鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.281 (緩和ケアスキルアップ研修会 第4回)

2014-02-21 09:43:42 | 日記
2月19日、今年4回目の庄内プロジェクトのスキルアップ研修会が行われました。今回は、東北労災病院 歯科衛生士 佐藤美由紀氏をお招きして、がん患者の口腔ケアを始める前にというお題での講義を聴講しました。とても話の上手な先生で、きれいな口腔内写真を多用し、私が知らなかった「くち」について分かりやすく講義して頂きました。

以下、講義から、常識として覚えておきたいことをリストしてみました。

・歯周病はTNFαの産生、インスリンを阻害することで高血糖を助長する
・国民の10人に7人は「歯周病」もしくは「歯周病予備軍」
・関節リウマチと歯周病の病態は似ている
・口腔内の細菌数は、大腸より多い
・化学療法、40%に口腔有害事象、その50%は重症
・化学療法の口腔粘膜炎は予防できないが、口腔を清潔にすることで、増悪させないことはできる
・口腔粘膜炎にステロイド軟膏は使わない(日和見感染の誘因となる)
・口腔カンジダ症には抗真菌剤の含嗽、こすらない、3日処方で
・歯垢の正体は細菌、食べかすではない!
・虫歯も歯周病も口腔細菌感染症 唾液で感染する(発症するわけではないが)
・発症させない方法 → 毎日毎食後の歯みがき
・細菌(歯垢)は、強い力で歯に付着している(バイオフィルム)
・歯垢、デンタルリンスだけではとれない、歯みがきが必要
・入れ歯も洗滌剤に漬けただけではだめ、ブラッシングが必要
・偽膜はスポンジブラシでこすらない!抗真菌剤の含嗽のみ
・歯科衛生士は、誰でもできる口腔ケアを教えてくれる
・口腔ケアの前には、必ず保湿(口腔乾燥の患者は多い)
・歯ブラシなどの器具は、必ず水洗し、乾燥させる!
・動物は、歯が無くなった段階で命尽きる

以下、重複になりますが、講義メモ

がん患者の口腔ケアを始める前に
~くちを観て、診て、看る~
東北労災病院 歯科衛生士 佐藤美由紀

歯科が「緩和ケア」で、何ができるか
緩和ケア、がん医療を充実させる大切な医療です
歯科医療従事者の立ち位置
 がん対策基本法で定められている

東北労災病院:548床、
歯科医師:常勤1名、非常勤2名、歯科衛生士:常勤2名
院内紹介:94.2%
急性期医療のための歯科に特化

歯科衛生士の役割
チーム医療の一員として
1、糖尿病教育目的入院患者への教育セミナー
 歯周病はTNFαを産生し、インスリンの働きを阻害することで高血糖を助長する
 歯周病は糖尿病の「第6の慢性合併症」
 国民の10人に7人は、歯周病あるいは歯周病予備軍
 食事に気をつけても、運動に励んでも血糖値が下がらない
  → 悪いのはあなたではなく、歯ぐきかもしれません。

2、NST:栄養サポートチーム
 経口摂取するための口腔アセスメント
 歯がなくては、経口摂取はできない
 介護施設から褥創悪化で入院、著しい栄養低下、食べられる口ではなかった

3、緩和ケアチーム
 化学療法、放射線療法への副作用対策
 口腔粘膜炎など終末期口腔ケア介入

4、周術期の口腔ケア
 術後誤嚥性肺炎の発症予防

5、生物学的製剤投与前後の口腔評価
リウマチ患者、
リウマチと歯周病は、病態が似ている、
口腔、細菌多い、大腸より多い

入院患者の口腔管理
 看護師への助言・専門的口腔ケアの実施(口腔ケアの共同作業)
 看護師の悩み、歯科衛生士の悩み
 解決方法
  看護師へに教育:セミナー、院内看護目標「口腔ケア」
 顔の見える口腔ケア
 退院後をどうする?
 → 退院調整看護師へ伝達「訪問歯科の介入」
  →ケアマネ →訪問歯科・・・

観る
くちに、関心をもって!
くち = 見ることができる 消化器、呼吸器 です
舌の潰瘍 = 舌がんの可能性
のどをみるのではなく、口腔をみる!

診る(歯科医療従事者の方へ)
がん:死亡原因の一位、さらに増加傾向、一方で5年生存率増えている、
周術期における歯科医師の包括的な口腔機能管理などを評価
化学療法を受けている患者の40%に口腔有害事象が発症
さらにその50%は重症
なぜ口腔有害事象が発症するか?
 直接作用 →口腔粘膜炎
 間接作用 →骨髄抑制による日和見感染 (カンジダ、ヘルペス)
 口腔内の慢性感染症の増悪 →虫歯や歯周病の悪化
事例:口腔粘膜炎 TS1、シスプラチン、ベクティビックス、
予防できないのか →できない!
しかし、清潔にすることで、増悪させないことはできる
口腔粘膜炎は対症療法 (疼痛コントロール、口腔粘膜炎の改善)
ステロイド軟膏は、日和見感染を助長!
間接作用、骨髄抑制による口腔粘膜炎
口腔カンジダ症、
  → 抗真菌剤で治療可能(フロリード、ファンギゾン、イトリゾール内服腋)
赤いカンジダ症もある、 ひりひりする、苦みを感じるの訴え
3日分で、治る
単純ヘルペス
舌に潰瘍できることも、
 治療:アラセナ軟膏、バルトレックス内服
口腔内の慢性感染症の増悪
 虫歯や歯周病の悪化
 血管新生抑制剤で、歯周病が悪化
 虫歯の悪化、口腔カンジダ症、
ビホスホネートによるBRONJ(顎骨壊死)

口のトラブル
QOLを著しく低下、がん治療への前向きな姿勢さえ失う
ちなみに
がん検診受診率、山形県は胃がん、大腸がんで1位、肺がん3位、
一方で、受診率は高いが、 がんの死亡率も高い
塩摂取、全国2位、庄内>村山>置賜>最上
山形県の日本一 :3世代同居 、共働き、少年犯罪が最も少ない

診る
虫歯の原因:歯垢=細菌(バイオフィルム) 食べかすではない、
虫歯や歯周病の原因菌は唾液でよって感染
しかし、感染しても発症するわけではない、
発症させない方法 → 毎日毎食後の歯みがき(口腔補清 口腔ケア)
デンタルリンスで、バイオフィルムはとれない
バイオフィルムをとるには、歯みがき! 歯みがきしてからデンタルリンス
入れ歯にもバイオフィルムがあります
消毒剤に漬けておくだけでだめ、ブラシしてから洗滌剤に漬ける

虫歯、歯周病は、口腔内細菌による感染症

正しい口腔セルフケア
用具の工夫、
偽膜性カンジダ症、ブラシはしない!抗真菌剤の含嗽のみ、

歯科衛生士は、誰でもできる口腔ケアを教えてくれる、
口腔ケアの前には必ず保湿、
保湿剤:ジェルタイプ、スプレータイプ
1)保湿は必ず口唇から
2)口唇にはリップクリーム、アズノール軟膏、保湿剤など
3)口唇→頬粘膜→舌の順で行う
4)歯みがき開始
最後も保湿、少量で十分
口唇は、リップクリーム、アズノール軟膏等で保護、

口腔内にも褥創ができる、
 義歯や内服薬が残っていても潰瘍ができる

口腔ケアの提案 (負担の少ない口腔ケアの実現)
・ナーシングスキル(看護業務:清潔ケア、マニュアルの再確認!)
 口腔ケアマニュアルの再確認
・口腔ケアは清潔ケア!(口腔ケア技術の向上は必須)
・口腔ケア用品を知る(売店で購入できる口腔ケア用品を再確認)
・口腔ケア時の姿勢(誤嚥させない姿勢)
・1回できれいにしようとしない(とくに汚れの多い時)
・毎日、くちに触れる(家族に参加してもらう)
がん基本法より
・がん治療の副作用・合併症の予防や軽減
・手術療法による合併症予防や術後の早期回復
・口腔ケア技術の研鑚と育成

笑顔は「健康と健口」から

歯がなくなった段階で、命尽きる動物

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