yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

Love Situation 2 プラス

2017-01-31 18:24:30 | love situa...






松潤が優しい眼差しで大野を見つめる。
大野の華奢な肩を包み込むように優しく抱く。
大野と視線が合うと嬉しさを隠しきれないような顔で笑う。





ずっと面白がっているだけだと思っていた。
女の子たちがキャーキャー言って
黄色い歓声を上げて
頬を染め盛り上がって。


それを二人で見て楽しんでいるだけだと思っていた。



でも


違った。










放課後。


松潤が大野と一緒に帰ろうと廊下から教室を覗きこむ。
それに気づいた女の子達がキャーキャー言う。


くだらねえ。


確かにその整った顔立ちは目立つ。
女の子達がキャーキャー言うのもわかる。


でもそれだけじゃない。


大野といると相乗効果というのだろうか。
二人でいるととにかく目立つし人の目を引く。
それが分かっているはずなのに松潤はますます
大野と身体や顔がくっつきそうなほど近づけて
女子がキャーキャーと言うのを楽しんでいる。


バカじゃね?
くだらな過ぎる。


そう思いながらもついその二人の姿を見てしまう。
気にしてしまっている自分がいる。
そしてそんな自分が一番バカで、くだらないと思った。


松潤と大野が付き合っていたって自分には何ら関係のない事なのに。
いつまでもバカみたいにあの二人の事を気にして。
あの時見てしまった場面を思い出してカッと顔が熱くなって。
そんな自分が一番くだらなくてバカみたいで嫌だった。




だから。


そう思わせる二人に無性にムカついた。


何で自分がこんな思いをしなくてはいけないのか。
気にしたくもないのに視界に入ってくる二人。
自分ではどうにもならないこの感情。


その怒りの矛先は自然と視界に入る同じクラスの大野に向けられた。
大野が何をしたわけでもない。
いや、それどころかまともに話したことさえない。
でも同じクラスにいるだけでその姿を見るだけで
何だか無性にムカついて目が合うと睨みつけた。


そんな毎日。






それなのに。







「あの…」


休み時間ぼーっとしていたら突然大野から話かけられた。
今までロクに話をしたこともなかったのに。
目が合えば親の仇とばかりに睨みつけていたのに。
大野だって絶対それに気付いていたはずなのに。


それなのに何事もなかったかのような顔をして
話しかけてくるその姿にまたムカっとくる。


「ナニっ」


今まで話したこともないクラスメートが敵意むき出しで
目が合うとあからさまに睨んでくる相手に、普通、話しかけてくるか?
そう思うだけでイラっとして冷たく返事をした。


「あの、これ、櫻井のじゃないかと思って…」

「……あ」


イライラしているのが伝わったのか大野が遠慮がちにそう言った。


それは見覚えのあるパスケースだった。
それをなぜ大野が?


そんな疑問とともに、この時
初めて二人で交わした会話じゃないかとも思った。
同じクラスになったのも今回が初めてだったし
友達と一緒につるむメンバーも違う。


「下駄箱んところに落ちてたから」

「あっ」


大野が少し緊張した面持ちで差し出す。
多分下駄箱で靴を履き替えていたらスマホが鳴って
慌てて取り出そうとした時に落としたのだろう。


「はい」

「あ、悪ぃ」


どうぞとばかりに差し出された手は緊張しているのか
少し震えているようにも見えた。


そしてその顔の印象とはまた違う、
長くて細くて綺麗な指をした手を見つめながら
ひったくるようにして受け取った。


大野がその受け取り方に戸惑ってるのがわかる。
でもそれ以上何も言わなかった。
だから俺も何も言わなかった。


こんなに緊張する位嫌われているってわかってるのだから
誰かに頼んだり自分がいない時にそっと戻しておけばいいのに。
そう思うととてもお礼どころじゃなくて無性にムカついていた。
大野はそのまま走るようにじゃあと言っていってしまった。


せっかく拾って届けてくれたのに。
少しの罪悪感と、反対に、ムカつく心。







大野なんて一人じゃ地味で目立たないくせに。
松潤と一緒にいるから女の子たちにキャーキャー言われて。
それを面白がってますますくっついて。


思い出すとやっぱりまたムカついた。











二人のいた場所はちょうど中庭みたいになっている所で
そこには色とりどりの花や草や木がたくさん植えられていた。


校庭からもちょっとした死角になっているその場所は
草花もちょっとした人の高さくらいまであって
それにところどころ木々も植えられていたから
人の目がつきにくい感じになっていた。


あの日はたまたま二人が走ってくるのが見えたから
人がいるとわかったけど普段だったら
目を凝らさないと木々や草花に紛れて気付かない。








その場所を。


渡り廊下を歩くたびに


いつも、見ていた。


毎日、渡り廊下を歩くような用事がなくても


わざわざその渡り廊下を歩いて


その場所を、見ていた。





そして放課後になると、


あの日。


二人があの場所にいた時間に


用もないのに渡り廊下を歩いて




その場所を




見ていた。
















おまけ   しやがれ 1/28





“ああ、また、だ”





この人と一緒に過ごした人は年の差や年齢に関係なく


その人の事を好きになってしまうようだ。


そして、公共の電波を使って好きという気持ちを


なぜか伝えたくなってしまうものらしい。


今までどれほどそう言う場面を見、聞いてきたことか。






そう思いながら隣でのんびり酒を飲んでいるその人の顔を見つめた。
じっと見つめていたせいかその視線に気づいた智くんが、ん?と
不思議そうな顔をした。


「……イヤ」

「……?」


あんな風に好きだと言われて、なんでもない事のように
受け止めているけど、普通はましてや同性に好きだと言われるなんて
あんまりない事なんだけどね?


そう思いながら、いや、と誤魔化す。
でも、この人に関しては不思議と昔からそう言う事が
当たり前のようにある人だった。


「何でもないよ」

「変なの」


そう言うとその可愛らしい顔で変なのと言って、んふふっと笑った。








『大野さんとこんな一緒にいたら、ちょっとなんか
これからテレビ見る時違う感情になっちゃう』


『好きだなあって』




その正直で真っ直ぐな言葉。
それはきっとお世辞とかではなく本心からの言葉だったのだろう。


その少し躊躇いがちで照れくさそうにしながらも
真っ直ぐな視線で見つめる眼差しとその言葉。


自分もそうだからわかる。
そしてそう言う人をこれまで数えきれないほど見てきたからわかる。


「やっぱ智くんって不思議な人だね?」

「ん~?」


別に愛想がいい訳でも、話し上手なわけでも、お世辞がうまい訳でもない。
ましてや得意のダンスや歌で魅了した訳でもなく、
ただただ自然体で一緒にものつくりをしただけなのに
好きになってしまうという不思議な人。


そしてそれを伝えたくなってしまうんだよね。


まだ、21歳。


きっと勇気を振り絞って、
でもどうしても伝えたい言葉だったのだろう。


でも言われた本人自身がきっと一番わかってない。






7時間一緒にいただけで好きになってしまったというなら
もっと莫大な時間を一緒に過ごしている自分は
一体どうなってしまうというのだろう。
好きがあふれ出してどうにかなってしまいそうだ。


どれだけ一緒にいても足りない。
ずっと一緒にいたい。


「好きだよ」

「うん? 俺も好きだよ」


一緒にいるだけでどれだけの人を虜にしてしまっているのか
多分本人自身が一番わかってない。






だから。


平気で好きだよってなんて言えちゃうんだよね。


本当に小悪魔。


そう思いながらも


その魅力に堕ち、とりつかれてしまったら
もうこの手から
この身体から
その唇から


離れられない。







そう思いながら


その可愛らしい顔を見つめ


そして、好きだと言って



その唇にちゅっとキスをした。