TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

住宅版エコポイントについて

2009-12-17 00:53:13 | サステナブル建築
まだ詳細は明らかになっていないが、対象となる住宅の着工が来年の1月から、今年の12月8日に前倒しされた「住宅版エコポイント」。

さて、「エコポイント」と名前は付いているものの、対象となる製品を購入すれば、即対象となる家電や自動車とは少し意味合いが違うので注意が必要だ。
また、30万ポイント(30万円)という金額だけが一人歩きしているのも気にかかるところ。。

そもそも、住宅に関しては、10月に住宅瑕疵担保責任保険制度が始まったばかり。
また、いわゆる200年住宅と銘打って導入した「長期優良住宅普及推進事業」というのもある。詳細は省くが、前者は建設会社が入る保険で、後者は最高100万円までの補助金が出るものだ。
いずれも、確認申請とは別に、個別に審査を受ける必要があり、瑕疵担保責任保険は現場検査もある。

住宅エコポイントも、これまでの報道を見る限りでは、申請と審査、現場検査があるようである。
対象となる基準も、おそらく断熱性能などの要求水準は次世代省エネ基準以上となるだろうから、ハードルは高めになるのではないだろうか。。

正直言って、この補助金をもらうために、必要となる高規格の断熱やその他諸々の建設コスト、申請や検査のための事務処理や手間を考えると、30万円では全然割が合わないと思う。
建前としては、「環境にやさしい」住宅を作ろうという考えには大賛成ですが、正直言って、建設に使われる建材の生産に関わるCO2排出量などをトータルで考えると、カーボンオフセットとなるのか、甚だ疑問である。

思うに、建設費に余裕のある限られた人か、大手ハウスメーカーに基準に合致した規格住宅をお任せで建ててもらう以外には、ポイントを得るのは難しいのではないだろうか。

設計者の立場から言わせてもらうと、住宅は、人に住んでもらえなければ意味がないのである。その意味では、住まい手ひとりひとりに合った住宅の在りようを限られた予算の中でしっかり考える必要がある。
単に高規格品をもってくるのは簡単だが、もっと住まい手も住まい作りに参加してほしいと思う。住まい作りを楽しんでほしい。
それが人に愛されるような住まいへとつながると私は思う。

その意味では、断熱や構造など、いわゆるエネルギー・コンシャスな基準だけで長く住み続けられる住宅の基準を決めてしまうことに危機感を感じる。

快適性や満足度、安心・安全など心理的な側面も考慮した基準が必要だと思う。
例えば、CASBEE

この評価基準も、快適性や満足度については、考慮されているとはいえないが、周辺環境との調和や地域性、伝統・文化といった側面については、「取り組み度合い」で評価することになっており、可能性はあると私は思う。

例えば、CASBEEで高水準となった住宅には、その水準によってポイントを与えるなど、基準を「総合的な環境性能」を重視したものにして、建築家や中小の工務店と作る住まいも対象となるように裾野を広げてほしいものだ。

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