多元的全体食のすすめ(六) 食べ物研究家 五十嵐玲二談
6. 魚と貝と海藻と全体食について
生命は海で誕生した。このために、海水に含まれている様々な微量元素を生命体は、その複雑なシステムを構成するうえで使用している。天然塩や岩塩は、鉱物のように思えますが、実は海水から水分だけを除いたものです。
天然塩や岩塩に含まれている、NaCL(塩化ナトリウム)以外の微量元素のミネラル分が人間の体には重要です。(ミネラルとは、ナトリウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素などです)
海のもので、海水の成分を含んでいる食べ物に、コンブ、ワカメ、ノリなどの海藻があります。海藻の特徴は、コンブの全体が根であり、葉であり、茎なのです。従って海藻には海の様々なミネラルが含まれています。
日本は海に囲まれているために、私たちは多かれ少なかれ海藻を食べてますから、日本では問題になりませんが、大陸の内部に住んでいて、ほとんど海藻を食べない人は、ヨード分の不足で病気になり、コンブなどを食べると治るそうです。
カキ、アサリ、シジミ、ホタテ、ホッキ、ハマグリ、ムール貝、つぶ、サザエ、アワビなどの貝は、海水に含まれるプランクトンを食べて、成長しますので、海の恵みそのもので、人間が必要とするタンパク質、ミネラルを豊富に含む、完全栄養食品と呼べるものです。
気仙沼の牡蠣養殖家の畠山重篤氏によると、カキの出来は、気仙沼に流れ込む大川の豊かさに関係し、その大川の豊かさは、大川の源流地域の室根山の森の豊かさによるそうです。
したがって、気仙沼のカキは、室根山の森に支えられ、森と海を川がつなぎ、「海は森の恋人」と言っています。カキは一日に10~20Lの海水からエサとなるプランクトンを濾しとって食べます。すなわち、かきは、気仙沼の海そのものです。
魚は、まず一匹すべてを食べる小魚について、見てみます。しらす、白魚、わかさぎ、煮干し(かたくちいわし)、めざし(いわし)、シシャモ、桜エビ、その他の小魚。これらは、内臓から骨にいたるまですべてを食べます。
これらの小魚も、海の育んだ栄養素をすべていただくので、完全栄養食です。日本人は昔から魚によって、タンパク質、ミネラル、カルシュウムを得てきた。
次に3~4kgの鮭の新巻についてみてみます。頭の氷頭は、大根と氷頭なますにし、三枚におろした身の切れ目は、焼いて食べます。
少し身の付いた骨の部分は、一口大に切って、コンブを巻いて昆布巻きにして、じっくりと煮て昆布巻きにします。これを何日間かで食べると、結果的に鮭をまるごと一匹食べることになります。
魚は、さしみや煮たり、焼いたり、飯寿司にしたり、干物にしたり、味噌漬けにして、魚の大部分を極力利用してきました。
日本人の食事の一つの形として、魚の干物、漬物、ご飯となりますが、コメは一般に貴重なので、明治維新の立役者であった旧下級武士は、お米の代りに、サツマイモと魚の干物を食べて、明治維新は成し遂げられたといわています。
サツマイモと魚の干物は相性が良く、栄養のバランスもとれたものです。日本人の食べてきた海の幸として、鯨について考えてみます。現状に於いて、捕鯨を禁止するか、捕鯨を許すかの議論は、置いておいて。鯨を日本人が食べてきたのは、歴史的事実です。
日本人は、鯨の皮から、内臓から、鯨のヒゲまで利用してきました。そして、鯨を海の恵みとして、人の世界と海の神をつなぐものとして崇めてきました。(第6回)
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