“俺にしとけばいいのに”
その人に出会ってから
いつも
そう思ってる。
そう思ってるけど
でも
言わない。
今日もその人は
彼女に振られたと言って
机にうっつ伏して落ち込んでいる。
“俺にしとけばいいのに”
その落ち込んでいる姿を見て
やっぱりそう思った。
けど、言わない。
その人は入学した時から綺麗な顔立ちを
しているせいかよく告白される人だった。
そして、何を考えているのか
それとも、何も考えていないのか
告白されると大抵そのまま付き合う。
そんな人だった。
「ね、好みとか無いわけ?」
「んふふっ、あるよ。性格が良くてかわいいコ」
昼休み。
そうずっと前から思っていたことを聞くと
智はそう言って、んふふって笑う。
「……」
でもそんなのウソだ。
確かに付き合った子は性格はわからないけど
可愛らしい子が多かったように思う。
でも、どうみても好みとか関係なく
告白されたから付き合っているとしか思えなかった。
「で、何ですって?」
「俺といても、つまんないんだって」
一緒にご飯を食べていたニノがなぜかやけに
嬉しそうな顔をしながら智に聞いている。
そして智の方はというと、がっくりって感じで答えている。
「またですか?」
「俺だってこれでも合わせてんだよ~」
にのは相変わらず楽しそうで
嬉しそうにそう言うと、クスクスと笑った。
智は何でなんだよなぁ~って感じで頬を膨らませている。
「ちょっとは、でしょう?」
「まぁ、ちょっとかも知れないけどさ」
「でしょうね。多分全然足りてないんですよ」
「にの~ヒドイ~」
にのはやっぱり何だかすごく楽しそうだ。
そして落ち込んでいる智は、何だかかわいい。
「本当のことを言っただけです」
「もっとオブラートに包んでいってよ。傷ついているんだから」
「いや、本当のことですから。オブラートになんて包めません」
「にの、ヒドイ~。ねぇ、翔くん?」
「へ?」
何だかふたりの会話はまるでコントみたいだなぁ。
そんな事を思いながらふたりを見ていたら
突然そう智から同意を求められたので
思わず間抜けな返事をしてしまう。
そして智の顔を見ると
いつもウルウルしている瞳が一層ウルウル潤んでいて
それがまた智の美しさを一層引き出していて
とても綺麗だった。
その顔を見つめながら
“俺にしとけばいいのに”
やっぱりそう思って
ぎゅってその華奢な身体を抱きしめたかったけど
そんな事出来る訳もなく
潤んだ瞳に引き寄せられるように
ただただ見つめた。
「翔く~ん」
「何っ?」
「あ、そんな冷たい返事」
突然話しかけられたのでちょっと言い方が
キツク感じられたのか智はそう言って、むうって頬を膨らませた。
こういうところも可愛いんだよなあ。
「ごめんごめん考え事してた。なあに?」
「今日一緒帰ろ~?」
「ん? いいけど」
そんなことを思いながらごめんって謝ると
さっきまでの顔はどこへやらって感じで
にっこりと笑顔になりそう言った。
やっぱこの可愛さにやられちゃうんだよな~
そう思いながらホントは彼女と約束してたけど
そっちはパスすることにした。
「翔くんは優しいよね~」
「そう? あんま言われねえけど」
「んふふっ、俺だけに」
「そんな事ねえよ」
「ふふっそりゃ、そうだ」
「……」
智はそう言ってまた可愛らしい顔で、んふふって笑う。
つい、そんなことねえよって言って思わず否定したけど
でもそんなの、ウソ。
悔しいけど本当はこの人の言う通り智が最優先。
何だって頼まれたら聞いてあげたくなる。
そして
この人も多分
その事に気づいている。
「今日、また違う子といましたね~?」
「マジで? また付き合ってんの?」
お昼休み。
この日も3人でご飯を食べてたらニノがそう言った。
3日前に振られたって落ち込んでたばっかじゃなかったっけ?
そう思いながら思わず智の顔を見る。
「まあね~」
「まぁ、でもまたあっという間に別れるんじゃないんですか?」
「頑張るもん」
「……」
そう言って智はやっぱり可愛らしく笑うと
頑張るもんって言った。
可愛すぎだから。
「ね、好きなの?」
「へ?」
「その、彼女のこと」
「うん」
「ウソ」
「ウソって何?」
でも何だかちょっとムカついてきてそう聞くと
智は不思議そうな顔をする。
そんな不思議なことかな。
あれから3日しか経ってないよ?
「だって、いつだって本気じゃねえじゃん?」
「本気じゃないって、何で翔くんにわかんの?」
「まあまあ」
智は珍しく顔を赤くしてムッとした顔でそう言った。
ちょっと険悪なムードになったのを察したのか
にのが、まあまあって言って慌てて止めに入る。
「……」
「……」
「ごめん」
「別にいいケド」
本当のことじゃんって思ってちょっとムカついたけど
仕方なくその場の空気を読んで謝った。
でも智は言葉と裏腹にそう言うとぷいって横を向いてしまって
そのままその日は一日口をきかなかった。
そして
それはその日だけで終わるものだと
そう思っていた。
「あれ? 最近一緒じゃないですね? やっぱあれが原因ですか?」
「そんなんじゃねえけど」
にのがそう言ってニコニコしながら話しかけてくる。
何だかやけに楽しそうなのがムカつくんですけど。
「ふふっじゃあ俺が大野さんの事もらっちゃおっかな~?」
「えっ?」
そんな事を思いながらムッとしてたら
にのは嬉しそうにそう言った。
「ふふっ俺は別に男とか女とか関係ない人なんですよね~」
「は?」
「ふふっ冗談ですよ。でもあれだけ可愛い顔してるんだから
そう思う人は結構いるんじゃないんですか?」
「……」
にのはそう言って、ふふって笑った。
それってどういう意味?
そうにのに聞きたかったけど
何だか聞けなかった。
もうあれから10日もたっている。
今までこんなに口をきかないで
過ごしたことなんてなかったから
何だかとても辛い。
でも智と話そうとしても
智に視線をそらされてしまうので手足がでない。
それがやっぱり辛い。
「翔く~ん」
「……」
もう、いよいよ智と話すこともできず
落ち込みすぎて立ち上がれない。
そう思った時、智の方から急に話しかけてきた。
どんな風に答えたらいいのか分からずその顔を見つめる。
「翔くん、ごめんね?」
「いや。俺も言いすぎた、ごめん」
「ううん、翔くんに言われたこと、図星だったんだ」
「……」
智はそう言って、んふふって笑う。
図星だったんだ。
「ごめんね、翔くん。でね、お願いがあるんだけどノート見せて」
「……いいケド」
「ありがと、翔くん」
「……」
って。
それってただ単にノート見たいだけじゃね?
そう言えばもうすぐ期末だし。
そう思ったけど智に避けられたままでいるのは辛い。
だから、いいよって言ったら智は嬉しそうに笑った。
その顔を見てやっぱり何も言えなくなってしまった。
そして、今。
智は家に来て一生懸命ノートを写している。
ってどんだけあるんだよ?
そう言えば入学してからずっと毎日の日課みたいな感じで
写してたのに、しばらく口をきいてなかったから
ノートもその分溜まってたのか。
「んふふっやっぱ、翔くんのノートが一番わかりやすいねぇ」
「……」
智は可愛らしい顔でそう言って、んふふって笑う。
可愛いんだけどね。
でも仲直りしたかったというより
ノートが目的だったのかと思うとちょっとムカつくんですけど。
「前、テレビでやってたけど頭のいい人のノートって違うんだって~」
「……」
そんなこちらの思いを知らない智は
無邪気な顔をしてそんな事を言ってくる。
「……どうしたの?」
「……」
どうしたの? って。
この男は。
智に避けられてどれだけ辛かったと思ってるのだろう?
っていうか智と出会ってからどれだけ悩んでると思ってるのだろう?
そんな事を思っていたら何だかムショーにイライラしてきた。
思わず智の肩を掴む。
智は何? って顔をして、どかそうと身をよじる。
それを力ずくでそのまま押し倒す。
そして上に跨り両手を頭の横で固定した。
「何、すんだよ」
「……」
そのまま両手をがっしりと固定し
上から智の顔を見つめる。
智は手首を固定された状態で逃れようと動いている。
その顔を見るとさっきまでの無邪気な表情はなくなり
みるみる不安そうな表情になってくる。
智の長い睫毛は震えていて
そして瞳はゆらゆらと揺れている。
「……」
「……」
そのまま無言で上から見つめていると
智も黙ったまま見つめ返してくる。
そして瞳は相変わらずゆらゆらと不安げに揺れている。
そのまま顔を近づけようとすると
智が顔を背けぎゅって目を閉じた。
「……」
「……」
「……ごめん」
「……」
その姿に、ふと我に返り慌てて智を掴んでた手を緩め
その身体から降りた。
「……」
「……」
「翔くんノート、ありがと。俺、帰る」
「……」
智は呆然としてたけど、すぐに起き上ってそう言うと
荷物をまとめ部屋を走って出て行った。
「……」
マズい。
これって凄くマズい状況じゃあ?
そう思った時には、時既に遅し。
明日、智に会うのも凄く気まずいし
それに智とまともに顔を合わせる自信もない。
「翔く~ん」
「……!」
「昨日はノートありがと」
「……うん」
「今度また見せてね~」
「……いいけど」
そんな事を思いながら、どんよりした気分で
学校に行ったら思いがけず智が声をかけてきた。
智は拍子抜けするくらい、いつもと変わらなくて
昨日あったことがまるで夢だったかのように
まるで何もなかったかのような顔をしている。
「っていうか、今日も行ってもいい?」
「……!」
「……ダメ?」
「いいケド」
しかも今日また来るって言った?
信じらんない。
あんな事をしたのに。
そして智の瞳はゆらゆらしていてあんな不安そうな顔をしてたくせに。
それなのにまた来ようだなんて一体何考えてんだろう。
そう思いながらいいけどって言ったら智は、やったーって言って
嬉しそうに笑った。
ホント信じらんない。
「やっと全部終わった~。やっぱ翔くんのノートは見やすいね~」
「……」
智は嬉しそうにそう言って片付けを始めた。
ホントに来てるし。
そう思いながらその片付けている姿を見つめた。
「……」
「……」
智が視線に気付いたのか片付けていた手を止め
何か言いたげな顔をして無言で見つめてくる。
「……」
「……何?」
「んふふっ今日も押し倒されんのかと思っちゃった~」
「……」
それ自分から言う?
自分から言っちゃう?
俺の過去から抹殺したいくらいの出来事を
智はあっさりと
すごくあっさりと言ってきた。
あんなに不安げな顔をしてたのに。
しかも今日もここに来るって事自体
ビックリなのに。
あれは、もしかして夢だったんだっけ? とか
あのことは智の記憶から綺麗さっぱりなくなっちゃってんのかな?
とかバカなこと思ったりしてたのに。
でも押し倒されたことがわかってるんだったら
なんで懲りもせずこの人は普通に何もなかった顔をして
家に来てんだろう?
もしかしたら智はそれを期待してきたんじゃないだろうか?
そんな馬鹿みたいなことまで考え
頭の中はもうぐちゃぐちゃのドロドロだ。
“俺にすればいいじゃん”
そう言って押し倒してキスでもすればよかった?
「なーんちゃって」
「……」
そんなことをぐるぐる考えていたら
智はそう言って無邪気に、んふふって笑った。
その表情からは智の真意は読み取れない。
“俺にすればいいじゃん”
なんて、やっぱり言えない。
だってその人は友達で
そして
綺麗で守ってあげたくなるような人だけど
可愛くて何でもしてあげたくなるような人だけど
だけど、男。
。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。
ここのブログに訪れてくださってありがとうございます。
私事ですが先日100万を超えました。
ランキングとかにも参加してないですし
リンクとかそういうのもないですし
ひっそりこっそり始めたブログだったので
ビックリなのですが、でもやっぱり嬉しいです。
記事数も昔のと合わせても120ちょっとなので
ひとつの話にどれだけの目が~って考えると
ちょっと恥ずかしかったりもしますが。
なにしろ話を書くのが初めてなので
誤字脱字や表現の仕方、構成などおかしな部分も
たくさんたくさんあります。
でもここに来て下さる方は本当に優しくて多々変だと思っていても
スルーしたり目を瞑っててくださっているんですよね。
しかもここのブログの読み方というか説明文もなく
リアル設定とノンリアル設定が混ざっていたりと
とてもとてもわかりづらいと思います。
また、途中のもありますし、突然おとぎ話とかも
入っていたりなんかもしています。
ホントよくぞここまでたどり着いてここまで読んで下さったなって。
感謝してます。
私はもともとファンブログ出身なので智さん、山贔屓で
お話というよりかはファンブログという感じが強いと思います。
しかも平和で優しい感じの話が好きなので話として考えると
つまらないかもしれません。
翔→智がほとんどですし。
でも山が大好きで、ひゃーってドキドキする感じの
話が書きたくって始めたこのブログに
毎日本当にたくさんの人が見に来て下さるようになって
そしてコメントを頂けるようになって今は夢みたいです。
多分私の描く二人やメンバーなどイメージするものと違うって
思われる事も多々あると思います。
これはもう本当にすみませんとしか言い様がないのですが。
でも何も言わず見守っててくださってありがとうございます。
毎回毎回いつもどこか不安に思いながら悩みつつ投稿しているので
毎日のアクセス数もそうですが何よりもコメントに安心し
続けることができたといっても過言ではありません。
本当にいつもありがとうございます。
更新があまりにもゆっくりで呆れられているかもしれませんが
それでも更新が待ち遠しいって思ってもらえるようなブログを目指します。
これからもどうぞよろしくお願いします。