あの日から智はぱったりと姿を見せなくなった。
毎週のように、ここ『K』にきていたのに。
相変わらずこの場所には
国籍や人種、そして年齢や職業を問わず様々な人々で溢れかえっている。
人目を惹くような綺麗な人もいれば、笑顔が可愛らしい女の子もいる。
ハーフっぽい人や外国人。
雑誌やTVで見たことのあるモデルやタレント。
そしていかにもお金持ちそうな人や、やたらと顔が広い人。
どこかの社長やら、御曹司。
芸能人なのか有名人なのかひっきりなしに声をかけられている人もいる。
こんなにも。
こんなにも、たくさんの人で溢れかえっているのに
智だけがここにいない。
未成年なのだからいなくて当たり前のはずなのに。
高校生がこんな時間にこんな場所にいるべきだはないと
そう智に告げたはずなのに。
ここに来るとなぜか智の姿を探している。
智じゃなくても綺麗な女の人も、スタイル抜群な女の子も
かっこいいダンスを踊る人もたくさんいるのに
智だけがいない。
でも。
今日は来ているかもしれないと
今日こそは来ているかもしれないと
話しかけられながらも
踊りながらも
飲みながらも
智の姿を探している自分がいた。
フロアでは今日もたくさんの人が思い思いに酒を飲みダンスを踊っている。
派手なパフォーマンスで人々を魅了し目立っている人もいる。
そういえば智を最初に見た時。
人だかりの中心でブレイクダンスを踊っていたっけ。
その智の踊るダンスは今まで見てきたダンスとは全く違う。
とても綺麗で、その身体能力の高さとリズム感。
そして有り余る才能を見せつけていた。
あれから同じように中心で踊っている人を何人も見てきたけど
あの時のような心が躍りドキドキしながら見たダンスはない。
手の先足の先まで神経が行き届いているかのように見える美しい動き。
そこだけがまるで無重力なのではないかと思えるほどの
軽やかでしなやかなダンス。
不思議と智の踊っているときは足音が全くしない。
あの心が躍るダンスもう一度見たいとずっと願っていたけど
あれだけのダンスが見れたのは後にも先にもあの時だけだった。
あの時はたまたまだったのか。
それともここのオーナーに頼まれて踊ったのか。
今となってはそれさえもわからない。
ただ、他のどんな上手なダンスを見ても
どんなにかっこいいダンスを見ても
どんなに素晴らしい踊りを見ても
決して、心まで揺さぶられた事はなかった。
心が揺さぶられたのは智が踊るあのダンスだけだった。
好きになるタイプはいつも同じだ。
自分の考えをしっかりと持っている人。
周りの友達は顔やスタイルが第一条件みたいな感じの人が多いけど
自分としてはそれも大事だけど、それよりなによりある程度教養があって
自分の考えをしっかり持ち合わせている人が好きだった。
だから付き合う人はいつもそんな感じの似たような人が多かった。
学生時代にも、そして今の会社や取引先にもそういう人は何人もいる。
しっかりとした教養を持ち合わせていて
それでいて顔も美しく性格も申し分ない人。
そういう人からアプローチをかけられたことも、一度や二度ではない。
以前だったらこちらも好意を持ち、確実に付き合っていたはずだ。
でも。
でも、今は違う。
今は、どんなに美人で頭もよくて考えもしっかりしていている人が
現れても心は揺れない。
心が揺れるのは智だけ。
仕事をしていても家にいてもいつも思い出し
心が揺れる存在なのはなぜか智だ。
智が『K』に毎週のように来ていたころは
智の踊るダンスやその顔をただ見ているのが好きだった。
そのダンスを見ているだけで
その綺麗な横顔を見ているだけで
心が揺れた。
でも。
それはここに来れば当たり前のように見れると思っていたし
そしてあの日までは当たり前のように見ていた。
でも今は、その姿を見ることができない。
それが、どうしようもなく寂しい。
本当は高校生なのだからいなくて当たり前なのに。
智の姿が見れないことが、寂しい。
智の連絡先は知らない。
病院に行った時に名前やら生年月日やら住所やら電話番号やら
記入しているのを見ていたけどあまり見てはいけないと思って
じっくりとは見なかった。
だから名前だけは覚えているけど他は住所が三鷹市だったということ以外
全く覚えていない。
あの日。
あの日の智はいつになくおしゃべりで可愛いらしかった。
ただ見てるだけでも
目が合っただけでも
にらんできたり
あっかんべーとされたり
ぷいっと顔をそむけられたり。
いつもそんな感じだったからあんな風に普通に会話ができてすごく嬉しかった。
そしてあの日。
智が『翔』、と名前を呼んだ。
あまりにも驚いて一瞬声が出せなかった。
しかもあの時、冗談だとは言っていたが自分の家に来ると言っていた。
そしてダメだというと、ケチぃと言って口をとがらせていた。
その姿が凄く可愛らしかった。
待ち合わせをして智と会う時。
初めてのデートみたいにドキドキしていた。
まさかあの日。
じゃーねーと言って帰っていく智の姿を見ながら
もう見られなくなるなんてあの時は思いもしなかった。
いや、もしかしたらここには来なくなってしまうのではないかと
あの後姿を見送りながらそんな思いが少しだけ頭をかすめた。
けどそんな事はないと
頭の中で打ち消した。
高校生で
ましてや男。
好きな訳ではない。
好きになるタイプはいつも一貫している。
美人でスタイルがよくて考えがしっかりしている人。
でも。
初めて見た時から無性に気になる存在だった。
だからいつも智の事を見ていた。
だから智のピンチもすぐに気づいたし
智の体調が悪いのもすぐにわかった。
その智を見ながらいつも心が揺れていた。
好きになるタイプはいつも同じ。
頭がよくて美人でしっかりしている人。
でも
智を見るといつも心が揺れていた。
今日もこの場所に来ると
いつもの癖でフロア全体を見渡した。
相変わらずたくさんの人で溢れかえっている。
外とはまるで別世界だ。
その中に
智がいた。
新曲の予約が始まりましたね。職場から予約電話入れてしまいました。買い損ねたTVfanCross最新号も予約できたし、こちらでお話の続きを読めたし、今日は実りの多い一日でした。それではまた。
こちらの翔ちゃんの片思いは着々と進行中ですね。この悶々とした感じがすごくいいです。次回はがまたたのしみです。
待ってまーす!
そうなんですよね。全然自覚がなく何でだろう何でだろうって思いながら見ていたのが
ちょっと自覚出てきましたね。まだ好きとはなっていませんが。
好きとなっても高校生なのでそこはそこで悩みどころですよね。
そうそう予約始まりましたね。またVSとかでも披露してくれるといいですよね。楽しみです。
TVfanCrossはなかなかよさげな感じみたいですね。
そうこうしているうちに智くんのドラマでまた雑誌祭りも始まりますし
楽しみではありますが忙しくなりそうですね♪
実りの多い一日の中に私の話も入ってるなんて!嬉しいです。ありがとうございました♪
コメントありがとうございます。
おおっジャポコンに行かれてたのかな。
それはそれは気持ち的にずっと忙しかったことでしょう。
でもすごくよかったみたいですね。
DVDが出るのが本当に楽しみで仕方ありません。
もったいないのでまだ着地しない方がいいですよ♪
はい。こちらの方は悶々としてます。
いつも、いっぱいいっぱい考えるタイプですね。
そういう翔くんが愛おしくて大好きです。
関係ありませんが年末年始めちゃくちゃビジュアルもよかったですよね。
たのしみだと言ってくださってありがとうございます♪嬉しいです。