「ちょっと二人、くっつきすぎ」
昼休み。
買い物組の二人で飲み物とパンを買って
教室に戻ると、そう言ってあなたは顔をしかめた。
「別にいいじゃないですか、何なら翔さんも繋ぎます?」
にのは特に気にする風でもなく平然としたまま
そう言って笑う。
「イヤ、いい」
そう言ってあなたはぶすっとした顔で
横を向いてしまった。
色々あって留年する事となってしまった自分に対して
最初に話しかけてくれたのはこの人、ニノだ。
にのは初めて出会った時からすごく人懐っこくって
不安と緊張を抱えていた自分に
凄く簡単に、そして気軽に話しかけてくれた。
そこから一気に仲良くなり、そのままにのの友達だった
翔くんや相葉ちゃんとも自然と仲良くなった。
にのは初めて会った頃からかなりのスキンシッパーで
肩に手を置いてきたり手を繋いできたり
時には抱きついてきたりもしてくる。
最初は凄くびっくりしたけど、それもすぐに慣れた。
“犬みたいだなぁ”
最初に出会った時から何の躊躇いもなく
好きだ好きだと言って手を繋いできたり身体をくっつけてきたり。
よしよしってすると全力でしっぽを振ってるように見える。
だからにのは友達っていうよりかはペットみたいに可愛い存在。
だけど翔くんにはそれが理解できないようで
手を繋いでいたりくっついていたりすると
気持ち悪ィとか言って、とたんに不機嫌になる。
そんな翔くんに、にのは全く気にもせず
面白がってますますくっついてきたりする。
でも気付くとそれはにのの時だけじゃなくって
他のクラスメートとちょっとしゃべっていても
相葉ちゃんとふざけてじゃれ合ったりしてもそんな感じで、
視線を感じて視線の先を見ると翔くんがムッとした顔で見ている。
“もしかして嫌われているのかな”
そんなこんなで自分達二人の間にはどこかぎくしゃくした空気が流れていた。
お互いそれが分かっていたから極力二人きりにならないように気を遣う。
それでも他のクラスメートと一緒の時や4人でワイワイ集まっていれば
楽しかったし仲良くやってたので全く問題はなかった。
ある日いつものように4人で翔くんの家に集まって
宿題を始めようとすると、にのと相葉ちゃんに呼び出しがかかった。
二人は部活に入ってはいないけど時々こうやって
助っ人として呼び出しがかかる。
「戻ってこれそうだったら戻ってくるから」
そう言って二人は申し訳なさそうに慌てて学校へと戻る。
「……」
「……」
思いがけず二人きりで残されてしまう。
お互い二人きりにならないように努力していたから
学校以外で二人きりになったのは
多分この時が初めてだったと思う。
シーンと静まりかえった部屋の中、時計の秒針の音だけが響く。
「多分この調子じゃ二人とも戻ってこれないと思うから、俺も帰るよ」
「……え? 何で?」
「何でって」
二人きりでいても気まずいだけなのに
なんでそんな事聞くのだろう。
そう思いながらその顔を見るとなぜか残念そうな顔をしている。
“何でそんな顔するんだろ?”
「だって、二人いなくなっちゃったじゃん」
「でもまだ宿題これからじゃん」
「……」
何言ってんだろう?
二人になると気まずいから空気よんで帰ろうって言ってんのに。
意味分かんない。
そうは思ったが面と向かってそんな事も言えない。
「……じゃ、宿題だけやって帰る」
仕方なくそう言って机に戻ろうとすると
なぜかホッとしたような顔を見せた。
何で?
二人でいたって気まずいだけなのに。
ホント意味わかんない。
いつもお互い二人きりになるのを避けるのが
暗黙の了解になってたはずなのに。
そう思いながらもそう言ってしまった手前、
仕方なく宿題を広げると、ちゃっちゃっと終わらせて
とっとと退散する事にした。
いつもはにのと相葉ちゃんがきゃっきゃっ言いながら
賑やかな感じで宿題をするのに今日は空気が重い。
こんな事なら用事があるって言って帰ればよかった。
そう言わなかった事を半ば後悔しながら宿題を始める。
「……」
「……」
空気が重い。
重い。重い。重い。
重くて息苦しい。
とっとと終わらせて帰ろう。
そう思いながら宿題に集中する。
「……」
「……」
お互い無言のままシャープペンの走る音だけが鳴り響く。
空気が重い。
重くて、苦しい。
でも、あと一問。
そう思った瞬間。
「……俺」
突然翔くんがつぶやいた。
「……?」
びっくりして顔を上げると翔くんが
困り果てた顔で見ていた。
多分頭のいい翔くんの事だからとっくに宿題は
終わっていて、自分の終わるのを待っていた状態だったんだろう。
「何?」
その困り果てた顔に戸惑いを覚えながら恐る恐る聞き返す。
「俺、智くんの事、ずっと前から知ってた」
突然そんな事を言い出す。
意味が分からずその端正な顔を見つめる。
それっきり翔くんは黙ったまま、ただ顔を見つめるから
どうしていいのか分からずその顔を見つめ返す。
そして突然翔くんの身体が動いたかと思ったら
両肩を掴みそのまま押し倒される。
「な、何?」
一瞬何が起きたか分からず気付いた時には
翔くんのその綺麗な顔が目の前にあった。
びっくりして起き上がろうとすると
そのまま両手を頭の横で固定され上から見つめられる。
「何 すんだよ」
「ずっと、好きだった」
そう言って力ずくで起き上がろうとしたら
両手を頭の横でがっちりと固定したまま
翔くんが困り果てた顔でそう言った。
入学式。
初めて出会ったその人に恋をした。
高校の入学式。
何人かは同じ中学出身だけど殆どが知らない顔ぶれ。
不安と期待と緊張が入り混じる。
そんな中、その人に出会った。
退屈なだけの式が終了し教室に戻る。
その時に数人の学生とすれ違った。
その中にその人が、いた。
その人はとても綺麗な顔立ちをしていて人目を惹いた。
他にも何人か一緒にいたと思うけどそれが何人だったかも
その人以外の他の人の顔も全く分からない。
その人だけしか、目に入らなかった。
でも、その時。
その一瞬で恋に堕ちた。
それからは毎日その姿を探しては見つめる。
一つ上のその人はいつも同級生に囲まれていて
何だか守られているようだった。
あまりに見つめすぎるせいか時々視線が、合う。
その人は不思議そうな顔で見つめ
そしてふっと笑った。
そんな見つめるだけの日々。
でもそれだけでも満足だった。
でも。
ある日からその姿が急に見えなくなった。
病気で休んでいるというような事を聞いた。
“病気”
それからは毎日がつまらなくてただ生きている
ただ学校に行ってる、そんな感じだった。
いつも一緒にいた同級生達も心なしか寂しそうに見えた。
そうこうしているうちに2年生になった。
そして、そこに、その人がいた。
一瞬目を疑う。
そして気付いたらにのと仲良くなっていた。
この二人、にのと智くんはやたらくっついていることが多い。
時には手を繋いでいたりなんかして、
しまいには智くんのお尻を触っていたりなんかする。
その事を指摘しても智くんは笑っているし
にのは別にいいでしょって感じで動じない。
そりゃまあ、背格好も同じ位の可愛らしい顔立ちの二人が
何をしていたって犬がじゃれているようにしか見えないし
女の子達が大宮コンビかわいい~とか言って
陰でファンクラブが出来ている事も知っている。
“分かってるけど、何だか面白くない”
その二人の姿を見て無性にイライラした。
そしてそれを察した智くんが自分に気を遣っているのも分かっていた。
そしてそれが二人の間の微妙な空気をつくってしまっているのも分かっていた。
“せっかく毎日会えるのに”
あれほど会えない事で絶望的になっていたはずなのに。
自分自身に腹が立って仕方ない。
どうしようもない位の自己嫌悪の毎日。
そして今日。
思いがけず二人きりになった。
引き留める自分に戸惑いを見せる智くん。
二人きりになると微妙な空気になるのが分かっているから
帰りたがっているのは分かっていた。
でも、わざと空気が読めないふりをして二人きりになる。
そして宿題が終わりそうなところを見計らって声をかけた。
そしてそのままその華奢な身体を押し倒す。
余裕なんて微塵もない。
“ずっと好きだった”
智は戸惑いの表情を浮かべる。
「好きだ」
そう言ってその綺麗な顔に顔を近づける。
智くんは目をそらすと伏し目がちになる。
長い睫毛が黒目を隠す。
“何て綺麗な顔をしているんだろう”
初めて見た時からずっと惹かれていた。
ドキドキしながら唇を近づけていって触れるか触れないかのキスをする。
唇が離れると智くんはびっくりした顔で見つめる。
何か言いたげな智に気付かないフリをして
そのままもう一度角度を変え唇に唇を軽く押し当てる。
心臓がバクバクいっている。
顔を離し目が合った瞬間、智は何かを言おうとして
でも言えなくてまた伏し目がちになる。
その瞼にもちゅっとキスを落とす。
智はびっくりしたのか大きく目を開ける。
「好きだ」
もう一度そう言って首の下に腕を回しキスをしようと
するとそのはずみで智の口が小さく開く。
そのまま舌を差し入れると深いキスをした。
「ずっと嫌われているのかと思ってた」
「……ごめん」
智はまっすぐな目でそう言って笑った。
その言葉に謝ることしかできなくて素直に謝る。
「しかも突然こんな事するし」
「……ごめん」
智は怒ってる風でもなく笑いながらそう言う。
その言葉にやっぱり返す言葉が見つからなくて謝った。
「んふふっ。まぁ、いっけど」
「ごめん」
「んふふっ。翔くん謝ってばっかり」
「ごめん」
やっぱり謝ることしかできなくてそう言うと智が頬に手をやり
自分からちゅっと頬にキスをしてきた。
「俺も昔から翔くんのこと知ってたよ。よく目、合ってたじゃん」
そう言ってクスリと笑うと今度は唇にちゅっとキスをした。
でも翔くんと智くんみたいなイケてる男の子はいなかった
かな~ウフフ
ドキドキしちゃったよ 二人きりになったあと・・・
久しぶりにときめかせてもらいました ありがとう~
アラフェス情報で俺たちのソングはなかったって知って
残念・・秘かにリクエストしたの私 エヘへ
DVDになったときを想像して楽しみにしてたんだけどな~
わーい!新作だあ!
高校生編。茶色い髪でピアスしてそうな翔ちゃんと、シャンな乙女のような少し大人びたやはり茶髪の智くんがうかびます。
きらりさんのふたりのキスがすきなんです(*^_^*)今回もすてき♡
個人的に、より好みなのは1なのだけど、今回はなにしろにのとまーくんが出てるから、続編を密かにお待ちしています。
嬉しいヽ(^0^)ノ
コメントへのお返事もありがとうございました♪
大宮も好きな私ですが、翔くんの智くんを見つめる瞳が愛に溢れていて本当に大好きです!
ヤキモチをやいて不機嫌な顔になる所も、二ノの影に隠れていますがたまに出てますよね~(笑)
チャンスを無駄にしない大胆な翔くん。智くんとラブラブになって良かった~(^_^)v
きらりさんのペースで大丈夫なのでこれからも山のお話楽しみにしています♪
ドキドキして下さったんですね~嬉しいです。
やっぱ学生の二人っていうのはいいですよね~。
しかもときめいても下さったんですね。ふふっ。
アラフェスは去年大宮だったから今年は山だって
噂になっていましたよね。
本当になくて残念です。
なかなかファンが切望しても現実化しないものなんですね。
でもでも智くんのビジュアルが髪型といい顔といいめちゃくちゃよかったので
DVDは楽しみですね~。
ふたりのキスが好きだと言って下さってありがとうございます。
基本そんなに濃厚すぎじゃなくって、でもドキドキするような感じを目指しているんですけど
好きだと言っていただけると嬉しいですね~。
より好みは1との事でどんな話だったっけって読み直してみたら
シチュエーションが一緒じゃん、とちょっと反省しました。
多分このシチュエーションが好きなんだと思います。
考えてみれば日常はふろかベッドかソファでした。
続編まで希望してくださってありがとうございます。
これは実はちょっと長くなりすぎてしまって収まりきらず随分削ったんです。
そんな経緯もあり、続編と聞いて嬉しかったんですよね。
大宮が好きなんですね~。
ふふっ。可愛いですよね。あのベタベタする感じがたまりません。
そしてそれを見る翔くんの眼差しがまたいいんですよね。
こないだのしやがれで焼き潤とかやってたのを見て
これは嫉妬翔だな、なんて思いながら書いていたんですよね。
それにしてもいつもあの翔くんの智くんを見つめる優しくて愛おしそうな眼差し。
本当にいいですよね。
最後に優しいお言葉をかけて下さってありがとうございます。
いつも大好きって言って下さって嬉しいです。
毎回毎回これどうだったかなって不安に感じる事が多いんですけど
ひぽちさんがいつも褒めてくれたり好きって言って下さるから読むと本当に安心します。
更新されるとお祭り騒ぎと言ってくれましたが私も(ひぽちさんからのコメントに)同じです♪
調子に乗ってもうひとこと。
「日記」の中の、意識しすぎてぶっきらぼうになっちゃうコワもて翔ちゃんも非常~に好みです。(笑)
しーな海里さん? コメントありがとうございます。
ねらいどおりですかね? ふふっ。
結構私の場合、後は想像におまかせ~的な感じにもなっちゃっているんですよね。
いつもドキドキする感じの雰囲気が伝わればいいな~と思っています。
翔くんはそうですね~。
普段智くんに向けて見せてくれる激甘な雰囲気の翔くんもいいし
ちょっと嫉妬してって感じの翔くんもいいですよね。