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きらり

山コンビ小説 Drの翔くんと患者さんの智くん 5

2012-06-16 09:17:54 | 日記
返事はすぐにきた。

そしてその後も仕事が終わった後に飲みに行ったり、
休みの日は大野が行きたいという個展を見に行ったりと
急速に距離を縮め普通の友達のように過ごす。

正直言えば櫻井はもう少し特別な関係になりたいという気持ちも
ない訳ではなかったが、それ以上に嫌われてしまうのが怖かった。
この状況に満足していた。

「先生。」
この日も待ち合わせて二人で飲んでいると、大野が話しかける。
「もう、患者と医師の関係じゃないんですから、先生はやめてくださいってばぁ。」
そう明るく笑顔で言う。
大野はその言葉にうーんと考える。

「翔って呼んでください。」
大野が困った顔をしたのでそう言った。
「翔・・・。」ちょっと考えながら大野は呟く。
「翔、翔。。」何度か振り返す。
「じゃあ翔も敬語はやめて。俺の事は智って呼んで。」
何度か呟いた後にそう言った。

「う、うん。わかった。で、何?さ、、智?」
顔が真っ赤になり自分でも声がうわずってしまったのを感じながらそう話しかける。
「あの・・・。今度の休み時間ある?」
「うん。」
即答する。実際大野と会うようになってから軽い付き合いはほとんど断っていた。
大野といる時以外は楽しく感じられない自分がいたのだ。

「あの、、海・・見に行きたいんだけど。」
遠慮がちに言う。
「海?海かあ、珍しいねえ。いいよ。どこか行きたい海があるの?」
突然海と言われ驚くがその言葉に妙にテンションが上がる。
「ううん、特にどこっていうのはないんだけど・・・ただ海が見たくなっただけ。」
そう笑顔で言う。その笑顔めちゃめちゃかわいすぎるんですけど〜そう思いながら
「そっかあ。いいねえ海。じゃあ車でいこっか?どこがいいかなあ?」
ウキウキしながらしばらく考える。
「やっぱ鎌倉とか?」
テンションが自分の中で上がってくるのを感じつつそう提案する。

大野はちょっと考えているようだったが
「うん。かまくら。」
と笑顔で返す。
うわぁぁやっぱりかわいいよ〜。そう櫻井は心の中で叫ぶ。

そして休みの日。
相変わらずウキウキして眠れなかった。俺って一体と思いながら自分に苦笑いする。
鎌倉に着くと八幡宮や江ノ島を少しだけまわって後は海岸で過ごす。
そう言えば海きたの本当に久しぶりだなぁ。それも智と一緒だなんて、、とテンションが上がる。
ちょっとだけど遠出はやっぱりいいなあ。
智も嬉しそうだし、きてよかった。心からそう思った。
海岸でまったりしていると、あっという間に時間は過ぎて日が暮れ寒くなってきた。

「そろそろ車に行こうか?寒くなってきたし。周り誰もいなくなっちゃったよ。」
海を飽きもせずじっと見ている大野に話しかけた。
「うん。」
そう言いながらも大野は海を見つめたまま動かない。
「智?あ、もうちょっとここにいる?寒くない?何か暖かい飲み物でも買ってこようか?」
優しくそう話しかけた。

「翔、ごめん。」
少しの間をおいて小さな声で呟く。
「え、何が?」突然謝られ戸惑う。
「翔は優しいよね、いつも。いつだって。オレ翔の優しさに甘えている。
居心地がよすぎてついこの状況に甘えきってしまっている。」
正面にある海を見つめ言う。

「え、甘えているだなんて、、そんな事ないよ。」
慌ててそう答える。
「・・・本当はこんなのよくないよね」
大野の言っている意図がが分からず戸惑う。
「翔の気持ちを利用しているわけじゃないんだけど、、でも結果そうなっちゃっているよね。」
淡々と大野は続ける。

「利用って。」
どう答えていいかわからず言葉が出ない。しばらく沈黙が続く。
「俺、こうして智と出かけられるの楽しいから別に利用されているなんて感じたことないよ。」
必死に考え答える。
「うん、でも。。」 
そう言ったきり口を閉じてしまった。

「オレさ、智といるとすごく楽しいんだ。
次の日会えるってだけでウキウキしちゃう。眠れないぐらい。ほんと馬鹿みたいだけど。
智と逢って飲んだりこうして出かけたりできる今の状況が凄く嬉しいんだ。
だから利用とかそんな事考えなくていいよ。」
「まあ、もうもうちょっと特別な関係になれたらもっと嬉しいけど。」
そう続けて言うと明るく笑った。

大野はゆっくり顔を横に向け見つめた。目が合うと櫻井は優しく微笑む。
「翔はかっこいいね。」
そう言うと少し笑顔を見せる。
「え、そうかなあ」
その笑顔に弱いんだよなあと思いながら、顔が真っ赤になるのを感じた。

そして大野はゆっくりゆっくりと櫻井の顔に近づけその頬に唇をあてた。

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