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きらり

ALL or NOTHING Ver.1.02 6

2015-12-11 18:30:40 | ALL or NOTHING Ver.1





昔から面倒見がいいと言われていた。


それは多分もともとの性格もあるだろうし


3人兄弟の一番上という事も影響しているのかも知れない。







両親はとにかく忙しい人達で


学生時代は仕事でいない両親に代わって


よく妹や弟の面倒を見ていた。


そして弟が熱を出した時などは付きっきりで看病し


薬を飲ませ、水分を与え、氷枕を交換し


汗をかいたらタオルで拭いて着替えさせた。


そしてそれは学校でも変わる事はなく


成績表には、友達や下級生の面倒をよく見ていると


いつも書かれていた。








でも。



それは友人や家族。そして近しい人や下級生に対してだけで



まさか名前も知らない人の面倒をみる事になるなんて





夢にも思わなかった。












いや、違う。



あの少年だったからだ。



あれが智じゃなかったら、そんな事はしない。



絶対に、しない。












少年が


智が自分のベッドで眠っている。
その顔は色が白くまた鼻筋が通っていてとても綺麗だ。
そしてその柔らかそうな薄茶色の髪の毛がとてもよく似合っている。


そのすやすやと安心しきったような顔をして眠っている智の顔を見つめた。


汗をかいてすっきりしたのだろうか、穏やかな顔をしている。
熱も完全に下がったようだ。
このまま熱が上がったりしなければ、恐らくインフルエンザではなく
一過性のもので症状はこのまま落ち着くだろう。


そう思いながらその綺麗な顔を見続ける。


最初に見た時も綺麗な顔をしているなと思ったけど


その寝顔もまた綺麗だ。


頬は淡い薔薇色に姿を変えている。


思わず、その頬に手を伸ばしかけた。











でも、と


その伸ばした手を止める。


何だか触れてはいけないような気がして、その手を引っ込めた。


今までベッドに寝かしたり、身体を拭いたり


着替えさせたり散々触ってきたくせにな。


その前にも智の手を引っ張って歩いたこともあった。


そんな事を思いながら、何を今更、と自分自身の手を見つめ苦笑いをする。


でもそれもこれも無我夢中だからできた事だとも思う。





今はもう




その髪さえも触れる事はできない。




いつも見ていたその姿。




今はもう、触れる事なんてとてもできない。










ずっと見ていたその顔。


その少年が静かな寝息を立て、相変わらず安心しきったような顔で


すやすやと眠っている。







そして


その顔をいつまでも飽きることなく眺めていたが


いつしかその規則正しく奏でるその寝息に


深い深い眠りへと誘いこまれそのまま堕ちていった。















何かに触れられたような気がして目を覚ますと
智が困り果てた顔で見つめていた。
いつの間にか眠っていたらしい。


「……」

「……」


お互い無言のまま見つめあう。


「……」

「……!」


そして智が自分のベッドにいることに驚愕した。


自分でした事なのにな。
智を連れて帰って散々世話をしてきたくせに
なぜ今更驚愕しているのかと自分自身に苦笑いをする。


そして時計を見るとすでに3時を回ったところだった。
太陽は西へと傾き始めている。
智を一晩中看病していたせいかそのまま自分も一緒に寝てしまった。


「起きたんだ? 体調は大丈夫?」


そう智に話しかける。智は明らかに戸惑っていた。
まあ、起きたら自分の部屋ではないところにいたのだ。無理はない。
それでも智は戸惑いながら小さく大丈夫だと頷いた。
智の顔色は随分とよくなっている。


その顔をぼんやり眺めていたら
智は、ごめんなさいと小さな声で謝った。
意識は朦朧としていたようだったが、自分がされたことはわかっているのだろう。
どうしていいのかわからず泣きそうな顔をしていた。
そう言えば高校生だったな。


「いいんだよ。俺が勝手にやった事だし。
それよりもご両親に連絡しておいた方がいい。
きっと心配している」


「心配なんてしなぃ……」


そう言うと智はますます聞き取れないくらい小さな声で
心配なんてしないと首を振った。


心配しない?


こんな高熱まで出しても家に帰らない子供を心配しない
親なんているのだろうか。


でも家にいても寂しくて街に出てきてしまうという
子供がいるというのも聞いたことがある。
智ももしかしたら、そういう類なのだろうか。


だとしたらこんな状態で帰すのはかえって心配な気もする。
そんなこちらの思いをよそに智はもう大丈夫だから帰るといって
ベッドから起き上がり身支度を整え始めた。











「大丈夫?」


もう熱は下がったようだがあれからそんなに時間がたった訳でもない。
家がどこかもわからないし親が心配しないという言葉も気になった。
それでも智は大丈夫だと、頷く。


「そう。まぁインフルエンザじゃなかったらいいけど」

「……インフルエンザ?」


インフルエンザとの言葉に智の表情が変わった。


「インフルエンザって、インフルエンザ?」

「まぁ、多分もう熱も出てないみたいだから大丈夫だとは思うけど」

「……」


智が真剣な顔をしている。


「いや、丁度去年俺がインフルエンザになった時の症状と似てたから
ちょっと心配になってさ」

「インフルエンザって赤ちゃんにうつったら大変?」

「……?」


唐突に智がそんな事を聞いてくる。
なぜそこで、赤ちゃん? 意味わかんない。
そう思いながらも智の顔は必死だ。


「まあ赤ちゃんは抵抗力も弱いし重症化しやすいだろうから
インフルエンザがうつったら大変なんじゃない?」


そう言うと、智がどうしようと不安そうな顔をした。
あまりの不安げな様子にどうしたのかと智を見つめる。


「……うちに赤ちゃんがいるから」

「……は? 君の?」

「違う。母ちゃんの」


驚いて思わず智の事かと思い聞いたら
智がむっとした顔で違うと答える。


「ああ、びっくりした。お母さんのか。
それって妹か弟って事だよね? 随分年が離れているんだね」


そういうと智は俺は違うからと首を振った。
違うってどういうこと? 
意味がよくわからなかったが、智があまりにも不安そうに訴えてくるため
それ以上は聞く事ができなかった。


「そしたら近くに病院があるから調べて貰えばいいんじゃない?
そこ土曜だけど午後もやってるし」

「病院で調べればわかるの?」

「そう、鼻から綿棒みたいの入れて調べるんだけどすぐにわかるよ。
俺も去年インフルエンザになったとき調べて分かったんだ」


智が必死な顔で聞いてくるから簡単に説明した。
まあ確かに家に赤ちゃんがいたら不安だろう。
どうしようと智が悩んでいる。


「まあ、調べる時期が悪いと正しく出ない可能性もあるみたいなんだけど
でも心配だったら検査する価値はあるんじゃない?」


あまりにも心配そうな顔をしていたからそう言うと
これ以上迷惑をかけれないと思ったのだろう
やっぱりいいと首を振ってうつむいた。


「言ったろ君の事がほっとけないし、何かあったら手が出るって。
それに君のためにするのはなぜか嫌じゃないんだよ」


そう智に言った。
智は俯いていた顔をあげる。
そしてその言葉にまた嬉しそうな表情をしたような気がした。


「心配なら行って見よう?」


そう後押しするように言うと、智が小さく頷いた。




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4 コメント

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いじらしい (白紙)
2015-12-12 11:19:50
 少しずつ生活環境が分かってきましたが、本人には辛そうな状況なのに赤ちゃんを心配する高校生智君がいじらしいです。どんなときでも、自分より方の人を優先してしまうのですね。自分も甘えられる場所があることに気付いてくれますように。
 昨日は職場飲み会で遅くなり、不覚にも更新に気付きませんでした。今月前半にしてお話更新3回有ってとっても嬉しいです。
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白紙さんへ (きらり)
2015-12-12 21:47:55
白紙さん、コメントありがとうございます♪

そんな不覚にもだなんて。
私の方が定期でなくて本当に自由気まま更新なので申し訳ないです~。
飲み会と言えば、もう忘年会シーズンなんですね。早いものです。

話の方はそうですね少し生活環境が分かってきましたね。
この後少し智サイドの話がありますのでいじらしい智さんがますます出てくるかも知れません。

おおっ3回更新してましたか。
コメントが嬉しくて、早く甘い二人に~と思っているせいかもしれません♪
このまま突き進みます。(年末で忙しいとかないので)
ありがとうございました♪
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Unknown ()
2015-12-14 19:53:55
心配されて少し嬉しそうにする智くんがかわいくもあり切なくもあり。。
でも少しずつ背景が見えてきてこの後の展開がめちゃ気になります(*^^*)
優しいけどそっけない感じの智くんと面倒見のいい翔くんがとてもリアルに感じます♪
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桃さんへ (きらり)
2015-12-15 20:00:19
桃さん、コメントありがとうございます。

この後の展開が気になると言って下さって嬉しいです♪
ちょっと切ない感じになってますね。
そして智くんと翔さんがリアルに感じると言って下さって
嬉しいです。
ここには(ブログ内)色々な智くんや翔さんが出てくるのですが
リアルに感じると言っていただけるのがやっぱり嬉しいんですよね♪
次は智さんサイドです。多分明日(ダメだったら明後日)
更新できると思いますのでまたぜひ遊びに来てください♪
ありがとうございました。
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