yama room

山コンビ大好き。

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きらり

山 短編8 その後 

2014-09-01 18:23:32 | 短編



9月に


なってしまいました。




何度か見に来てくださった方


本当にすみません。















山 短編8  その後













「大野さん、ここのさ…」

「……」

「大野さんってば」

「……」


……寝ちゃってるし。


さっきまでソファの上で寝そべって
スマホを見ていたかと思っていたら
今はもうすうすうと静かな寝息を立て眠っている。


気持ちよさそうに眠っているなぁ。


そんな事を思いながらその綺麗な顔を見つめた。







兄とシェアハウスをしている大野さんは
とても綺麗な顔をしている。
初めて見たときは息をするのも忘れ
その姿に見入ってしまった。


だからいつもその姿がみたくて
兄に嫌がられながらも部活や塾がない日や
次の日が休みの日とか遊びに来ている。


大野さんはいつ行っても嫌な顔一つせず
あたたかく迎入れてくれる。
大野さんは、大人で綺麗で優しくて大好き。






でも





目の前のソファの上で眠っている


大野さんは


両方の手のひらを合わせるように重ねて
頬の下に置き枕みたいにして眠っている。
その姿は何だかあどけなくて子供みたい。


可愛すぎだろ。
って5歳も上の人なのに、なぜかそう思ってしまう。
普段の大野さんは綺麗で大人っぽくて
静かに笑ってるイメージなのに
目の前にいる大野さんはまるで無邪気な子供みたい。


男の人って普通こんな寝方するっけ?
イヤ、女の人でもしないんじゃ?


年上の男の人にこんなことを思うなんて
変かもしれないけど、やっぱり可愛いと思ってしまう。
そんな事を思いながらその姿を見つめていたら
がちゃっと玄関の方から音がした。
どうやら兄が帰ってきたらしい。


「ただいま~。ってお前また来てんのかよ?」

「いいでしょ。大野さんがいつでもおいでって言ってくれたもん」

「え~?」


兄は、やっぱり少し迷惑そうな顔をしてそう言った。
血のつながった兄弟なのにヒドイ。


「それに兄ちゃんに勉強教えてもらいに行くっていうと
お母さんも喜んで送り出してくれるよ?」

「勉強なんて教えた記憶ございませんが?」

「大野さんに教えてもらってるんだも~ん」


お母さんには本当は、邪魔になるからほどほどに
しなさいって言われているんだけど。
でも勉強を教えてもらいにって言ったらそれなら仕方ないわねって
渋々承知してくれている。


「って、何だか静かだと思ったらまた眠っちゃってるのか~」

「うん、気付いたら寝てた」

「ふふっホント眠り姫だな」

「……」


そう言って兄ちゃんは可笑しそうに笑って言ってたけど
眠り姫って。
姫って。
それって男の人に使うにはちょっとおかしくない?


最初はそう思ったのだけど何だか綺麗な顔で眠る大野さんを見てたら
眠り姫という言葉がぴったりな気がした。


そんな事を思っていたら兄ちゃんは慣れた手つきで
掛物をとってくると優しくその身体に掛けた。
そして兄ちゃんの顔を見ると兄ちゃんはとても
愛おしそうな顔で大野さんの顔を見つめていた。


なんだかそれを見て胸がドキドキした。


最初に二人に会った時に感じた空気。


大野さんは眠っていて兄ちゃんが掛物をかけ大野さんを見つめる。
それだけなのにそこだけ空気が違って見える。
そこだけ優しい空気になる。


そこには二人を包む見えない膜が見える。
それをドキドキしながら見つめた。








「ん?」


兄ちゃんが視線を感じたのか、なあにって顔で
不思議そうに見つめてきたから、なんでもないって言って
思わず俯いた。


兄ちゃんは何だよって言ってクスッと笑った。
その時多分自分の顔は真っ赤になってたと思う。


なんだか妙に照れくさくなってそのまま勉強するふりをして
シャープペンを持ちノートを見つめた。
勉強をしてると思ったのかそれっきり兄は何も言わなかった。


少したつと大野さんが目を覚ましたみたいで
掛物をつかみながら、あれっ? なんて言っている。
寝起きの大野さんは、やっぱりいつもの大人っぽい大野さんとは違って
子供っぽくて可愛らしい。


その姿を見つめていたら大野さんが
つい寝ちゃったって照れくさそうに笑った。
やっぱりかわいい。


そして掛物をどかすと身体が熱かったのか
腕をまくるようにして片方の手で片方の服の袖をグイって
交互に上にあげた。


そこから見えた腕が
その上げる仕草が
綺麗でついじっと見つめた。







そしてトイレにでも行ってたのか部屋に戻ってきた
兄ちゃんに大野さんが気づくと、帰ってたんだ
って嬉しそうに言って笑った。


その顔がなんていうか
ぱあぁ~って感じで花が開いたようにすごく明るい
表情をしたからこんな表情を
大野さんにさせる兄になんだか少し妬けた。


「智くん、起きたの?」


そう聞いている兄の顔を見るとこっちの顔もまた凄く嬉しそう。
まぁ、この家に来た時からわかっていたことだけど
この二人には特別な何かがあるらしい。








「大野さん、スキ」


兄がキッチンで飲み物の準備をしている。
大野さんはぼーっとソファから降りて
自分と同じようにテーブルの前に地べたに座っている。
その大野さんに小声でそう囁いた。


「え?」


大野さんは、え?って言って、びっくりした顔で見つめてくる。


「なーんちゃって」


余りにもびっくりした顔をしたからそう言って笑いかけると
大野さんは、なーんだびっくりしたあって言って
んふふっと笑った。


その顔がやっぱり綺麗で、ついじっと見つめながら
えへへって笑ったら大野さんもまた、んふふって
その綺麗な顔で笑った。




でも


心の中で


ホントは本気だけどねって、つぶやいた。




でもそれを言ったら大野さんを困らしてしまいそうだし
もうここには来れないような気がして
シェアハウスの相手の弟のままでいることにした。


「ね、これからも遊び来ていい?」

「んふふっ。ここは翔くんのおウチのものなんだから、いつでも遠慮せずおいでよ」


そう聞くと大野さんは優しくそう言ってくれる。



「やったー」

「いやもう、十分来すぎだから」


いつの間にかコップを持って来た兄が
そう言いながら、はいこれって大野さんに
コップを手渡しながらそう言ってくる。


「俺のは?」

「ご自分でどうぞ」


2つだけ? と思いながらそう聞くと
兄はあっさりとそう答える。


「ひでぇ、俺お客様なのに」

「何、自分でお客様とか言ってんだよ」

「ちぇ~っ弟は辛いよなぁ」


兄ちゃんと大野さんは二人顔を見合わせながらクスクス笑っている。
もういいや。
多分この中には誰も入っていけない。




だけど


まだ大野さんのこと


諦めきれていないから


これからもちょっとだけ邪魔させて。


そんな事を思いながら


兄にそう文句を言って


キッチンに向かった。






















「そろそろ寝よっか?」

「それなんだけどさ」

「へ?」


いつものようにそう言って部屋に行こうとすると
思いがけずそう言われ間抜けな返事をしてしまう。


「今日から自分の部屋で寝るよ」

「ええ~っ何で?」

「え、いや……」

余りにも大きな声を出したせいか智くんはびっくりした顔になって
しどろもどろに答える。


「俺、蹴っちゃった? それともいびき? それとも歯軋りが煩かった?」

「ふふっそんなんじゃないよ」


余りにも必死だったからか智くんがクスクス笑いながら
そんなんじゃないよって言った。


「何で~? 何でも直すから言って」

「いや、翔くんのせいじゃないよ」

「じゃあ何で?」


自分でもおかしいけど、何だか泣いてしまいそう。


「そんな顔されると…。いやだいぶ自分自身が落ち着いてきたからさ
そろそろ一人で寝ようかと思って。
これ以上翔くんに迷惑かけれないしさ」

「迷惑だなんて、とんでもないよ」

「そうなの?」


智くんは意外そうな顔をする。
そんな意外なことかな?


「そう。っていうかぜひ一緒に寝ていただきたい」

「そうなんだ? ずっと煩わしいだろうなぁって思ってたからさ」


余りにも必死になってたせいか智くんが
おかしそうに笑っている。


「そんな事ないよ。それに……」

「……?」

「ずっと隣で眠っていて欲しいし、これからもずっと俺とこの家で暮らして欲しい」

「……」

「何か、俺、変なこと言ってるな。プロポーズみたいなこと言ってるし。恥ずかしい」

「んふふっありがと。翔くん」


なんか突然そんな事言われて変なこと口走っちゃったかも。
そう思いながら自分でも顔が真っ赤になっているのがわかった。


「何か翔くん迷ってたから。ま、当たり前かもしんないけど」

「……え? そんな事ないよ。智くんのこと好きだし」


そう言えば前にもそんな風に言われたことがあった。
意外と人の感情に敏感だから気づいていたのかもしれない。



「そう言えば好きって言えば、修也くんに今日スキって言われた」

「ハァア?」

「まぁ冗談だったと思うけど。なーんちゃってって言ってたし」

いや、あいつは結構本気だ。
やっぱここにこさせるのは危険だ。阻止しなければ。


「翔くん、難しい顔してる」

「ごめんごめん何でもない」


そんな事を思っていたら智くんに難しい顔をしていると言われてしまった。


「色々考えさせてしまってごめん」

「ううん」


確かに少し戸惑いと躊躇いがあった。


「智くん、好きだよ」

「うん」

そう言って智くんの手にちゅっとキスをする。
智くんは頬を少し赤く染め頷く。


「お願いだから一緒に寝ないなんて言わないで」

「……わかった」

「じゃ、いこっか」


智くんに手を差し出すと
智くんもおずおずと手を差し出す。


その智くんの手を繋ぎそのまま引っ張って2階に行く。
そして部屋に入ってベッドに入る。
どうぞっと空間を開け布団を開けると
智くんが入ってくる。
お互い目が合うとふふって笑う。


「好きだよ」


そう言うと、智くんはうんって言って照れくさそうに笑う。
顔を近づけていってちゅっとキスをすると
少し目を伏せ気味にする。
そのまぶたにもちゅっとキスをした。


「あ~あ、やっぱ智くんのこと好きすぎて困る」


そう言うと智くんはくすくすと笑う。
そして俺もだよって言ってまっすぐな目で見つめる。


でも知らないでしょ?


智くんがいないと眠れなくなってしまったのは
自分の方だ。


朝起きて智くんのその綺麗な顔を見つめる。
一緒に朝ごはんの準備をして
朝ごはんを一緒に食べて
一緒に片付けして
そして大学に行って
終わったら早々に家に帰ってくる。


家に帰ってきたらまず智くんの姿を探して
(まあたいていはソファにいるけど)
夕御飯の準備を一緒にして
一緒に食べて
そして片付けを一緒に簡単にする。


それからリビングでお互い好きなことをして
眠くなったら一緒に部屋に行って
同じベッドに一緒に入って
智くんの寝息を聞きながら眠る。


夜中にふと目が覚めると横には智くんがいて
すうすうと静かな寝息を立てている。
それを聞きながら深い眠りに落ちていく。


そう。


一緒に寝てて欲しいのは自分の方だ。
そしてここでずっとずっと一緒に暮らしてて欲しいと
願っているのは自分の方だ。




そんな事を思いながら
ゆっくりと上半身を起こす。
智くんを上から見つめる。
智くんもまっすぐな目で見つめてくる。


「好きだ」


智くんが優しく微笑み腕を伸ばしてくる。
首に手を回し引き寄せられる。


もう顔と顔がくっつきそうだ。
智くんが、んっと顔を上げちゅっとキスをしてきた。
それを合図に角度をかえ何度も触れるだけのキスをする。


そして至近距離でお互いジッと見つめる。
智くんが見つめたまま誘うように少し開いた。
そのまま唇を近づける。


唇と唇が重なる。
回していた智くんの腕にギュッと力が込められる。







そう


智くんと一緒に眠りたいのは自分の方だ。


智くんの顔を見ながら眠りたい。


智くんの寝息を感じながら深い眠りに落ちたい。


智くんの空気を感じながら


このままずっと





一緒に生きていきたい。








そんな事を思いながら深く深く







キスをした。