で見つめるから恥ずかしくなってきて
ついしどろもどろになってしまう。
「それがさ、智くんにすべて当てはまるなって 思って」
「……俺、女性じゃないけど」
仕方なく話すと智くんは複雑そうな表情を浮かべ
戸惑いながらそう言った。
「うん、それはもちろん分かってる。番組上って事ね」
「……」
智くんは嵐のリーダーとしても最高の人で
自分にとっても理想の人という事になるのだろうか。
その言葉に智くんは意味が分からないって顔をしている。
「智くん、好きだよ」
「……」
複雑そうな表情を浮かべている智くんに
顔を近づけていって頬にちゅっとキスをする。
智くんは無言のまままっすぐな視線で見つめる。
こんなにずっと一緒にいても
ずっとずっと大好きで
そして理想の人。
きっと本人は気づいていないだろうけど、ね。
「愛してる」
「……うん」
何度も伝えているけどやっぱり伝えたくて
その言葉を口にする。
そして何度も言っている言葉なのに智くんは
いつもその言葉に照れくさそうな表情を浮かべる。
そしてうん、とだけ言って頬を赤く染める。
こんなに理想そのものの人と一緒にいたら
他の人なんて全然目に入らないのは仕方のない事だよね。
そう思いながら顔を近づけていき唇に唇を重ねる。
そしてそのまま深いキスをした。