「おじちゃん!」
まもなく12歳を迎える少女から、こう呼んでもらえる幸せを噛み締める夏の日だ。
まもなく12歳を迎える少女から、こう呼んでもらえる幸せを噛み締める夏の日だ。
ほんとうの海が見たいという姪を阿児の松原に連れて行った。ぼくにとって海といえばここ以外にない。朝の9時にもならないというのに、既にサーファーや家族連れで賑わう渚は引き潮で、波打ち際は遥か向こうにあった。遠浅の海が干潮でさらに別の姿を見せている。足跡を残すのが躊躇われるほど、広く美しい干潟を歩いた。水着を横浜に置いてきた姪は残念がったが、チノーズの裾をひざまで巻くり上げるよう促がすとニッコリ微笑んだ。犬ころのように波と戯れる。裸足で砂を感じ、想像以上の水の透明さを知るや、はしゃぎ声に感動が交じる。少女は素直にやんちゃに帰って行く。波に向かってどれだけ進んでも水はいつまでも膝の高さだ。遠浅というが近くも浅い。
カリフォルニア・ドリーミンを口ずさむ自分に気づいた。水平線の向こうがカリフォルニアなのは事実だ。